2013年 6月までの新作紹介〜その1 A・B

すんません、ブックマークつけるの大変なので、ずりずりと下にバーを下げてご覧ください

A HERO FOR THE WORLD "same" − フィリピンのパワーメタルサウンド 
★おすすめ★

A LIFE [DEVIDED] "THE GREAT ESCAPE" − ダンスもできるメタルながらメタルから離れて飛んでいかないマシーンメタル

ACCUSER "DIABOLIC" − 9作目、前作に続き歴代最高傑作、突貫工事モンスタースラッシュ 
★おすすめ★

ADRENALINE MOB "COVERTA" − ラッセル・アレンによるカバー曲集、8曲入り、ロニーだらけ

AGRYPIE "AETAS CINERIS" − ドイツ発、層の厚いブラックメタル

AIRLESS "CHANGES" − スペイン発メロディアスハード、TYKETTOのダニー・ヴォーン1曲ゲスト参加

ALEX DE ROSSO "LIONS & LAMBS" − イタリアの職人ギタリストソロアルバム

ALICATE "FREE FALLING" − 結成1985年、しかしセカンドアルバム、メロディアスメタル

ALICE IN CHAINS "DEVIL PUT DINASOURS HERE" − さすがのブランド、5作目

ALPHA TIGER "BENEATH THE SURFACE" − 全人類必聴

ALTER OF DARKNESS "TEETHED GLORY AND INJURY" − アイルランドのブラックメタル、ホラー映画のBGM風実験的サウンド

AMARANTHE "THE NEXUS" − 今人気沸騰のバンド、何でもありの2013年よろず屋

ANDY WINTER "INCOMPREHENSIBLE − タイトルそのまま、ノルウェー発アバンギャルド

ANTHRAX "ANTHEMS" − カバー曲集EP.さすがやりたい放題

APPALACHIAN WINTER "GHOSTS OF THE MOUNTAINS" − アメリカ産独りブラックメタル、映画音楽のスケール 
★おすすめ★

ASTRONOMIKON "DARK GORGON RISING"
 − キプロス共和国出身、正体はこの国に居を移したアメリカのARRYAN PATHという中堅バンド、正統派の中の正統派 
★おすすめ★

ATRANTIS CHRONICLES "TEN MILES UNDERWATER" − フランスの新顔、ツッパリデスメタル

ATTACKER "GIANTS OF CANAAN" − 知る人ぞ知る80年代からのメタルバンド 牛丼一筋80年

AUDREY HORNE "YOUNGBLOOD" − ノルウェー発無国籍サウンド、THE POODLESをガラ悪くしたような音

TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA "THE MYSTERY OF TIME"
 − ロゴマークがディズニーになった新作、オペラ色は薄れるも王道サウンドは変わらず
 ★おすすめ★

AXEL RUDI PELL "LIVE ON FIRE" − 本当にon fireなライブアルバム 
★おすすめ★

BAD RADIATOR "HYPNOTIZE" − 耳で聞く薬みたいなメロディアスロック

BARBE-Q-BARBIES "BREAKING ALL THE RULES" − アホ気全開、フィンランドからのチェリーボム 
★おすすめ★

BLACK DEBBATH "NA FAR DET FAEN MEG VAERE ROCK ! AKADEMISK STONER-ROCK" − オフィシャルPVが抱腹絶倒過ぎて死ぬ

BLACK ROSIE "BIGGEST BANGS OF A LEGEND - A HARDROCK TRIBUTE TO AC/DC" − 女だてらのAC/DC完コピバンド

BLACK SABBATH "13" − 全世界待望の2013年祭注目作品 
★おすすめ★

BLACK STARS RISING "A MEMORY - A MELODY" − 暗黒帝国襲来ゴシックメタル、しかしボーカルは舌っ足らず

BLOOD OF GOD "THE FALL AND RISE OF MAN" − ブルタル・デスラッシュベテランバンドのようで、新人

BLOOD TSUNAMI "FOR FAEN ! " − ドアホスラッシュ渾身の第3作目

BON JOVI "WHAT ABOUT NOW" − アメリカ大陸横断ぶらり旅 
★おすすめ★

BRING ME THE HORIZON "SEMPITERNAL" − ついに本領発揮の実力行使、名作 
★おすすめ★

BUCKCHERRY "CONFESSIONS" − 今さら何が「告白」か、全世界ツアー当然のアメリカ大陸代表サウンド 
★おすすめ★

BULLET FOR MY VALENTINE "TEMPER TEMPER" − 巷じゃ評判よくないがわしはいいアルバムだと思うぞ

BYZANTINE "BYZANTINE" − 同じく4作目ということでBULLET FOR MY VALENTINEのライバルとわしが勝手に解釈した


BJORN BERGE "MAD FINGERS BALL" − "Ace of Space"を12弦ギターで爆裂演奏する物凄いおっさん

A HERO FOR THE WORLD
"A HERO FOR THE WORLD"


フィリピン
デビューアルバム
http://aherofortheworld.com/
you tube
http://www.youtube.com/user/AHeroForTheWorld
 David SivelindとJacob Kaasgaardなるスウェーデン人ミュージシャンが現在セブ島在住であり、ドラマーがLA在住、そしてゲスト女性ボーカリストがセブ島現地の人、ついでにジャケットデザインはSABATONやPRIMAL FEARでおなじみブラジル在住のイラストレイターという、非常の国際色豊か過ぎるメンツによるアルバム。
 これがまた非常によくできたパワーメタル正統派アルバムなのだ。大傑作である。
 まあYOU TUBEで確かめてほしい。しっかりアジア情緒あふれる曲も入っている。音そのものが弾けている。小粒かもしれないが、RHAPSODY(OF FIRE)みたいな曲もある。メロディーラインも、凡百の北欧バンドとはまったく違う場所から聞こえてくるようである。メタルバンド10揃えたら8つはこの路線という中で、1回聞いて絶対忘れない素晴らしい音を聞かせてくれる。
 私自身路線的にこういうのは飽きたもいいところだが、良品は趣味を超える。北欧の人が、北欧に住んでいたらこういう弾けた音は無理かもしれない。ということで、北欧ミュージシャン、特に新人は北欧を出てアルバムを作ってみることをおすすめする。教科書はこのアルバムだ!

 

A LIFE [DEVIDED]
"THE GREAT ESCAPE"


ドイツ
03年デビュー
4作目
http://www.a-life-divided.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=a+life+devided
 ドイツ語のウィキペディアにはところどころ英語表記があって、このバンドはElectro-rock, Synth-rockと書いてある。
 アホウ言いなさい。堂々としたインダストリアル・メタル・ついでにダンスもできちゃうよ・スペシャルである。(そういうのがElectro-rock, Synth-rockというのか)
 この前のアルバムも何枚か聞いたことあるが、このアルバムが最高傑作であるのは間違いない。なんと、なんとなんと、DIE KRUPPSの勇姿を彷彿とさせる曲が何曲かあるのだ。メタルリスナーにも非常に聞きやすい世界である。ビートと言うより、この打撃音は完全にドラムスの音である。
 インダストリアルメタルスタイル、ダンスミュージックの入ったメタルサウンドは、やっぱり、ところどころ、メタルリスナーから遠い場所へ飛んでしまうから、メタルリスナーにはつまらんし、10曲中1曲そんな曲があっただけで怒ってしまうメタルリスナーもいる。私のような老人が望むのは、こういうアルバム、全曲メタルリスナーに気を配ってくれているというか、メタルから離れて飛んで行かないアルバムである。歌もしっかりあるし、本当にいいバンドになった。

 

ACCUSER
"DIABOLIC"


ドイツ
87年デビュー
9作目
http://accuser.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=accuser+diabolic
 2011年前作"DEPENDENT DOMINATION"から、奇跡の名作連続。
 前作より恐い音になった。再結成しましたよ、ですからかつてのメタルマインド、メタルの良心を楽しんでくださいましという、巷のバンドとはわけが違う。このバンドはますます恐くなってきている。このアルバムなどデスメタルにも対抗できるし、ブラックメタルなど軽く蹴散らす。最高速度も重量感も、すさまじい。決して悪いアルバムではなかったのだが、2010年の再編第1弾アルバムが、まるでなかったかのようである。メンバーの年齢もわしらと似たようなものだろうが、何を食ってこんなパワーが出せるのか。
 別に、昨日一人で、死霊のはらわたリメイクをレイトショー1200円で見に行ったから言うわけではないが、単純なアクション映画やホラー映画も斬新な撮影技術のおかげで、映画そのものがハズレでもない限り、最新のアトラクションの様相を呈している。メタルだってそうである。このアルバムである。単純なスラッシュメタルかもしれないが、決してレトロと言わせない新しいものがある。全部、「知っている」人間しかこんな音は作れない。2013年ベストアルバム候補である。

 

ADRENALINE MOB
"COVERTA"


アメリカ
11年最初のEP、ラッセル・アレン、マイク・ポートノイたちによるプロジェクト
ファーストアルバムに続く2枚目のEP(8曲入り)
http://adrenalinemob.com/http://adrenalinemob.com/
you tube
http://www.youtube.com/adrenalinemob1
 1.High Wire / BADLANDS 2.Stand Up and Shout / DIO 3.Break on Through / THE DOORS 4.Romeo Delight / VAN HALEN 5.Barracuda / HEART 6.Kill the King / RAINBOW 7.the Lemon Song / LED ZEPPELIN 8.the Mob Rules / BLACK SABBATH、という何という節操のないカバー曲集。ロニーだらけだ。
 シンフォニーXのボーカリスト、ラッセル・アレンによるプロジェクトバンドで、アメリカでは結構人気あるらしい。カバーアルバムは有名人なら必ず出すような今の時代であっても、BADLANDSが飛び出すとは面白いというか、素晴らしい。どの曲もとにかくパワフル、原曲のカラーを無視してとにかく異様な元気はつらつ感にあふれており、なんだこれは。マジなのか遊びなのか、全然わからない。ドラムスなんか精力剤のがぶ飲みである。とりあえず名曲の連発なので、ターボのかかった演奏でこそ楽しめる。もっと聞かせてくれーー!

 

AGRYPNIE
"AETAS CINERIS"

ドイツ
05年デビュー
4作目
http://agrypnie.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=agrypnie
 雪崩ブラックメタル。層の厚い音である。3人編成程度が当たり前、ひどいときにはメンバー1人だけで全部やってるなんて音があるブラックメタル業界、5人編成でしっかり造っている音はさすがに聴き応えがある。BATHORYみたいな天才なら別だが、独りプロジェクトとか2人プロジェクトのブラックメタルは駄作出したら活動停止を法律で決めてほしい。恐いもの見たさ聞きたさに金を払うのも、リスナーは飽きたのである。
 このバンドは血生臭い絵が好きなバンドではないようで、同じような音を出しているバンドの中でもスマートなバンドのようである。怒涛の濁流津波サウンドも、収拾のつかない破壊ではなく、はっきりした絵にしている。これがブラックメタルのスタンダードサウンドである。と思う。そうなってほしい。

 

AIRLESS
"CHANGES"

スペイン
02年デビュー
4作目
http://www.airlessband.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=airless+changes
 年季が感じられるメロディアスハードロック。4作目であるが、デビュー時から結構お歳を召されていたバンドだと思う。太い、厚い音を出しているアルバムで、なかなか素晴らしい。圧倒感=バイオレンスがヘヴィ・メタルの世界ながら、バイオレンスがなくても圧倒感覚があればそれはメタルである。メタルと呼ばれなくてもわしは認める。認めるや許すなど偉そうなことを言える立場ではないが、このアルバムの音はAOR系に弱い私も眠くならない。あともうちょっと、ここまでの力量があるのなら、名曲を作ることにあと1か月、掛けてほしい。
 タイトル曲には懐かしい、TYKETTOのダニー・ヴォーンがゲスト参加。
 スペインのバンドであるが、歌はすべて英語。スペインにもいろいろなバンドがいる。

 

ALEX DE ROSSO
"LIONS & LAMBS"

イタリア
95年デビュー
4作目
http://www.alexderosso.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=alex+de+rosso+-+lions+%26+lambs
 イタリアのソロギタリスト、正統派+90年代風トレンドのようなギターを弾く人である。いまだメジャーなのかマイナーなのかさっぱりわからないLABYRINTHというバンドのメンバーと親交があるそうで。
 オープニングからドン・ドッケン風のボーカルやなと思うと、本物のドン・ドッケンだった。その他ゲストはダグ・アルドリッチ、スティーヴ・ルカサー、レブ・ビーチなど。職人が参加しているので、このアルバムも職人風である。血気盛んなメタルファン向けではなく、ギターの奥深さを堪能したいというリスナーにおすすめ。何層もある、丁寧な音造り。ダグ・アルドリッチのソロアルバムみたいな音である。
 ラストナンバーの"Them Bones"はALICE IN CHAINSの名曲。

 

ALICATE
"FREE FALLING"

スウェーデン
09年デビュー
2作目
http://www.myspace.com/alicaterocks
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=alicate+free+falling
 ロゴマークのマイナーくささはどうにかしたほうがいいと思うが、アホの咲いたマイナースラッシュかと思えば、全然そうではなく、TENみたいなたいそう風格のあるスタンダード・メジャーメタルサウンド+北欧の素少々、という音である。歌は近年のヨルン・ランデ風(あくまで雰囲気)で、若造なのになんでこんな渋いのかと思って調べてみたら、バンド結成は1985年だそうである。ファーストアルバムの2009年まで何をやってたんだろう。というより、正業を持ちながら趣味的にバンドをやっていた人たちだろう。
 全体的にどんと目立ったことはやっていないが、緻密な作業を毎日、何か月かけてアルバムを完成させたような丁寧さがある。TENのような豪華な音質でないところが痛いが、名のあるプロデューサーがつけば化けるバンドだと思う。

 

ALICE IN CHAINS
"DEVIL PUT DINASOURS HERE"


アメリカ
90年デビュー
5作目
http://www.aliceinchains.com/home/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=alice+in+chains+devil
 私など当時からして老人は、90年代爆音ロック、グランジ、そういうジャンルは好きではなかった。80年代メタルの疾走感を幼稚な産物として見下しているような大人感覚が優勢を占めたからである。
 このバンドは最初から違った。ファーストアルバムの戦車爆走感覚は80年代リスナーの度肝を抜いたし、アメリカの90年代メタル、90年代爆音サウンドを代表する風格を持ってからも、他のジャンルを見下すも何も、他のジャンル我関せずという態度だったように思う。結局メジャーの世界で残ったのはこのバンドだけであり、この音だけである。
 この新作を含めセカンドアルバム以降はどのアルバムを聞いても同じ音であるが、特に2009年の前作、この新作はこの音に飢えているリスナーの耳の渇望感を見事に満たしてくれた。層の厚いダークなリフ、うねる歌。アコースティックナンバーもあくまで太い。全世界屈指のオリジナリティーである。

 

ALPHA TIGER
"BENEATH THE SURFACE"

ドイツ
11年デビュー
2作目
http://www.alphatiger.de/
you tube
http://www.youtube.com/user/alphatigerband
 オフィシャルサイトの写真。
      
 つまりこのアルバムは名作である。
 これでレビューを終わりたい。

 

ALTER OF PLAGUES
"TEETHED GLORY AND INJURY"

アイルランド
09年デビュー
3作目
http://www.altarofplagues.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=alter+of+plagues
 このジャケットは女性がヨガをしているわけではなく、おそらく悪魔払いの真っ最中か何かではないだろうか。
 世間ではこういうのをPOST BLACKMETALと呼ぶそうな。語彙の少ない頭で恐縮であるが、私に言わせれば前衛アバンギャルド・ブラックメタルである。つまりブラックメタルファンが聞いても結構わけがわからん音である。アバンギャルドもモノによっては好きなのもあったりするが、ブラックメタルの音層、スカスカの音密度でアバンギャルドと言われても、えっげつない新種ホラー映画のBGMにしか思えない。

 

AMARANTHE
"THE NEXUS"


デンマーク/スウェーデン
11年デビュー
2作目
http://www.amaranthe.se/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=amaranthe+the+nexus
 一気に世界的存在になったブライテストホープの2作目。女性ボーカル1人、男ボーカル普通声1人と吼え声1人、合計3人も正式ボーカリストがいるという変わったバンド。しかしボーカルよりも、演奏の豪華さ、メロディーラインのシャープさに驚かされるアルバムである。ゴシックメタルと今風が合体した最高の形である。女性ボーカルが歌うメロディーラインは邦楽リスナーにもアピールするだろう。今風ユーロビートというのか、それもメタルリスナーがうざったいと思わない程度に織り込まれていて、あらゆる層にアピールする音楽なんだなあと思う。
 しかし音詰め込み過ぎ、忙し過ぎという気も。わしのような老人には、合いの手のようなスクリームボーカルはいらんが、若いリスナーにはこれがあるとないとではずいぶんと違うのであろうな。
 NIGHTWISHみたいにギターリフがごりっとしていない、目立っていないのが残念だが、それもあくまでわしの趣味である。

 

ANDY WINTER
"INCOMPREHENSIBLE"

ノルウェー
1作目
WINDS, AGE OF SILENCEのキーボードプレイヤー
http://andywinter1.bandcamp.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=andy+winter
 今現在のノルウェー・メタルシーンの最先端を切り取ったような音かもしれない。ノルウェーというとブラックメタルがナショナルチャートにランキングするという国であるが、ブラックメタルとはまた別に、プログレとはまた色が違う、実験的で環境音楽的で前衛的で、要するにわけのわからん路線を聞かせるバンドも多い。このアーティストもまさにそういう、機械妖怪のような不思議な音を聞かせるミュージシャンである。一筋縄ではいかないどころか、これはもう完全にアバンギャルドである。
 各曲に周辺の筋者バンドのメンバーが参加しているが、バンドで言うとBEFORE THE DAWN, NOVEMBERS DOOM, BORKNAGAR, TRISTANIA, AGALLOCH, DAN SWANO、その他濃い名前ばかりが並んでいる。それらバンドカラーはボーカルで参加している人間を除きほとんど出ておらず、すべてANDY WINTERなる人物の妖怪個性に見事に沿った内容となっている。

 

(ALPHA TIGERの続き)
 と、本当に終わってしまったかのように見えて、ちゃんと書こう。
 例えば70年代80年代、スコーピオンズでおなじみ(...元祖は絶対スコーピオンズだ)あの、ガァーッ!と顔を剥くメンバーショット、2010年過ぎた今は、わざと狙ってやる連中がほとんどである。何を狙っているのかというと、アホを狙っているのである。特にマイナースラッシュメタルの場合はそういう連中が一派を作っているくらいで、アホの服を着て、俺らはアホの音楽というひとつの流行をやっています、という。だからアホメタル歴70年のわしから言わせれば、ポーズでアホやるバンドと本気でアホやるバンドの違いが歴然と明確にわかるのだ。
 このALPHA TIGERである。
 本物の、アホである。まずボーカリストにクロノス(ヴェノム)が憑依するのが基本。ギタリストはしっかりとギターを抱え、俺らまでアホになっては都合悪いとすまし顔。残りのベーシスト、またはドラマーは照れを隠せず、ぎこちないファイティングポーズか、またはカンフーポーズしかし前の手は内向きの変なポーズで凄む。↑の写真でマイナスポイントをひとつ挙げるとしたら、ドラマーがスティックを持って戦いのポースを取っていないところ。よって6点マイナスの94点である。
 音のことを書くのを忘れていた。
 音はスラッシュメタルではなく、パワーメタルである。ボーカルは顔に似合わずなかなか歌える奴であるが、所詮メロディーが練られていない。ギタリストの腕もまあまあである。白々しいくらいにツインリードのアホ花を咲かせてほしい。跳ねまくっている音は若手メタルバンドとして大変好感が持てるが、早く名曲を作る腕を磨いてくれ。

 

ANTHRAX
"ANTHEMS (EP)"

アメリカ
大ベテラン
http://anthrax.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=anthrax+anthems
 1.Anthem / RUSH 2.Jailbreak / THIN LIZZY 3.T.N.T. / AC/DC 4.Smokin' / BOSTON 5.Big Eyes / CHEAP TRICK 6.Keep on Runnin' / JOURNEY...というカバー曲EP。何かこんなアルバム、前にもなかったか?と思うが、とりあえず、ジョーイ・ベラドナが元気やな〜〜と。我ら音楽のルーツを語る、などという堅苦しい雰囲気は一切なし。BOSTONまで陽気にやっておられる。ものすご〜かっちょええのがCHEAP TRICK。次のアルバム、こんな路線もどうですやろ。

 

APPALACHIAN WINTER
"GHOSTS OF THE MOUNTAINS"

アメリカ
2008年デビュー
5作目
http://appalachianwinter.bandcamp.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=appalachian+winter+ghosts+of+the+mountains
 ペンシルヴァニア発、D.G.Klyneなる人物の独りブラックメタルスペシャル。
 これがなかなか素晴らしいのだ。2曲目"Patriarchs"が異色の名曲で、何回も繰り返し聴いてしまった。ブラックメタル初というか、メタルとしてもこんな空気の曲はない。歌の部分はどこかの独立記念国歌のような仰々しさである。もはやブラックメタルがどうのこうの言う次元ではない。
 メタル部分の作りも重量感と奥行きがあって素晴らしいのだが、アコースティック演奏、キーボードのみの環境音楽部分も、映画音楽のグレードである。アメリカインディアンの民族音楽(...のようなもの)にインスピレーションを受けたような曲があるが、それにしても聞き手をまったく退屈させない。大仕掛けで大掛かりである。
 今の時代だから、これだけの音も部屋にいながら作れるのだろう。しかし部屋から一歩も出ない音楽の出来は、北欧の数多くの独りブラックが証明しているように、当然マニア向けである。このアルバムは違う。5作目ということで、これまでどのような紆余曲折を経たのか、聞いていないのでわからないが、まったくこれでは、ブラックメタル云々を超えてミュージシャンズ・ミュージシャンの風格だろう。広い場所での活躍を望む。私がこれまで聞いた独りブラックの中では最高傑作である。

 

ASTRONOMIKON
"DARK GORGON RISING"


キプロス共和国
デビューアルバム
http://www.astronomikon.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=astronomikon
 ギリシャの近く、トルコの下の島国キプロス共和国から登場したパワーメタルバンド。
 キプロス共和国のメタル事情はよく知らないが、今調べたところによると、アメリカにARRAYAN PATHというバンドが生まれて、この国に引越しをし、最も人気のあるメタルバンドとして2000年ごろより活動を続けており、5枚ほどアルバムを出した後、メンバー2人がプロジェクトとして作ったのがこのバンドだそうだ。
 北欧産のようにカチッとした音ではなく、そこがかえって好感が持てる。何かに似てるなあと思って聞いてたら、何かに似ているというより、ロシアンメタルのパワーメタルにこういう音が多いのだ。完成度が低いということではなく、荒々しいワイルドな空気の中に完成度がある。80年代メタル、マイナーメタルの傑作にはこういうのが多かった。今の時代、メタルの男前を売らず、メタルらしい音で勝負をかける、これぞパワーメタルの誇るべき態度である。こういう真っ直ぐな音を聞けば、こっちもおちょくるのをやめて、姿勢を正さざるを得ない。本体バンドARRYAN PATH
の新作ももうすぐ出るそうである。めちゃくちゃ聴きたい。

 

ATLANTIS CHRONICLES
"TEN MILES UNDERWATER"

フランス
デビューアルバム
http://www.myspace.com/atlantischroniclesmetal
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=atlantis+chronicles+ten+miles+underwater
 フランス発、テクニカルデスメタルの新人。よく腕が腱鞘炎にならないなあというくらい激烈な音である。聞いている私の耳が腱鞘炎になってしまう。デスメタル本道の演奏に加えて、キュルキュル、ピラピラとギターが宙を舞うスタイル。いつの時期か、あちこちでよく聞いた音である。恐ろしくテクニカルなバンドだとは思うが、真っ直ぐ走ってくれないのであまり面白くない。

 

ATTACKER
"GIANTS OF CANAAN"

アメリカ
85年デビュー
5作目
http://www.attacker.tv/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=attacker+giants
 これは筋者である。85年にファーストアルバムを出し、続けてもう1枚出した後解散、2004年に復活して現在もおっさん元気に活動中。というバンドである。このアホサイト本ページAの項にももちろん紹介している。7年ぶりのアルバムになる。
 このジャケットでもう聞く前から満点つけたくなったが、オープニングからなんともまあ、郷愁のシャウトが聞ける。
 クサレメタルというほどへろへろの音ではないが、絵に描いたような80年代マイナーメタルを今において、この気合でやり続けるバンドなのである。オフィシャルサイトでのメンバーのお姿もなるほどだ。2006年の前作よりヤケクソ度合いは薄れているようだが、それがどうしたというのか。素晴らしい。人類の名作である。

 

AUDREY HORNE
"YOUNGBLOOD"


ノルウェー
4作目
http://www.audreyhornemusic.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=audrey+horne+youngblood
 前作に続き日本盤も出た。バンド名は90年代全世界で話題を巻き起こしたアメリカTVドラマ「ツイン・ピークス」に登場した謎が謎を呼ぶ登場人物オードリー・ホーンに由来している。などということはどうでもよい。
 まずこのアホ気なジャケット、何をアピールしたいのかさっぱりわからないが、音は素晴らしい。もう死語なんだろうか、メロコアやらエモやら呼ばれた今風のジャンルでその重量感のなさに物足りなさを感じたメタルリスナーはかつて多かったと思うが、今風ながらもこれはメタル耳がきっと満足行くという素晴らしい音である。THE POODLESを少しガラ悪くしたような雰囲気の音である。今の時代、これが最も真っ当でスタンダードなロックなのか。やっぱり時代は何回転もしてるなあと老人は思うなり。偶然↑に紹介したのもノルウェーのアーティストだが、この2つのアルバムで、ノルウェーという国はものすごい広いなあと思ってしまう。

 

TOBIAS SAMMET'S AVANTASIA
"THE MYSTERY OF TIME"


ドイツ
2001年始動
6作目
http://www.tobiassammet.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=avantasia+the+mystery+of+time
 本体EDGUYよりもすごくなってしまった?トビアス・サメットのメタルオペラプロジェクト、ライブ盤除けてもう6作目になる。ロゴがディズニーの映画みたいになっている。
 安心のブランドであるが、今回は大仕掛けな曲が少なくなり、メタルオペラの色はほとんどなくなった。だからといって物足りないなんてことはまったくなく、少し時代返りしたような、それでいて曲の素晴らしさがとことん映える、やっぱり名作級のアルバムである。
 ゲスト陣の豪華さはアマゾンの紹介ページでも見てもらうとして、2001年から6作目、よくぞだれることなく続くなあと感心する。プロジェクトなんだから好きなことをやってもいいものを、本体EDGUYよりも、路線は確定の安泰路線というのが面白い。好きな人間はこの路線でもまだまだ飽きることはないが、このロゴマークのきらめきを活かして(?)、メタルミュージシャンではない人をいっぱい呼んできて、無理やりメタルを歌わせたり、弾かせるというのはどうだろうか。それでもきっと、この全体的カラーは変わらないに違いない。
 もうひとつぱっとしないEDGUYはどうなるんだろう。

 

AXEL RUDI PELL
"LIVE ON FIRE "


ドイツ
89年デビュー以来15作以上リリース
http://www.axel-rudi-pell.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=axel+rudi+pell+live+on+fire
 なぜこの人が日本で全然人気出ないのか、わからん。ライブアルバムは2002年以来。もちろんCD2枚組。
 メタル歴1,2年、今の若いリスナーには玄人の音に聞こえてしまうのかもしれないが、意外にわかりやすいから、とか、わしも言わん。
 これが玄人のメタルの、ライブステージである。前のライブアルバムもそうだったが、長い演奏の中の陶酔がこっちにもしっかり伝わってきて、例えば古典、レインボーの"ON STAGE"などと同じ色の悦を感じてしまう。コンパクト感覚のなさも、ここまでいけば大したものである。わしがコンサート、全然行かなくなったのも、もちろん老齢のせいもあるが、こういう、ステージらしいステージを見せてくれる、聴かせてくれるミュージシャンがいなくなってしまったからである。若いバンドは生の爆裂音にこだわり、ベテランは若さを見せつけようとばかりする。
 まあ、日本ではそれが普通だから、そこがこのミュージシャンが日本ではお呼びでないという理由だろう。
 陶酔があるか、悦があるか、それが若手とベテランの違いである。このへんのミュージシャンになると、たとえ停電して真っ暗闇でもまったく同じ音を聞かせてくれるに違いない。一旦聞いたら途中で止めることなど絶対にできない。本当に、ライブアルバムらしいライブアルバムを聞かせてもらった。CD2枚組で13曲。短い曲まで長くなっている。その理由は聞けばわかる。

 

BAD RADIATOR
"HYPNOTIZE "

スウェーデン
再始動アルバム
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=bad+radiator
 これは私の嫌いな、高級車の乗り心地みたいなAORではないので、紹介したい。たま〜にギターがハードロックみたいな音を出しているが、メロディアスハードもメロディアスハード、AORもAOR、まるっきりそっち方面の音である。しかしここまで徹底している音なら、いい印象しか感じない。80年代のMR.MISTERやらリチャード・マークスみたいな音である。大体わしもブラックメタルやらデスメタルばっかり聞いてる日があるので、たまには耳の掃除も必要である。
 80年代、スウェーデンにGRACEなるハードポップバンドがいたらしい。そのメンバーが今になって結成したバンドらしい。120%アメリカの音だが、スウェーデン産。音質に大変気を配っているプロデュースで、何か、「聞く薬」みたいな音である。

 

BARBE-Q-BARBIES
"BREAKING ALL THE RULES"


フィンランド
10年デビュー
2作目
http://www.barbeqbarbies.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=barbe-q-barbies
 バーベQバービーズ、Breaking all the rules !
 アホかこいつら。
 というわけで、買ってしまった。
 ジャケット通り、女性5人組。フィンランド発である。私はフィンランド産にはうるさい。このバンドがアメリカなら私は最初から興味が湧かなかったはずだ。
 もう何年、しょっちゅう聞いてるフィンランドの女性バンドINDICAというのがいるのだが、ああいうドリームランドの音ではなく、こっちは↑ジャケット通り、かなりアメリカンな感じのするアホ・ロックである。フィンランド産の冴えはしっかりこういう路線にでもうかがえる。とっくの昔に聞き飽きてしまったようなメジャーハードポップ路線であるが、アメリカ産のように駄曲がない。実際はどうだか知らないが、ものすごく偉い人が時間をかけて制作しているような雰囲気がある。1曲1曲がプロの仕事なのだ。見かけは全然そうではないが、聞けばよくわかる。
 ランナウェイズみたいな曲もあって、大笑いだが、やっぱりすごく真面目に丹念に作り込まれているので、結局聞き惚れてしまう。それが"STFU"という曲で、Shut the Fuck Upだと。これが名曲である。YOU TUBEですぐに聞ける。フィンランド産、こっちでも攻めてきたか。

 

BLACK DEBBATH
"NA FAR DET FAEN MEG VAERE ROCK ! AKADEMISK STONER-ROCK "

ノルウェー
5作目
http://www.duplexrecords.no/band/black-debbath/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=black+debbath
 http://www.youtube.com/watch?v=vgxLOgLDqmM
 ↑まずこれを見てほしい。
 世界は広い、なんちゅうバンドがいるものか、と思った。全編を自国語で通し、世界へ進出する気のない凄腕が北欧にはいるから要注意である。
 ブラック・デバス。猪口才なパロディーバンドかと思ったら、全然違った。これまでのオフィシャルPVを見ればいい歳したおっさん連中がずいぶんとふざけたこともやっているが、音そのものはマジである。
 もちろんあのバンドあってのこのバンドだろうが、世界中に数いるストーナーロックも、ここまでやってこそリスナーは買う甲斐があるのだといいたくなる充実ぶりである。このメンバーの面構え。若いバンドならここは絶対に真似できない。
 メンバー全員40代前半。その中にはプロデューサーもいて、ノルウェーの人気コメディアンもいるそうだ(ボーカルのおっさんだろう)。音も、見かけも本物を狙ったということだろうが、全曲あのバンドに師事したストーナーサウンドというわけではなく、70年代サイケロック風の展開もあり、非常に奥の深い音楽性である。このアルバムを聞くと他のストーナーロックを聞く気がしなくなる。腕のあるおっさんたちがこういう音をやれば、若手は絶対にかなわない。
 世界中でブラック・サバスの新譜が話題になっているときに、なんというアルバムを聴いてしまったんだろう。冷静に本家のアルバムを聞けるだろうかわしは。

 

BLACK ROSIE
"BIGGEST BANGS OF A LEGEND - A HARDROCK TRIBUTE TO AC/DC"

ドイツ
デビューアルバム
http://www.blackrosie.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=black+rosie
 全員女性によるAC/DCトリビュートバンド。遊んどんのかと思うが、音を聞けばこの通り。女性なのによくもまあ、ここまでのボン声が出るもんである。まさにトリビュートにかける命、CD買う人間も文句言わないし入場料払って見に来る人間も文句言わない。Dirty Deeds Done Dirt CheapとかTouch Too Muchとか、他のバンドがあんまりやったことのない曲もセレクトされている。
 ロックに詳しい、ちょっと外国に住んだことのある人間とこれまで数人、話したことがあるが、AC/DCはなぜ日本で過小評価されているのか、と言う。過小評価などされてないと私は思う。1980年、雑誌はBACK IN BLACKを絶賛し、以降今に至るまで絶賛が途切れず、地方の駅前のレコード屋(CD屋)やアホの巣窟みたいな今のレンタルCD屋でも、ちゃんとAC/DCのコーナーが仕切られている。
 それでも過小評価、なのだ。そのくらい、外国にはフリーク、熱狂的ファンが多いということである。私は1990年くらいに1年程度ロンドンにいたが(不法労働)、「マクドナルドでのAC/DC合唱」を目撃したことがある。ただ有線(みたいなもの)で、AC/DCが鳴っただけのことである。20何年前のあの熱気がいまだあっちには存在していることが、このバンド↑のライブ映像を見るとよくわかる。

 

BLACK SABBATH
"13 "


イギリス
スタジオアルバム19作目、オジー・オズボーン1978年"NEVER SAY DIE"以来の復帰作品
http://www.blacksabbath.com/
you tube
http://www.youtube.com/OfficialSabbath
 噂には聞いていたが、ここまで初期の音に戻ってくれるとは。それがすごく自然体なのだ。
 ビル・ワードは体調を壊したわけではなく、契約の内容に不満があったそうで、ふくれてしまったらしい。トニー・アイオミ、ギーザー・バトラー、そしてオジー。3人がいて、そしてこの音。ひれ伏した。
 特にアメリカのトップ芸能人になってしまったオジーが、よくぞこの世界に戻ってきてくれたものである。プロデューサーのリック・ルービンにとっても人生一番の大仕事だったのではないか。あるいはAC/DCのときのように、大ファンと化しながら楽しく仕事をしていたのかもしれない。
 あまり重苦しい音ではないのが意外だった。ずどぉ〜んと重々しい音かと思っていたが、そうではなかった。80〜90年代のアルバムには相撲取りが飛び跳ねているかのような物凄い音もあったが、この新作は引き締まった音である。引き締まっていて重々しいのだ。
 重苦しい世界が聴く人間を魔界へ誘う、70年代の名作はそういう音だった。あの時期の音を彷彿とさせるこの新作には、魔界はない。ただし、魔界と同じ存在感になったブラック・サバスが立ち構えている世界である。100%完璧なブラック・サバスサウンドである。無理も無茶もなく、しっかりと鑑賞するブラック・サバスなのだ。
 トニー・アイオミは余裕また余裕のギターである。ギーザーのベースは相変わらずタイトでかっこいい。オジーも特別気張ることもなく、普段のオジーである。ビル・ワードはやっぱり体調に心配があるので、この若いドラマーで良かったと思う。
 ここまで、復活・再編の意義があったアルバムもないだろう。過去の名作を超える、ではなく、過去の名作への窓口となっている。おかげでロニー時代のアルバムもまた売れるだろう。このアルバムでブラック・サバスは200年後も名が残る。

 

BLACK STARS RISING
"A MEMORY - A MELODY"


ドイツ
デビューアルバム
http://www.myspace.com/blackstarsfalling
you tube
http://www.youtube.com/watch?v=gwEoFt0eTnQ
(いきなり音出ます)
 謎のバンドのアルバム。現地でしか手に入れられないような自主制作かと思ったら、日本のアマゾンでダウンロード販売している。オフィシャルサイトはなく、途中で投げ出したようなMYSPACEがあるのみ。外国のメタル百科辞典サイトにも名がない。
 しょうむない音なら紹介しないが、これがまた、真っ直ぐ一生懸命に舌っ足らずな若い女性ボーカルが歌うゴシックメタルでありながら、演奏が暗黒帝国の滅亡みたいにやたらめったら分厚くパノラミックなのだ。こんな音も聞いたことない。演奏120点、歌20点という不思議な音である。じっと聞いておればこの歌にも慣れてくる。演奏は本当に凄い。ゴシックメタルもテクニック合戦になりつつある昨今、私が欲しいのはこの、暗黒帝国大パノラミックサウンドなのだ。
 ほんと、何者なんだろう。

 

BLOOD OF GOD
"THE FALL AND RISE OF MAN"

ドイツ
デビューアルバム
http://www.myspace.com/bloodofgodmusic
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=blood+of+god+the+fall
 このへんの音を聞いても、もうどこの国の音か全然わからなくなってきた昨今でございます。
 これはドイツのバンドであるが、アメリカ産メロディックデス、BULLET FOR MY VALENTINEをガスガスにしばき倒しそうな音を出している。大層なタイトルであるが、別に大層な音でもない。凡作というわけでもなく、デスラッシュファンにも楽しめる内容である。2、3曲面白い曲がある。歌がデスとクリーンを上手に使い分け、これをやったら売れるんだぞ的な馬鹿な勢いで動いているバンドではないのは確実。テクニック面はこのデビュー作でオールクリア。あとこのバンドしかないという+αがあれば。と、珍しくまともなことを言ってしまった。

 

BLOOD TSUNAMI
"FOR FAEN !"


ノルウェー
2007年デビュー
3作目
http://www.myspace.com/bloodtsunami
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=blood+tsunami
 馬鹿なバンド名であるが、どうか許してやってほしい。
 ファーストアルバムのタイトルがその名も"THRASH METAL"という、ド阿呆なバンドである。誰かいい加減止めてやれ、と言いたくなるくらいの疾走感を前の2枚のアルバムでも聞かせてくれたバンドだが、この新作でもまったく同じ。家一軒が崖から転げ落ちるがごとく壮絶なやかましさ。ロゴマークは血生臭いが、音はそうでもない。スラッシュ&デストロイである。あろうことか、徐々に演奏力というか、完成度を高めてきているような感じもする。長くやっていれば当たり前かもしれないが。you tubeでも見られるオフィシャルPVの"Metal Fang"は呆れ+痺れの名曲。10年後もこのままの姿でいてほしい。全曲暴走。歩きながらであってもこれを聞くのは危険という気がする。そして私の今月一番幸せアルバムである。

 

BON JOVI
"WHAT ABOUT NOW"


アメリカ
1984年デビュー
12作目
http://www.islanddefjam.com/artist/home.aspx?artistID=7323
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=bon+jovi+what+about+now
 誰かが、もうオープニングで弾けてくれないのか、と言っていた。
 全然弾けないでもいいと思う。ハードロックバンド、アメリカ一国代表なのだ。曲調はどこかおっさんくさいけど、声が若々しいという今の姿が素晴らしいと思う。
 1週間くらい予定がなく、金は困らない程度財布に入っていて、時期は5月とか10月ごろ、車で田舎道を走っている時の感覚。そこでヘルメット姿の中学生とか大きな地蔵が目に入ってきたら雰囲気ぶち壊しだから、これはやっぱりアメリカ大陸を車でのんびり走るのが一番似合う音なんでしょう。
 一度聞いたら忘れられないメロディーライン、とか、そんな大層なものはない。しかしこの雰囲気が快適である。快適感覚を頭に置いてくれる、今の世の中では聞く薬のようなアルバムである。金もない仕事もない、1年後どころか1か月先がわからないという暮らしをずっと送っている私が言うのだから、本当である。これを聞けて幸せ、これを聞ける今まで生きてこられて幸せ。これを聞いて私は本当に元気が出ます。Pictures of Youという曲が素晴らしい。

 

BRING ME THE HORIZON
"SEMPITERNAL"


イギリス
2006年デビュー
4作目
http://www.bringmethehorizon.co.uk/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=bring+me+the+horizon+sempiternal
 若いメタルファンにはこれもメタルの先頭なんだろうが、おっさんでもおじんでも、メタルが本当に好きというのならこのバンドを聞かないと損するぞ、というアルバムがついに完成した。
 わしのような老人にはこれまでのアルバムは、いいアルバムだとは思うけど実際あんまり聞かんだろう、という今風の音だった。今度は違う。これを純なメタルではないと、思うなら思ったらいい。でもこれに否定的な意見を人前で吐いたら、若いメタルファンは向こうへ逃げると思う。2013年、それくらいこれが今スタンダードの音なのだ。
 例えば作曲も即興ではなく、じっくりとソファーに腰掛けて何時間という経過を経てだろうか、前とは説得力も奥行きも全然違う。若い人間には迷惑だろうが、わしも本気でこのバンド凄いと思うぞ。あれだけ走れば人間としては十分である。今度はうねるわ猛るわ、それが物凄い重量感である。かつてのNEUROSISみたいな世界である。若いだけあってアレよりまだパワフルである。ミドルテンポの凄みをまた新しく知った。これは名作。

 

BUCKCHERRY
"CONFESSIONS"


アメリカ
99年デビュー
6作目
http://www.buckcherry.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=buckcherry+confessions
 相変わらずの音で、マイペースである。デビュー時何枚かは全然個性ないぞと思った音も、出で立ちはほとんど変わらずして、今ではこの音こそBUCKCHERRYという世界を作った。初めてのバンドの音を聞いて、それが個性的であるかないか、私などすぐそういうことを言ってしまうが、そんなことは実際まったくあてにならないものである。個性的だからといって素晴らしいということではない。逆に、没個性だからつまらんというわけでもない。
 とか言うてる私に向かって、おいそこコラおっさん、何ぶつぶつ語っとるかと言われてしまいそうな音だ。世界をツアーできる音を完成させてバンドはその冥利に尽きる。BON JOVI同様、このバンドもアメリカの顔です。ということをひしひしと理解した1枚。
 3曲目"Nothing Left But Tears"のイントロがロバート・パーマーみたいで面白かった。

 

BULLET FOR MY VALENTINE
"TEMPER TEMPER"


イギリス
2005年デビュー
4作目
http://www.bulletformyvalentine.com/us/home
you tube
http://www.youtube.com/channel/HC-e5njwagDqc?feature=artistob
 着実に一歩一歩実力をつけているバンドであり、4作目ということで、前作にはなかった良い部分も加わっていると普通に思ったのだが、AMAZONの評価を見て驚いた、えらく評判が悪いじゃないですか。うーん、ようわからん。このアルバムがようわからんのではなく、評判悪い理由がよくわからん。この音にファンは飽きたのか? こういう、2010年代メタル先頭のバンドが、80年代90年代メタルみたいな真似をしてくれたらわしなんか否応なしに評価を上げてしまうリスナーであり、トレンドを評価する場合はそりゃわしなんぞ途端にマイナーな意見を吐く人間になってしまうことは自覚しておるが。
 ボカンドカンとでかい音出して、そのあと爆走する、そういう典型のパターンを脱し、イントロで大風呂敷広げてサビの前の溜めを作り、つまり1曲の中にちゃんと起承転結を作る、これぞベテランメタルバンドの定番パターンだと思うが。若手典型から卒業してベテラン定番になる、少しも悪いことではないと思うが。捨て曲なんかないしなあ。この前の3枚のアルバム、すべて傑作とは私は思わないが、しかし私はこのアルバムの見方であるぞ。3曲目のタイトル曲"Temper Temper"、7曲目"Dead to the World"、ラストナンバー12曲目"Not Invincible"、3曲の名曲がある。佳曲以上の名曲、3曲も露骨に名曲があれば大傑作だと思うけどなあ。

 

BYZANTINE
"BYZANTINE"

アメリカ
2004年デビュー
4作目
http://www.myspace.com/byzantine
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=byzantine
 偶然↑BULLET FOR MY VALENTINEの好敵手のようなバンドである。このバンドは最初からこんな凄い音を出していたわけではなかった。このアルバムの音は凄い。今風のフットワークの軽さを誇りながら、必ずスラッシュメタルギターリフがくっついてくる。メジャーサウンドと聞き比べたら、やっぱりマイナーだからこそできる無茶というものがあるのかもしれない。このバンドの場合は無茶が新しい技に聞こえる力量がある。特に走る曲のケツまくった度は凄い。こんな若々しい音を出すバンドだったか?
 今風だからついていけない、とそう言ってしまいたいメタルもたまにあるけど、こういう音については、昔風の中になかったから私は素晴らしいと思う。凄み、躍動感、重量感、それがあれば昔風今風、関係ない。私の耳は老齢であるが、美点というものをしっかり聞き逃さない精度を失いたくはない。
 しかし説教くさいレビューである。アホか。若い連中、あんまり読んでないからいいんです。


メタルではありませんのページ

 

BJORN BERGE
"MAD FINGERS BALL"



ノルウェー
1999年デビュー
9作目
http://www.bjorn-berge.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=bj%C3%B8rn+berge
 何かクラシックのギタリストみたいなジャケットだが↑、これはギャグだろう。
 12弦ギターブルースギタリスト、40過ぎたおっさんミュージシャンの通算9作目のアルバムだが、一度YOU TUBEで"Ace of Spades"(もちろんあの曲)のライブ映像を見てほしい。こういう、すごい変わったギタリストなのだ。
 このアルバムはどうやらカバーアルバムみたいであるが、オープニングがびっくりした、90年代一瞬だけ有名になったMORPHINEという、ギター+サックス+ドラムスのけったいなバンドの有名曲である。こんな曲に目をつけるソロギタリストなど、Bjorn Berge(ホントはoに斜め線が入っている)、世界でこの人しかいない。
 スライドギター奏法の12弦ギター。こんなやかましい音は、バンドだと無理なんじゃないだろうか。ギタリストソロなんだから何の不都合があるか、と、そんなアルバムばかりである。"Hush"(もっちろんあの曲)のカバーではベースもドラムスも入っているが(ついでに女性コーラスまで)、もう、唯一独特の世界である。マンガみたいである。
 かといって教則本に載りそうな正統派らしい真面目な曲もあるし、とにかく凄い人である。世のギタリストはこれを聞いて見聞を広めてほしい。





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