2013年 6月までの新作紹介〜その2 A・B残り+C

すんません、ブックマークつけるの大変なので、ずりずりと下にバーを下げてご覧ください

BATTLEBEAST "same" − 歴史的名作。すぐ下に紹介 ★おすすめ★

CHRISTOPHER LEE "CHARLEMAGNE : THE OMENS OF DEATH" − 世界最高齢メタルボーカリスト、91歳

A PALE HORSE NAMED DEATH "LAY MY SOUL TO WASTE" − TYPE O'NEGATIVEスタイルのスーサイダルメタル

ABORYM "DIRTY" − マシンメイドブラックデスメタル百花繚乱

AIRBOURNE "BLACK DOG BARKING" − もはや親父から完全独立! 
★おすすめ★

AMORPHIS "CIRCLE" − メランコリックメタル世界最高傑作 
★おすすめ★

ANVIL "HOPE IN HELL" − 有名人になっても何も変わってない

ARSIS "UNWELCOME" − ダダ流れデスメタル、ベテランの域

ARTLANTICA "ACROSS THE SEVEN SEAS" − まるっきりARTENSION

ATROCITY "OKKULT" − LIV KRISTINEの旦那による老舗プロジェクト、今回もバリバリメタル作品 
★おすすめ★

AZRATH XI "OV TENTACLES AND SPIRALS" − ドラマー爆裂デスメタルスペシャル

BAI BANG "ALL AROUND THE WORLD" − いつの間にやらワールドワイドサウンドに

BLACK DAHLIA MURDER "EVERBLACK" − ついに出た、バンド最高傑作はCRADLE OF FILTHも驚く音 
★おすすめ★

BLACK PYRAMID "ADVERSARIAL" − 標準ストーナーメタル

BLACK STAR RIDERS "ALL HELL BREAKS LOOSE" − 2013年のTHIN LIZZY

BLACKENED ANGEL "CHRONICLES OF DAMNATION pt.1" − オーストラリアのLORD、ILLIUMのメンバーによるスラッシュメタル

BLOOD RED THRONE "same" − 通算7作目にして最高傑作

NURNING RAIN "EPIC OBSESSION" − ダグ・アルドリッジのバンド、意外に威勢がいい

BURZUM "SOL AUSTAN, MANI VESTAN" − いいかげんにしとけ

CALADAN BROOD "ECHOES OF BATTLE" − 貧相ではないがつまらないブラックメタル

CATHEDRAL "THE LAST SPIRE" − ラストアルバム。ラストらしい出来かどうかは...

CHARING CROSS "SINSPIRATION" − スイス産、KROKUSやGOTTHARDの甥っ子みたいな音

CHROME MOLLY "GUNPOWDER DIPLOMACY" − 23年ぶりのアルバム!

CHTHONIC "武徳 : BU-TIK" − 台湾産COBがCOBを完全に超えた 
★おすすめ★

CHURCH OF MISERY "THY KINGDOM SCUM" − 復活したブラック・サバスも腰抜かす

CIRCLE OF SILENCE "THE RISE OF RESISTNACE" − デリカシーのカケラもないパワーメタル、バンド名でウソつくな

CIRCLE II CIRCLE "SEASONS WILL FALL" − ザック・スティーヴンスのバンド、6作目、素晴らしい重低音

CLAMFIGHT "I VERSUS THE GLACIER" − ストーナーの中の当たり

CLUTCH "EARTH ROCKER" − 本当に地球のロック。Clutch久々の名作 
★おすすめ★

CHILDREN OF BODOM "HALO OF BLOOD" − 大御所らしいサウンド、もはや大御所なので当然か

CODE OF SILENCE "DARK SKIES OVER BABYLON" − EDEN'S CURSEメンバーによる正統派新人

COLD INSIGHT "FURTHER NOWHERE" − フランスのバンドだが、フィンランド産メランコリックメタルみたいな音

COLISEUM "SISTER FAITH" − 今風オルタナティブパンク、しかしKILLING JOKEみたいな音で素晴らしい

COMEDY OF CHAOS "FANFARE & FANTASY" − 洋楽的に素晴らしいプログレバンド 
★おすすめ★

COVERED CALL "IMPACT" − ゴラン(ヨラン)・エドマンの現在

CRASHDIET "THE SAVAGE PLAYGROUND" − 名作メーカー、4作目、年間ベスト5級作品 
★おすすめ★

CREST OF DARKNESS "IN THE PRESENCE OF DEATH" − ついにCRADLE OF FILTHクラスの存在感 
★おすすめ★

CRIMSON REIGN "THE CALLING" − 珍しい、独りブラックメタルではなく独りパワーメタル

CRYING STEEL "TIME STANDS STILL" − 確かにタイトル通り、時が止まっている音。80年代突貫トンネル工事風正統派メタル

CRYSTALLION "KILLER" − 凡百メロディアスパワーメタルから大転身、名作 
★おすすめ★

CSEJTHE "REMINISCENCE" − カナダ産だが北欧産みたいな高品質ブラックメタル

CULT OF LUNA "VERTIKAL" − ベテランメタルサウンド、環境音楽一歩手前


BUDDHA SENTENZA "SOUTH WESTERN LOWER VALLEY ROCK" − 西方浄土ロック? 
★おすすめ★

CTA (CALIFORNIA TRANSIT AUTHORITY) "SACRED GROUND − 名前でぴんと来る人はぴんと来る 
★おすすめ★

BATTLE BEAST
"BATTLE BEAST"


フィンランド
11年デビュー
2作目
http://www.battlebeast.fi/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=battle+beast+battle+beast

 2010年のワッケンフェスティバルで新人コンテストがおこなわれ、グランプリを取ったバンド。セカンドアルバムである。
 しかしこのバンドもフィンランド産のマジックか、演奏、曲、キャラ、完成度、すべての面において満点を誇る。
 ファーストアルバムはその、ワッケンフェスティバルの新人賞の勢いか、曲によってはMANOWARみたいなコーラスにも挑戦し、メタルゴッドへの忠誠を誓うことの所信表明のようなアルバムだった。そこでも曲の素晴らしさが光っていたが、このセカンドアルバムはもはや、それどころではない。
 ボーカルが交代しているが、このNoora Louhimoなる女性ボーカリストは、ファーストの女性ボーカルよりも数段凄い。性別を完全に越えている。正統派の歌で、である。師匠はきっとドロ・ペッシに違いない。こんな女性ボーカリストは久しぶりだ。
 このジャケットを見ると少々プロダクションの良さそうなスラッシュメタルを想像するが、内容は非常に高品質なワールドワイド・ヘヴィメタルである。この音で、こういうメタルコンセプト総合祭りのジャケットであることがかえって嬉しい。
 正統派ではあるが、この若さにしてすでにもう師匠格の雰囲気がある。あまりに上質な作品であれば、路線などたったひとつで大、大満足である。あの曲に似ているとか、あのバンドのあれみたいだとか、それがない。MANOWAR風のコーラスもなくなり、メタル神賞賛の暑苦しさもまったくない。ただただ真っ直ぐで、大きなヘヴィメタルである。今現在フィンランドで最も注目株である。繰り返すが、若くて活きのいい新人ではない。繰り返すが師匠格の音である。ずっと聴いているが、感嘆の言葉しか出てこない。 



世界最高齢の
メタル・ミュージシャンは91歳(本当)

CHRISTOPHER LEE
"CHARLEMAGNE : THE OMENS OF DEATH"

世界遺産俳優
メタルアルバム2作目
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=christopher+lee+omens
ウィキペディア(映画の話、日本語)
http://ja.wikipedia.org/w/index.php?search=christopher+lee
wikipedia(音楽活動の紹介もあり、英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/Christopher_Lee
日本語記事
http://www.kotaku.jp/2013/05/charlemagne_the_omens_of_death.html
(アルバムプロモ映像ではアリス・クーパーにアイアン・メイデン、ラプソディーという名前を普通に出して話し、トニー・アイオミが小僧っ子になって対談している)

歌ってらっしゃるPVはこれ(前作より) 感動!
http://www.youtube.com/watch?v=cvKRbi2ovDY

 まずこれ、ちゃんと聞けるアルバムなのか、と思う人がいるだろうが、本当に聞けるアルバムである。RHAPSODYファンにおすすめと言ってもいい。
 音を紹介するまでに何行の説明が要るだろうか。
 1922年生まれの91歳。
 ロード・オブ・ザ・リングのサルマン(悪いほうの魔法使い)。2012年の「ホビット」でも同じ役で堂々と出演しており、まだまだ続く3部作品にも出演。または、スター・ウォーズのドゥークー伯爵。スリーピー・ホロウの市長。
 それどころか、この人は1950年代からのドラキュラ伯爵が一番有名である。つまり、私らのじいさんばあさんの知っている外人の有名役者である。
 少しだけ関係ない話をするが、BRUCE CAMPBELLという名前のブルタルデスメタルだったかグラインドコアだったか、そんなバンドがいる。だから私は↑このアルバムを見たとき、ホラームービーのレジェンドであるその人の名をバンド名に頂戴した、またバチ当たりなバンドが出てきたと思った。
 聞いて腰抜かした。正確に言うと、調べてみて腰抜かした。
 本物である。クリストファー・リーがボーカルを受け持つ、メタルアルバムなのだ。
 何度も言うが、本当に本当である。
 この人が初めてメタルアルバムに参加したのは、RHAPSODY(OF FIRE)である。アルバム3枚に「語り部」として参加している。MANOWARのファーストアルバムの焼き直し"BATTLE HYMNS MMXI"では"Dark Avenger"の語り部をしている。
 ではこのアルバム。
 メタル演奏をバックに朗々と語り部っているのか、というと、半分当たりで、半分そうではない。
 2010年、前のアルバム"CHARLEMAGNE : BY THE SWORD AND THE CROSS"は確かに、オーケストラ演奏をバックにメタル風戦争絵巻を高らかに朗じるという、9割「メタル詩吟」のようなアルバムだった。
 しかし今回はそうではないのだ。
 歌っている。前作以上に、本当に歌っている。フガフガの声であるはずがなく、中音域の非常に豊かな、やはり朗々とした歌である。91歳の人に歌わせたらあかんだろう、という曲もある。
 前作に続き製作総指揮を取っているのが、ジューダスのKKの後釜、リッチー・フォークナーである。ギタリストは若干21歳、グァテマラの天才ギタリスト、ヘドラス・ラモス。
 RHAPSODYサウンドの、少々語り部が多いバージョン。そういうアルバムである。メタル耳がしっかりと最後まで鑑賞できるアルバムである。調子乗りのプロデューサーなどに担ぎ出され、神輿の上に乗せられたのであれば、ここまでスタンダードなメタルサウンドはあり得ない。クリストファー・リー本人が大やる気なのである。
 ついでに言うとツイッターもフェイスブックもある。

 日本では、介護業界が徐々に様変わりしつつある最中で、デイサービスなどでは認知症ではない元気な老人が職員の手を焼かせている。当たり前である。老人の質は年々変わっていくのだ。
 しかしどれほど「現役」の老人が多くなっても、メタルアルバムを出すほどの人はまだ30年40年出てこないだろう。

 

A PALE HORSE NAMED DEATH
"LAY MY SOUL TO WASTE"

アメリカ
11年デビュー
2作目
http://apalehorsenameddeath.com/
you tube
http://www.youtube.com/user/apalehorsenameddeath
 暗い。とにかく暗い。suicide metalと呼ばれたTYPE O'NEGATIVEの連れみたいな音である。
 何がどう違うのかと言われそうだが、これはゴシックメタルと呼ぶより、ゴシックロックの流れを引いている。90年代以降の。わざわざLPレコードバージョンも出ているくらいだから、それなりに人気のあるバンドなのだろう。メタル耳には苦しゅうない音ではあるが、全編スローまたはミドルテンポ、徹底して暗いメロディーを歌うのは本当に死にたい願望の男みたいなボーカル、私はこれもまたエンターテイメントと思うんだが、聞く人によってはどうだろう。

 

ABORYM
"DIRTY"

イタリア
99年デビュー
6作目
http://www.aborym.it/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=aborym+dirty
 インダストリアル・ブラックメタルバンドついに6作目。最初色物もいいところだと思ったが、ここまで来るとさすがに説得力も大きい。ただし、笑う。曲によっては非常にクールだが、曲によっては笑う。喧しさではこの業界1,2を争うだろう。こんなに騒がしくなかったファースト、セカンドあたりが個人的には一番素晴らしかったと思う。
 ノルウェーのあのBLOOD TSUNAMIのドラマーFaust、恐ろしき過去を持つこの男がしっかりドラマーとしてクレジットされている。この男の手数も相当なものだが、このバンドの場合はチャカポコチャカポコ、ビュンビュンビュンビュンと機械音があちこち飛び回るので、まあ、打撃音の喧しさと言ったらそのへんのデスメタルの5倍くらいある。

 

AIRBOURNE
"BLACK DOG BARKING"


オーストラリア
07年デビュー
3作目
http://www.airbournerock.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=airbourne+black+dog+barking
 それはもうどこでも言われているように限りなくAC/DCな音であるが、何度聞いても笑うほど似ているとはいえ、本家は還暦元気者世界一、こっちは同じDNAの2013年プロデュースの音であり、あっちが親でこっちはまさに子である。何が素晴らしいと言って、コピーサウンドではないから素晴らしいのだ。
 子やら兄弟やら甥や姪を名乗るバンドはしょっちゅう出てくるが、全部が全部と言っていいほど、クローンとしての完成度で勝負しているのであり、このAIRBOURNEとはまた違う世界の話である。
 凄いスピード感に、ありえない手技足技。活きの良さがここまで感動的なバンドもそうそういない。
 この音が気に入ったという10代、中学生や高校生がいたら、その子らはきっと、わしらが80年前AC/DCというバンドを聞いたときに感じたまったく同じ感動を感じていることだろう。
 レーベルの宣伝にあった「エアボーン印満載」の言葉が微笑ましい。

 

AMORHIS
"CIRCLE"


フィンランド
99年デビュー
11作目
http://amorphis.net/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=amorphis+circle
 名作メイカーの通算11作目。やっぱりとてつもない名作である。少々のマイナーチェンジはあったにせよ、もう8枚9枚同じ路線であるが、これが全然飽きさせない。なんですかこれ、というくらいの名曲が何曲もある。H.I.M.やTO DIE FORやBEFORE THE DAWN、フィンランド・メランコリックサウンドのラスボスとしてでーんと構えていそうな音であり、その印象は正しく事実。このバンドがすべての大元だったと言っても過言ではない。
 今回はよりメランコリック路線が強調されている。メロディアスメタルファン、気絶である。このバンドはサビで感動させてくれて、まだ続きがあったりするのだ。2曲3曲つなげて1曲にしましたという、露骨な場面転換ではなく、このバンドはしっかりと1曲の中に起承転結それ以上を謳う。
 走る曲などないのに、ギターはスリリングな技を出す。派手ではないが、キーボードの自己主張も素晴らしい。
 ボーカル以外の演奏力の弱さ、固定ファンがついていることについての甘え、など、このジャンルの問題点をフィンランドトップクラスのバンドがしっかり指摘している。こんな完璧すぎるアルバムを出された後は、他のバンドも困るだろう。
 何というか、こんなホラーなジャケットにすることもなかったと思う。

 

ANVIL
"HOPE IN HELL"


カナダ
1981年デビュー
15作目
http://anvilmetal.com/
こっちの古いホームページもしっかり更新されている!!
http://my.tbaytel.net/tgallo/anvil/http://my.tbaytel.net/tgallo/anvil/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=anvil+hope+in+hell
 世界的に有名な人たちになってから以降も、いろいろな意味で、このバンドは変わらん。
 少しは浮かれたような音を出してもいいものを、音はまったくずっと永遠に同じ。みたいである。今でもリップスおやじは雪の中フォークリフトを運転しているのだろうか。あんなときと、音は何も変わっていない。呆れるほどに頼もしいというか、頑固者というか。
 びっくりするような名曲もない代わり、このバンドが活動している限りおっさんリスナーおばちゃんリスナーも決して引退などすることがないという、まさにメタル・マインド誉れの1枚である。最後の曲で、やっぱりかましてくれる!
 私がガキのころ、こんな年齢になるまでメタルを買って聞いてるとは思わなかった。20年後30年後、同じメタルがあるとは夢にも思わなかったからだ。老齢になった私は意地になって若ぶってメタルを聞いているのではない。まったく普通に聞いている。まだ、あの時代のメタルが堂々と、こうして存在するからである。

 

ARSIS
"UNWELCOME"

アメリカ
04年デビュー
5作目
http://www.myspace.com/arsis
you tube
http://www.youtube.com/ArsisOfficial
 モンスター軍デスメタルの割には暗そうなジャケットで、路線変更したのかと思ったら、全然。
 相変わらず近所迷惑で、ビル解体工事のBGMのような世界である。このジャンルにしては風格のあるバンドだが、風格なんぞどうだっていいのがこのジャンルのつらいところかもしれない。凄いのは誰だって認めるが、その凄さが今飽きられている。3曲目のように今風若手サウンドみたいな工夫もあるが、アルバム1枚全体創意工夫にあふれたものを若手がすでに出している。マニア受けのバンドで終わりたくないのなら一度、山篭り雪篭りを敢行することをおすすめする。アホになるか、または先生になるか。そこが聞いてすぐにわからないと、今のリスナーは反応しない。
 偉そうなこと言って申し訳ない。

 

ARTLANTICA
"ACROSS THE SEVEN SEAS"


アメリカ、スイス、イタリア
第1弾アルバム
http://www.spv.de/_BRIDGE/products.php?product=265372
 ARTENSIONは活動停止した。ということだろう。
 ジョン・ウェストと、ギタリストのRoger Staffelbachが一緒に、ARTENSIONみたいな音を造り、しかしバンド名はARTENSIONではなくてARTLANTICAという。おわり。
 という状況。ARTENSIONと比較してしまって当然というか、はっきり言ってメンバー何人か抜けたARTENSIONである。これは。
 重量感が少々薄れ、ボーカルもあまり力(りき)んでおらず、少し若返ったような歌い方である。軽めのARTENSIONである。しかし奥行きは相変わらずで、やはりと言うかなんというか、新キーボードプレイヤーは100%ヴィタリ・クープリと同じ音を出している。このMistheriaなる人物はイタリア人で、Roger Staffelbachがソロ活動から引っ張ってきた人物であり、MISTHERIAなるバンドを組んで1998年デビュー、4枚のアルバムを出している。ピアノだけのソロアルバムも出しており、ヴィタリ・クープリの後釜としては申し分のない人選である。それはこのアルバムの音が語っている。
 しかしオフィシャルサイトも何もない、YOU TUBEでもまったく音が聞けない(レーベルの紹介ページで試聴はできる)、今の時代こういう態度だとアルバムは売れませんよ。まことにインターナショナルなバンドなんですから、もっと派手に売り込みかけてほしい。

 

ATROCITY
"OKKULT"


ドイツ
90年デビュー
15作目
http://www.atrocity.de/
you tube
http://www.youtube.com/user/AtrocityOfficial
 リヴ・クリスティーンがなぜか有名になったが、ギタリストのAlexander Krullはリヴの旦那であり、そしてこのATROCITY、結成1985年からの創立メンバーである。
 このATROCITYほどアルバムごとに音楽性をころころ変えるバンドは珍しく、デビュー時こそ陰気なテクニカルデスという珍妙なスタイルで、全然売れなかったが、3作目94年の"BLUT"、ザクザクのスラッシュメタルリフを織り込んだサウンドが注目され、以降、森林のアコースティックサウンドに変身。この時点でなんだこりゃ?である。ドイツのファンを痺れさせたあと、次なるアクションは何とまあ、LAIBACHを信仰するインダストリアルスタイルに開眼、LAIBACHと言えばインダストリアルメタルなどよりさらに深く奥義教義を持つ(≒小難しい)バンドであり、まるまる1枚LAIBACHのトリビュート作品を作ったあと、6作目"WILLENSKAFT"、やっと、ついに、メタルファンに響くストレートな大仕掛けパノラミックデスメタルへ標準を定めた。その後、80年代初期ニューウェイブロックをメタル調にアレンジしたカバーアルバム"WERK 80"が世界中で大好評、その次の"GEMINI"がRAMMSTEINやらDIE KRUPPSのような激クールマシーンメタルアルバムの大傑作で、次にWALTARIみたいなシンフォニックブラックデス"ALTANTIS""を豪快に完成させ、次なるアクションは80年代初期カバー曲第2弾"WERK II"、続いての作品、"AFTER THE STORM"がリブ・クリスティーンのLEAVES' EYESと兄弟サウンドのようなゴシックメタル作品であり...あーしんど、続くのがこの新作である。
 近年のアルバムを総合したような音であり、WALTARI風シンフォニックデスメタルあり、RAMMSTEIN風アジリ路線あり、ゴシックメタルあり、すべて一大メジャー路線の大仕掛けな音である。まあ、なんちゅう、総合商社的サウンドでありましょう。
 小難しさが一切なく、ただただ品揃えの豊富さ、各品物のクオリティーの高さに驚くこと必至。それも大盤振る舞いで、問答無用のメタル技でぐいぐい引っ張っていく。オープニング曲の凄さ、圧倒感覚がすべてを物語っている。緊張感は最後まで途切れない。

 

AZRATH XI
"OV TENTACLES AND SPIRALS"

イタリア
11年デビュー
2作目
http://www.myspace.com/azrath11doctrine
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=azrath+11
 激音の土石流、ブルタルデス/ブラックメタルサウンド。ドラムスの手数が多すぎて、それゆえ凄みに惹かれ新しいファンがつくのだろうが、ここまでやかましいサウンドとなると、超人コンテストを観覧しているような楽しさはあっても、それは一度見たら(聞いたら)十分ということで、再び聞こうとは思わない。ドラマーは特に、もっと違う部分を工夫してほしい。
 ブルタルデスファン、テクニカルデスファンあたりには傑作になると思う。

 

BAI BANG
"ALL AROUND THE WORLD"


スウェーデン
88年デビュー
7作目
http://www.myspace.com/baibang
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=bai+bang+all+around+the+world
 88年から活動している北欧ポップハードロックバンド。久しぶりにこのバンドのアルバムを聞いたが、大変成長している。3枚ほどアルバムすっ飛ばしていて聞いていないので、またじっくり聞いてみたい。
 まるでTREATみたいな、勢いも弾けもある素晴らしい音である。正直でストレートすぎる音だが、そこはこのバンドもよくわかっていて、しっかりと正統法で、曲で勝負している。特にどの曲もサビが印象的で、リスナーにそう言わせてこのバンドの勝ちである。メジャーでも魑魅魍魎跋扈する世界のメタル界ではこういう音はお呼びではないが、さすがにスウェーデン、本国ではしっかり食っていける音だと思う。
 年配者が多いAORハードロックファンが第一にこういうバンドを救ってほしいよ。一番耳が喜ぶ音だろうし、もし生で聴くことなんかあったら、こういう音こそ最も感動的なのだ。かなり元気な音であるが、それでもしみじみ聴ける傑作。

 

BLACK DAHLIA MURDER
"EVERBLACK"


アメリカ
03年デビュー
6作目
http://www.myspace.com/blackdahliamurder
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=black+dahlia+murder
 これは笑った。馬鹿にしているわけではない。CRADLE OF FILTHの新作と言われても信じてしまうくらい、それ風の音で始まる。メタルリスナー、爆音ロックリスナー双方から評判のいいこのバンドであるが、この新作はブラックメタルをごくんと呑み込んだ、物凄い音になっている。これrまでの個性も消えたわけではない。ただ、古い表現で恐縮だが、CDプレイヤーが跳ね出しそうなこのパワーこそ一番の聞き物であり、いや、もうこれは聞くのではなく、体験する音となっている。
 マイナーくささもある程度は残してほしいと、聞く前には思うもんである。しかしまあ、聞いてしまえば。駐車する場所も(ついでに維持費も)あるなら誰しも大きな車がほしい。これはそういうアルバムだ。世界一激しいメタルサウンドのようでありながら、結局、大きく、総合的である。

 

BLACK PYRAMID
"ADVERSARIAL"

アメリカ
09年デビュー
3作目
http://www.myspace.com/blackpyramidkills
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=black+pyramid
 ストーナーメタル。個人的に特異なジャンルではないが、まず音壁が物凄いバンドは素晴らしいと思うし、あと、60年代70年代レトロ・サイケデリックロックのリバイバル的な応用があれば私は好きである。典型スタイルをなぞる、空気だけをなぞるようなサウンドはつまらんと思う。当たりハズレの激しいジャンルだと思っているが、このバンドは、、、まあ、可もなく不可もない。長い曲を最後まで聞かせるだけで、いいアルバムだとは思う。もう少し、スラッシュメタルもびびるような音壁をドカーンと立てて、誰を彷彿させてもいいから、60年代70年代の誰かの音を引っ張り出してきてほしい。
 というのはこのジャンルのファンの考えを無視したメタルリスナーの勝手な言い草であって、すんません。

 

BLACK STAR RIDERS
"ALL HELL BREAKS LOOSE"


イギリス
再始動第1弾
http://blackstarriders.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=black+star+riders
 スコット・ゴーハムとリッキー・ウォーウィック(THE ALMIGHTY)他による、THIN LIZZYよもう一度サウンド。当初THIN LIZZYの新作という形だったそうだが、紆余曲折あってこういう形になったそうだ。
 オープニング曲はぴんと来なかったが、WHITESNAKEとTHIN LIZZYが合体したような2曲目で大拍手、ゲイリー・ムーアの"Blood of Emerald"を思わせる3曲目で猛感動。リッキー・ウォーウィックの歌は意図的にフィルの歌い方に似せてはいるが、汗のかかないような似せ方で、トリビュートバンドの暑苦しさはない。「THIN LIZZYもう一度具合」は全体的にマニア感涙というよりも、ファンがにやっとする程度のもので、よく考えてこうしたのか、たまたまこうなったのか、この先も続く可能性をしっかりと敷いている。繰り返すが、暑苦しい音ではないから、かえって良かった。本家です、という安定感と説得力はおもいっきり大きい。80年代メタル、ハードロックファンは何を差し置いても聞くべき。

 

BLACKENED ANGEL
"CHRONICLES OF DAMNATION Pt.1"


オーストラリア
第一弾アルバム
http://www.blackenedangel.net/
you tube
ない
 オーストラリアの正統派メタルバンドLORDのボーカル+ギターLord TimがILLIUMのドラマーTim Yatrasたちと共に結成したプロジェクトバンド。濃いのぉ〜と思ったら、正統派パワーメタルではなく、スラッシュメタル7割ブラックメタル2割正統派1割みたいな音。
 本当にスラッシュメタルしか知らないスラッシュメタルバンドというのも数多くいて、もちろん才能あればそういうバンドも傑作を生み出すが、どのようなメタルであれ、駄作の原因は8割9割他のジャンル知らずである。このバンド、プロジェクトの音はこれまでのキャリアをしっかり活かした、スマートな雰囲気のするスラッシュメタルである。完成度は群を抜いて高い。
 と真面目なことを言ってしまったが、真面目に書かざるを得ないような音であり、真面目に越したことはないにせよ、真面目から少しはみ出てほしいと思うような音でもある。ちなみに、歌詞は巷のブラックメタルらしく物騒で絶望的なことを歌っている。と思う。

 

BLOOD RED THRONE
"BLOOD RED THRONE"


ノルウェー
01年デビュー
7作目
オフィシャルサイト なし 
http://en.wikipedia.org/wiki/Blood_Red_Throne ←wikipedia(英語)
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=blood+red+throne
 7作目にしてこのタイトル、相当に気合いの入ったアルバムで、身体全体からダラダラ血を流しておまえいつまで生きとんねんという血みどろブラックメタルスタイルが、痩身格闘技者のようなサウンドになった。ライバルはVADERである、と言わんばかりの音。何というのか、このジャンルは必ずしもベテランの音が、メタル初心者用とは限らないという通則があるが、こういう風にブラック・デスメタルバンドの音がコンパクトになるということは、聞きやすくなるということで、マニアが何と言おうとこれは進化である。迫力まで薄れていたら話にならないが、そこはまったく問題なし。ただし、ブラック血みどろメタルに常に無茶を求めるマニアは満足行かないかもしれない。私は気に入った。

 

BURNING RAIN
"EPIC OBSESSION"

アメリカ
99年始動
3作目
http://www.burningrain.net/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=burning+rain+epic+obsession
 ダグ・アルドリッチのバンド。未聴の方は地味なハードロックを想像されるだろうが、ボーカリストのおかげでこのバンドは結構弾けた音を出している。ギターはソロアルバムを思い出させるというより、あのBAD MOON RISINGそのままである。ここにカル・スワンがいたら、と思ってしまうが、それはこの、弾けた歌を歌うボーカリストに失礼である。音の艶は今風で、路線は90年代メジャーアメリカンハードロック。売れそうか売れそうでないかと聞かれたら、今のご時勢、全然売れそうにない音だが、こんな音を力いっぱいやっているバンドがこうしていることは頼もしい。解散してしまわない程度に売れてほしい。日本盤も出ている。ボーナストラックは"Kash-Mir"。

 

BURZUM
"SOL AUSTAN, MANI VESTAN"

ノルウェー
93年デビュー
11作目
http://www.burzum.org/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=burzum+sol+austan+mani+vestan
 太陽の東と月の西。タイトルの日本語訳そのままで、日本盤が出る。といっても、輸入盤に無理やりオビと、どこでそんな安い紙買ってくるのという安っぽい紙のレイナーつきのものだと思うが。
 ジャケットが結構美しいので、ついに人間の音楽が登場するのか、と思ったが、なんだこれは、まるっきり環境音楽、宗教音楽ではないか。
 宣伝文句なのでコピー+ペーストも問題ない。
 
ブラック・メタル的要素はほぼないものの、寂静感に溢れたアンビエント曲は無限の空虚感を繰り広げる。BURZUMにとってこの空虚感からくる無常性と嫌世性こそが根本要素。形が異なってもBURZUM、そしてVargの深層であることに変わりはない。
 まあ、変わりはなくても、わしには関係ない音楽である。ちゃんと聴いたから一応紹介したまで。

 

CALADAN BROOD
"ECHOES OF BATTLE"

アメリカ
デビューアルバム
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=caladan+brood
 2人組ブラックメタルプロジェクト。独りブラックメタルと変わらん。
 APPALACHIAN WINTERの強烈なアルバムを聞いた後なので、この程度のヴァイキングメタルだと、はい、そうですか、これからも精進してがんばってください、程度のことしか言えない。

 

CATHEDRAL
"THE LAST SPIRE"

イギリス
91年始動
11作目・ラストアルバム
http://www.cathedralcoven.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=cathedral
 解散した。
 この、最後のアルバムは悪くない。しかし大傑作というわけでもなく、いつものCATHEDRALサウンドである。安心のブランドという言葉に凭(もた)れても全然構わない音ではある。
 ドゥームメタルと呼ばれるジャンルの先頭に立ち、たいていのメタルリスナーが聞きやすい音を作り続けたことは偉業である。ドゥーム系ストーナー系のバンド95%はこのバンドの恩恵に与っていたと思う。
 ただし、結局1992年の歴史的名曲"Soul Sacrifice"(シングルのほうです)を彷彿とさせることのないまま、終わってしまったとわしは思う。次なるアクションがあるとしたら、どういう音になるのだろうか。少し似ているけど全然違う音、そして弾けまくっている音を期待したい。

 

CHARING CROSS
"SINSPIRATION"

スイス
08年デビュー
2作目
http://www.charing-cross.ch/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=charing+cross+sinspiration
 正統派メタルサウンドだが、何ともぬるい。力強い演奏にどことなくポップなメロディーライン、ピアノバラードもOKの器用さ。KROKUSやGOTTHARDを生んだ国のバンドという説得力はあるが、つまり、曲が大したことない。特に正統派の生命線は曲である、ということをよく学んで、アルバム製作期間が半年だとしたら、後半年かけて、曲を練ってほしい。化ける可能性はある。偉そうなことを言い、申し訳ない。

 

CHILDREN OF BODOM
"HALO OF BLOOD"

フィンランド
97年デビュー
8作目
http://www.cobhc.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=children+of+bodom+halo+of+blood
 名作"HATE CREW DEATHROLL"は2003年、もうあれから10年も経った。こういうことを言うと怒られるが、個人的にあれ以来名作はないと思っている。もちろん駄作があろうはずがなく、しかし、まあまあというアルバムばかり。
 メロディアス、デス、スピード、3つの面で優れているバンドであるが、それぞれ単品で極端な色を持つ人気者がいたりするので、このジャンルのメジャーであるこのバンドはいつもいつも、音のバランス、曲のバランスを造るのに大変な思いをしていると思う。そういう面でいえば今回もまた無難に大仕事をこなした(悪い意味ではない)。何作か前から、アルバムを聞くたびに思うが、こういう音が今大御所なのだ、ということにわしら老人は時の流れを感じる。
 ボーナストラック"Crazy Nights"はLOUDNESSのカバー。C、O、Bとなってたから笑った。

 

CHROME MOLLY
"GUNPOWDER DIPLOMACY"


イギリス
85年デビュー、23年!ぶりの作品
4作目
http://www.chromemolly.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=chrome+molly+gunpowder
 あのCHROME MOLLYである。といってもおそらく誰も知るまい。私は90年、ロンドンで見て、気に入ってたバンドである。当時はLITTLE ANGELSのライバルであり、同じような、ぷりっぷりのハードロックサウンドでがんばっていた。
 腰に手を当てて軽くスキップしたかのように、音は23年の時の流れを軽く飛び越えている。今の時代、まず注目されることなどない、ポップなハードロックである。軽く聞いただけではわからないかもしれないが、これがあの時代のロンドンの、ポップハードロックサウンドだったのだ。何の裏もない、真面目な音である、なんちゅう若々しい音。↑↓これだけたくさん聴いていて、このアルバムが一番懐かしい。こうでなければ再編の意味はない。ドラマー以外は全員オリジナルメンバーである。
 しかしオフィシャルサイトを見ると、さすがにおっさんになっている。ついでにLITTLE ANGELSも再編してほしいなあ。

 

CHTHONIC
"武徳 : BU-TIK"


台湾
99年デビュー
7作目
http://chthonic.tw/2009/us/news.html
you tube
http://www.youtube.com/user/chthonictw
 本当にアジアの死霊メタル、幽霊メタルみたいな初期のブラックメタルサウンドも素晴らしいが、それはエスニック加減が素晴らしいということであり、今と比べたら音楽的にレベルが違う。
 前作に続き、このアルバムも名作。ランダムに切り取った音の切れ端まで完全にメジャー級、それこそCHILDREN OF BODOMクラスの装備でアジアンテイストを突いてくれるのだから、これを名作と呼ばずして何と呼ぶ。これなら北欧のメタル好きも気絶する。ちゃんと北欧まで届いているのか、心配になる。
 ギターリフのガッチリ感、ソロの冴えは前作以上であり、実践の熱以上に研究の努力が大きくうかがえる。知らないメタラーが一瞬でも聞けば目の色を変えること確実。こういう路線にありがちな、重量感が足りないという点でも、このアルバムはまったく問題なし。私の部屋のへぼすぎるオーディオでもこの重量感、大迫力が堪能できた。
 母国語、そのまんま漢字で歌詞を表示してくれるサイトがあり、勇ましい言葉の連発に少し感激してしまった。それに最新オフィシャルPV、ちょっとこんなん見たことないぞというやつで、ぜひぜひYOU TUBEで見てほしい。
 キーボード担当は顔を隠しすぎであり、オフィシャルサイトではキョンシーみたいになってるのもある。

 

CHURCH OF MISERY
"THY KINGDOM SCUM"


日本
01年デビュー
5作目
http://www.churchofmisery.net/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=church+of+misery+thy+kingdom+scum
 We hate the word "Stoner". Death to false Stoners. Let there be Doom !! というのがポリシーのバンド。初期BLACK SABBATHフリーク、ワールドワイド・ドゥームメタルの最新作。CATHEDRALのラストアルバムの3倍は凄い。何枚かアルバムすっ飛ばして聞いたが、世界はより深く、そして音はより聞きやすくなっている。
 ファンの人を差し置いて軽々しいことは言えないが(いつも言うてるくせに)、長い曲がしんどいどころか、7分8分、10分15分続けと思ってしまうところ、私が最近たまたまこういうのを聞きたいという気分なんだかどうだか、ドゥームメタル、ストーナーメタルの本当の醍醐味がこの、活発で活きのいい酩酊感覚である。
 酩酊感だけ際立ったアルバムも他に数々ある。しかしそんなものは、メタルとして全然面白くない。このアルバムはメタルとしてしっかり活きがいいのだ。軽々しくメタルなどと呼ぶなよコラ、と言われそうだが、ブラック・サバスが酔っ払ってダンプカーを運転しているような音というのが、どうしようもない正直な感想である。

 

CIRCLE OF SILENCE
"THE RISE OF RESISTANCE"


ドイツ
06年デビュー
4作目
http://www.circle-of-silence.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=circle+of+silence+the+rise+of+resistance
 SILENCEなんていうバンド名だからそういうバンドかなと思ったら、全然違う。パワーメタル突貫野郎。いわゆるメロディアスパワーメタルではない。つまり素晴らしい音ということである。
 皆さん笑顔で大絶賛のメロディアスパワーメタルサウンドで私がよく感じるのが、メタルのくせにそんな小ぎれいでどうすんねん、ということである。メタルにデリカシーなど存在したらあかんと基本的に思うのだが、そういうメロディアススタイルに名曲がなければ、一気に駄作に近いものになってしまう。デリカシーのなさ過ぎる、こういうリアルなパワーメタルサウンドだと、名曲などなんぼのもんじゃ。である。
 それなりに大仕掛けで、マイナーな音ではないが、女性ファンはおそらくほとんどいないだろう。ジャーマンはそれでいいのだ。

 

CIRCLE II CIRCLE
"SEASONS WILL FALL"


アメリカ
03年始動
6作目
http://www.circle2circle.net/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=circle+ii+circle+seasons+will+fall
 SAVATAGEを脱退したザッカリー(今はザック)・スティーヴンスのバンド。ついこないだデビューしたような気がしてたら、もう6作目ですか。
 このバンドもずっと安心のブランドである。転げ回るような名曲こそないが、激しさの割にはじっくり聴ける曲が多く、リスナーの耳を賢くしてくれるバンドのひとつである。音も正統派であるが、曲構成、完成度もまた正統派。センセイ・サウンドである。だから誰にでもできるわけではない。
 ズボーン、ズボーンと腹に抜ける重低音が素晴らしい。パソコンにじかに繋いでいる安物コンポ+安物ヘッドホンでもこれだけの重低音が味わえるのだから、一般人がお持ちの普通オーディオコンポ+高級ヘッドホンで聴けばどれほど素晴らしい音効果が体験できるだろうか。く〜〜〜っ、と唸りたくなるくらい渋くてかっこいい重低音サウンドである。大御所バンドもよく忘れてしまう、これもメタルの基本である。

 

CLAMFIGHT
"I VERSUS THE GLACIER"


アメリカ
2010年デビュー
2作目
http://www.clamfight.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=clamfight
 なんだこれは。というジャケットである。強烈なくされメタルかと思えば、そうではなく、なかなかのお手前であるストーナー、スラッジメタルだった。ウネリ度酩酊度ドロドロ度世捨て度その他、ストーナー度は及第点だと思うが、それらにも増して単純なメタル度が至って高く、若手がこんな音を出しててこのジャンルはどうなるのかという、期待に近い心配というか、心配みたいな期待というか、とりあえず音世界はあんまり常識が通用する世界ではないので、紹介する言葉も少々常識を逸してくる。CLAMというとハマグリという意味で、バンドのホームページでは本当にハマグリが剣を持っている。なんだこれは。

 

CLUTCH
"EARTH ROCKER"


アメリカ
93年デビュー
10作目
http://www.clutchjapan.com/index.htm
(わざわざ日本語で制作されているオフィシャル。日本のサイトではなく日本語のサイト。
英語オフィシャルサイトはなぜかわしのパソコンではエラーが出る)
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=clutch+earth+rocker
 久々の傑作! わしらメタルファンからすればつまらんアルバムも出していたが、2004年の6枚目、BLAST TYRANT以来の名作じゃないだろうか。
 ボーカルが勢い余って、笑いながら歌ってけつかるんです。メタルじゃ絶対許されない絵であるが、このバンドは許される。決してコミカルな世界ではなく、あくまでマジなロックサウンドだが、こういう音だってあるのだ。こうなればまさにハードロック天国である。
 〜〜天国、という言い回しがもうアホみたいに古臭く、若いリスナーにニュアンスが伝わるとは到底思えない。しかし言葉ではそう表現するしかない。要は聞いていて幸せな気分になってくる音楽のことである。今現在給料週払いの週契約制で仕事をしていて、今の時代、本当に貧乏が理由で死にかけた(去年の秋ごろだったかいな)どうしようもないわしが言うのだから、よほど不幸な人間もこれを聞いて幸せになるんじゃないだろうか。
 せめて、こうして文章書いて金になる仕事はないだろうか。
 ない。
 でも俺は幸せだ。書くことを義務としているから、こういう素晴らしい音楽に出会える。あれ、聴いてるから書いてるのか。どっちだろう。どっちでもいいわい。
 レビューになっておらず申し訳ない。正しいレビューはAMAZONでもご覧になってください。とにかくこれは名作!

 

CODE OF SILENCE
"DARK SKIES OVER BABYLON"

イギリス
デビューアルバム
http://www.codeofsilence.co.uk/
you tube
http://www.youtube.com/user/codeofsilenceuk
 こんな名前のプログレが多いので、そういうバンドかなと思ってたら、ジャケットが一味違いまんがな。
 EDEN'S CURSEのメンバーによるプロデュース、正統派メロディアスパワーメタル有望期待の新人!だそうだ。
 メロディアスパワーの新人と言われたら個人的な感覚では3割はハズレで、6割はフツーである。ある。だから気乗りせず聞いたが、このバンドはまあまあ素晴らしい。びっくりするような個性はないが、メロディーラインが北欧スピードパワーメタルの典型ではなく、少々垢抜けない感じながら、80年代ロック「ウォール・オブ・サウンド」(ジャンル関係なしにいいものはいい、あかんもんはあかんとする概念)を思い起こさせる、親しみあるメロディーラインを多用している。2013年の音であっても、2001年の音であっても全然構わないような音。これで今の若いリスナーをびびらせるインパクトがあればこのバンドも話題になったことだろうが、インパクトよりもまず曲をじっくり練らなければだめである。このバンドは正しいバンドだと思う。解散さえしなければいつかメジャーになれるでしょう。

 

COLD INSIGHT
"FURTHER NOWHERE"

フランス
デビューアルバム
http://www.myspace.com/coldinsight
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=cold+insight+further
 フィンランド産メランコリックメタルスタイルの、ボーカルなし、みたいなアルバム。私はフィンランド産のああいう音が顔に似合わずめちゃくちゃ好きなので、このバンドも◎である。インストバンドは特にドゥーム系に多いようだが、このバンドはまったく違う。涙を流しつつの絶唱がいつ入ってきてもおかしくないような音である。ポップな音ではないが、聞きやすいという意味ではポピュラーな音である。
 ジャンル分けが大好きなのが日本人で、ジャンルネームを作ることが大好きなのが欧米人。と私は勝手に思っている。
 それで、外国の百科事典メタルサイト、いつもややこしいことこの上ない、バンドのジャンル。このバンドはAtomospheric Melodic Doom / Deathとあった。言えばいいというものではない。ブラストビートどころか走る曲すらなく、ボーカルがまったくないのにデスとはこれ如何に。Merodicが一番パーセンテージが高く、アトモス何ちゃらは環境音楽的ということだろうが、それは10%くらい。ドゥームとかデスは嘘である。メロディックというとアメリカ産の爆音メタルを思い浮かべてしまうが、メロディアスという言葉に感じるニュアンスは日本人だけのものだろうか。これはメロディアス・メランコリック・ミドルペース・ボーカルレス・キーボード・ワンダフルサウンドである。まったく、言えばいいというものではない。
 そしてよくよく調べたら、これは2011年のアルバムだった。ここまで書いたので、消さずに紹介しておく。
 何が凄いと言って、これだけの音を、たった独りで作っているところである。Sebastian Pierreというミュージシャンである。

 

COLISEUM
"SISTER FAITH"


アメリカ
04年デビュー
4作目
http://www.coliseumsoundsystem.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=coliseum+sister+faith
 メタルと呼ばれるバンドではないが、4作目にして初めて聞いた。パンクでオルタナティヴなバンドだそうだ。
 いや、それはわかるが、あんまり海外のサイトにも書いてなかったのだが、これはKILLING JOKEである! と私は言いたい。KILLING JOKEを思わせるということは、たとえそれが亜流であっても個人的には傑作、素晴らしいバンドになるが、このバンドは単なる亜流ではない。サンドバッグを打ちのめしているようなこの音感覚はメタルファンでも大歓迎であろう。巷のガキ・パンクとはレベルも次元も違う。私はとにかくKILLING JOKEを思わせる音ということでむちゃくちゃ気に入った。"Black Magic Punk"なんて曲があるが、こんな曲名考えるだけでKILLING JOKEみたいである。

 

COMEDY OF ERRORS
"FANFARE & FANTASY"


イギリス
11年デビュー
2作目
http://comedyoferrors.org/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fanfare+%26+fantasy+comedy+of+errors
 まずこのジャンルには強くない人間の言うことですから、すんません。
 ネオプログレッシブ、というジャンルだそうだ。80年代に活動をはじめ、ファーストアルバムが2011年。苦労人なのか、別に正業を持っている人たちなのか、それはわからない。ネオプログレッシブファンしか聞かないアルバムというのがあるが、私はファンではないし、IQも実際足りないので(、、、就職試験でそういうのをやられるところがあって、今でも軒並み駄目ですから)、そういうアルバムはこのページでもあんまり紹介してない。
 このバンドは私個人の印象だが、GENESISの"DUKE"である。ジャンルの話以前に、素晴らしい洋楽として耳に飛び込んでくる。装備は確かにネオ・プログレッシヴだろう。しかしこの音。話題になっていないのが不思議なくらい、ユニバーサルな音である。ボーカルはこのジャンルでいつも聞くようなタイプだが、ギターのメロディアス度は例えばAORハードなどというジャンルをはるかに超え去っているし、キーボードはまるで"EMERSON, LAKE & POWELL"のときのキース・エマーソンみたいなわかりやすさ。コーラスはとことんファンタジーである。
 これは名盤でしょう。
 僭越ながら、このジャンルのミュージシャンの方たちに私は言いたい。もっと派手にやってください。もっとCDが売れます。メタルファンがもっと賢くなって、幸せになります。


COVERED CALL
"IMPACT"

スウェーデン
09年デビュー
2作目
http://www.coveredcall.se/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=covered+call+impact
 ゴラン・エドマン(スウェーデン語ではヨラン・エドマン)、イングベイまるむし商店の名作"ECLIPSE"のボーカリストであり、古くは80年代、MADISONというバンドのボーカリストだった。数え切れないほどのキャリアを誇っている人であるが、今はこういう音楽をやってらっしゃる。
 頭髪も立派になられて、学校の先生みたいな顔になっているが、歌唱力の素晴らしさは保証付き。いわゆるAORハードなのだろうが、だったらえらくパワフルなAORサウンドである。音のパーツが80年代90年代ずっと通して生き続けている北欧ハードロックスタイルなので、路線、ジャンル関係なしに80年代メタルファンなら抵抗なくゆったり聞ける音である。

 

CRASHDIET
"THE SAVAGE PLAYGROUND"


スウェーデン
2005年デビュー
4作目
http://www.crashdiet.org/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=crashdiet+the+savage+playground
 このバンドは非常に気に入っている。80年代パーティーメタルを下地に、曲がとにかく素晴らしい。最初のボーカリストが死んだり、次のボーカリストがアルバム1枚で脱退したり、早速と言った具合に不運に見舞われまくったバンドだが、アルバムは4枚すべて名曲集の名作レベルだからメタルの神はいるもんだと思う。そう言うと、何抜かす、これが俺らの実力だと言い張るかのような、勢いと心意気がとにかく光っている。CRASHDIETはBLACK'N BLUEに並んだ。誰が何と言おうとわしはそう思うぞ。この音にもう国境はない。
 重量感もたいしてない。スピードチューンの速度も知れている。バカテクを誇っているわけでもない。しかしすべてのメタルリスナーがこれを認めるだろう。名曲集が何にも増して強いのだ。

 

CREST OF DARKNESS
"IN THE PRESENCE OF DEATH"


ノルウェー
97年デビュー
6作目
http://www.crestofdarkness.com/
you tube
https://www.youtube.com/user/CRESTOFDARKNESSOFFIC?feature=watch
 ゾンビさん登場のジャケットだが、これはメンバーではない。ゲスト出演である。
 ノルウェーではメジャーのステイタスを築いているブラックメタル老舗の6作目。死霊の呪い、妖気の発散、そういうありきたりなことよりも、このバンドは鋼鉄の塊をどかんどかん飛ばしてくるバンドである。つまりスラッシュメタルファンも狂喜のサウンドを身上としているバンドだが、この新作もまあ、どえらくやかましく、そしてがっちり、かっちりした素晴らしい音である。最初から抜きん出た音を出していたバンドだったが、ボーカルの進歩が目覚しい。かつては死霊の叫びの実践から、今はCRADLE OF FILTH級の存在感である。歌にドスがある。
 去年、一昨年くらいからか、ブラックメタルバンドもしっかり淘汰されてきて、とんでもないアホ作品、ハズレを引くことが少なくなったように思う。こういう音にもベテラン、新人、そういうのがはっきりわかる時代になった。
 90年代のインテリジェンスメタルバンドCONCEPTION、といったら日本でも結構評判の高かったバンドだった。このCREST OF DARKNESSの中心人物はあのCONCEPTIONのベーシストである(ボーカルも担当)。昔の写真と今の写真を比べて見るのも一興である。

 

CRIMSON REIGN
"THE CALLING"

アメリカ
デビューアルバム
http://crimsonreign.net/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=crimson+reign&oq=crimson+reign
 TITUS MEDINAなる人物による、珍しい、パワーメタルの独りプロジェクトである。
 北欧ブラックメタルに影響を受け、独りブラックメタルを俺もやってみようという、アホがいた。今は岡山あたりで学習塾の使いっ走りをやってる男である(辞めてなければ)。そいつが言ってたが、ドラムスとベースの打ち込みは楽ちんとのこと。そりゃそうだろう、延々同じパターンが続くんだから。ギターとボーカルに苦労したと言っていた。完成したものを聞かせてもらったが、なんと言うのか、BATHORYのファーストアルバムを捻じ曲げたような音だった。ただし2曲しか作っていないというので、私は最低8曲くらいは作れよと言った。いずれ完成したら北欧のレーベルへ送ると豪語していた。ドンキホーテで女用のカツラを買い、白塗りで、自分の部屋で写真も撮ったそうである。その後は、知らない。
 このアルバム↑とは全然関係ない話をして申し訳ない。つまり何が言いたいのかというと、ブラックメタルではない正統派パワーメタルとなると、ベースもドラムスも大変だろうということ。聞く限りにおいては、シーケンサーというやつか、そういうものは使っていない模様である。
 傑作と呼ぶにはあともう一歩。ここがああなったらもっと聞きやすい、とかそういうことよりも、この音なら、なんでバンド組まないんだろう。

 

CRYING STEEL
"TIME STANDS STILL"

イタリア
87年デビュー、03年再結成
3作目
http://www.cryingsteel.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=crying+steel
 アホみたいなバンド名であると感じたあなたは正しく、大体このジャケットがいけない。こないだ紹介したALPHA TIGERもびっくりのドアホメタルである。
 リフに一球入魂、サビに魂の叫び。
 そしてすべる。
 素晴らしい。
 再結成第一弾!(といっても87年に誰も知らないアルバムを1枚出しているだけ、とか言うのは無粋である)、06年の前作のタイトルが"THE STEEL IS BACK !"といい、おっさんが厳しい顔して横に並んでいるという、たいそう風流なジャケットであった。だからかえすがえすもこのジャケットが残念。内容は、もうあんた、保証つき、だっさださでピカピカの音です。さすがに年季か、かっこいい曲はかなりかっこいい。ほんと。

 

CRYSTALLION
"KILLER"


ドイツ
2006年デビュー
4作目
http://www.crystallion.net/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=crystallion+killer
 弾けた。ジャケットからしてこれまでと全然違う。
 日本人レビュワーお得意、「クサクサクサクサ」いうやつ、前作まではそういうバンドだった。衣こそ変わっても造るメロディーラインの素晴らしさは同じ。オープニングなど、CRASHDIETにも似たメジャー性たっぷりの切れを感じ取ることができる。カジュアルな感じのメロディアスハードロックである。曲がとにかく素晴らしい。
 その、クサクサクサクサ言われる存在だった頃の音にしても、他より1つも2つも頭の出ているサウンドだったが、結局、あるジャンルを極めたバンドは他ジャンルでも才能炸裂という好例である。
 しかし今のとこ、自主制作盤というのがあんまりだ。今ならこの音はアメリカでも絶対受ける。まだAMAZONなどでは出回ってないみたいだが、いずれ、おそらく日本盤も出ると思う。

 

CSEJHTE
"REMINISCENCE"

カナダ
09年年デビュー
2作目
https://myspace.com/csejthe1560
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=Csejthe
 バソリー伯爵夫人が捕らえられ拷問された城の名前。だそうだ。バンド名。どう読んでも、読めん。
 寒々しいブラックメタルであるが、プロダクションは結構しっかりしている。ちょろちょろと出てくるコーラス、キーボードなどもオーケストラ風であり、なかなか出来るバンドと見た。北欧はじめ世界中のブラックメタルをよく聴いて研究しているアルバムである。怖そうではあるがしっかりと観賞用であり、金のかかったホラー映画を観ているような感覚かもしれない。読めないバンド名をどうにかせよなどと言わない。このまま世界中で有名な存在になってほしい。

 

CULT OF LUNA
"VERTIKAL"

スウェーデン
00年デビュー
7作目
http://cultofluna.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=cult+of+luna+-+vertikal
 2000年のファーストアルバムは覚えているが、7作目、ベテランである。外国のサイトで調べてたらatomospheric sludgeというジャンルだそうだ。何のこっちゃか、よくわからない。ぼわ〜っとしたスラッジ、ストーナーメタル系ということだろうか。確かにこのバンドの音はぼわ〜とした音であり、大元はメタルというジャンルではあっても、疾走感とバイオレンスで勝負の典型メタルとは対極の音である。
 環境音楽ならここで紹介しないが、例えばメジャーのプログレメタルよりはずっとメタルらしい音を出しており、実験要素をひけらかすブラックメタル一派よりはわかりやすい音楽性である。ただし、18分の曲なんてのも普通に収録されている。


メタルではありませんのページ

 

BUDDHA SENTENZA
"SOUTH WESTERN LOWER VALLEY ROCK"


ドイツ
09年デビュー
2作目
http://www.buddhasentenza.de/#news
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=buddha+sentenza
 こんな奴らがいるからストーナーやらサイケデリックは要注意なのだ。
 全部で14曲入り、楽曲の長さはどれも平均的ということで、ここらへんかなり珍しい。
 ただシンプルに、音楽性の高さは相当なものである。メタル的要素もあるが、これは洋楽的に大傑作。秋の夜長でもない限りなかなかじっくり聴く気がしないタイプの音であるが、まさに耳で見る絵画、耳で読む大河小説である。
 これはストーナーではない? いや、だったら何でも構わない。VANILLA FUDGEやIRON BUTTERFLY、はてはPINK FLOYD、それも全部60年代風で、しかし聞きやすいのはどういうわけだ。わしはあんまりアートがよくわからないアホであるが、アホが堪能できるのだからこのバンドはすごい。SOUTH WESTERN LOWER VALLEY ROCK、さて、さっぱり意味がわからないが、西方浄土という言葉を思いついた。西方浄土とはすなわち極楽浄土なり。これは極楽浄土ロックである。

 

CTA (CALIFORNIA TRANSIT AUTHORITY)
"SACRED GROUND"


アメリカ
2007年始動
2作目
http://www.ctatheband.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?nfpr=1&search_query=california+transit+authority
 シカゴ、というアメリカ人なら誰でも知っているバンドがある。1969年、ファーストアルバムのバンド名はCHICAGO TRANSIT AUSHORITYだった。
 これはCALIFORNIA TRANSIT AUTHORITY、シカゴ設立メンバーの1人であるドラマーのダニー・セラフィン中心に、2007年に始動したバンドである。ビル・チャンプリンの息子ウィル・チャンプリンも入れて総勢7人編成、ブラスロック狂い咲きサウンドである。
 私はシカゴデビューアルバムをリアルタイムで聞いたほど老齢ではないが、今でもホーンセクション入りのロックには目がない。耳がない。昔聴いたシカゴの音は、学校の音楽鑑賞室という部屋で誰かに聴かせてもらった。完全防音の部屋で、椅子も机も揺れるくらいの音で聴いたシカゴの音は今でも忘れられない。
 誇張ではなく屋根が飛ぶくらいの音で聞いて、一番凄いのは、メタルではない。メタルは爆音を、爆音でなくても楽しめるよう造られた音楽である。その点、多数の楽器が参加している、例えばシカゴのブラスロックなどはそれはもう、迫力なんてものではない。クラシックの生演奏の迫力はメタルなんてもんじゃない、という言葉を聞くが、それと同じことである。
 多くの人が集まって演奏するビッグバンド・サウンド。そういう世界を、聞きやすくわかりやすく演奏しているのがこのアルバムである。再現の妙に感心するファンもいる。むしろそちらのファン向けに作られたという意図が大きい。しかしこの活きのいい、懐かしさ以上にとことんパワフルな音はどうだろう。こういう空気の感動は私は10年ぶり、20年ぶりという気がした。




 




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