2013年 9月までの新作紹介〜その5 RAGING FURY新作+Fの前編

すんません、ブックマークつけるの大変なので、ずりずりと下にバーを下げてご覧ください

紹介バンド: RAGING FURY
FROZEN BY FIRE,
 FIRE DRAGON, THE FECKERS, F.K.U., FACEBREAKER, FADING BLISS,
FAIR WARNING,
 FAITHXTRACTOR, FALSOS POSITIVOS, FAMOUS UNDERGROUND, FATALITY,
FATES PROPHECY,
 FEARED, FEED HER TO THE SHARKS, FEJD, FEN, FENRISULF, FERRETT,
FESTERGUTS,
 FIGHT OR FLIGHT, FILTER, FIND ME, FINDING IRIS, FINNTROLL, FIR BORG,
FIREWIND,
 FIT FOR A KING, FJOERGYN, FM, FRACTURED SPINE, FRANKENBOK,
FREDAG DEN 13:e, FREE FALL, FROM THE VASTELAND, FRONTBACK, FURION
FERGIE FREDERIKSEN,
 FIDDLER'S GREEN, FLASH featuring Ray Bennet & Colin Carter,
FORRAJE,
 FORWARD, FRANCO, FREED ROADS

RAGING FURY
"BLACK BELT"

大阪
86年デビュー
フルアルバム2作目
http://www.k5.dion.ne.jp/~rfury/
レーベルの紹介ページ
http://www.spiritual-beast.com/ragingfury/index.html
you tube
http://www.youtube.com/watch?v=VXFlxPfhON8
 たいがい前から新作制作にかかっていると聞いていた。ついに、とうとうリリースである。
 バンド結成30年、21年ぶりのセカンドアルバム、そういうことであるが、アルバムをコンスタントにリリースし、傑作駄作を繰り返すバンドもいれば、ライブ活動に重点を置き、なかなかアルバムを出さないバンドもいる。このバンドは典型的な後者である。なかなかアルバムを出さなかったのは、決してブランクがあったわけではない。ファンにとってはこれほど待望という言葉が当てはまるアルバムもない。
 これは正直、日本のパワーメタル、スラッシュメタル界に残る名作である。ここまでのものが聞けるとは思ってなかった。
 まず、素晴らしい完成度である。爆音でヘッドバンギング、ファンの押し合いへし合いという世界を完全に超えている。オープニングナンバーはTANK、いやそれどころかTESTAMENTの名作を彷彿とさせる仕掛けの大きさで、長い間このバンドを聞いている私もひっくり返った。
 また、これほどギターがトリッキーな技を誇っているとは最近あんまりライブに行かなくなった私には衝撃的で、special thanks欄のMichael Schenker, Gary Mooreの名前は本当にダテではない。
 怒濤のサウンドを誇るバンドであることはライブハウスに通うファンなら誰でも知っている。この新作も確かに怒濤も怒濤、休憩一切なしのようなアルバムであることは間違いないが、怒濤に加えて、技とメロディアスが突出している。
 これはまさに1980年代初頭TANK、RAVENの2013年版サウンドという解釈で構わないのだ。
 なんせ結成30年。ここまでのグレードを誇るアルバムである。若いリスナーにこそ聞いてほしいという言葉があちこちで飛び交っていると思う。
 確かにその通りである。しかし天の邪鬼の私はあんまりそうは思わない。実際ワールドワイドサウンドに完成しているのだから、若いメタラーは放っておいても勝手に飛びつくに決まっている。
 いきなり話のレベルが下がって恐縮だが、しっかり社会に参加し生計を立てる仕事を持つおっさんたちのメタルにかける信念が、こういう形で結実しているのだ。RAGING FURYはスーパーおっさん集団と言うより、本当のメタルを体験した世代のリーダーである。
 メタルを聞いていた時期、メタルにはまっていた時期を懐かしく思う、または完全に忘れてしまっている大人、おっさんおばさんに是非あのころの感覚を取り戻してほしい。これはその感覚を取り戻させてくれるアルバムである。これは決してリバイバルサウンドではない。
 持つ人間たち、社会の表側では40代50代が若い人間と同じ表情をしてはしゃいでいるのが今という時代。奴らと同等の気力を持つためにも、繰り返すが元メタラーのおっさんおばさんにこそこのアルバムをおすすめしたい。
 BLACK BELTは「黒帯」。ラストナンバーのタイトル曲でわかった。ジャケットの空手マンはそういう意味か。しかしこの曲のオープニングが知る人ぞ知るというやつであり、死ぬほどクールである。

 CDは2枚組で、2枚目の方には80年代、世に初めて出た音源から近年のデモまで、リミックス仕様で15曲が収録されている。ファンはシングル盤やカセットテープで持っていたものばかりで、これは嬉しいプレゼントだ。わしも20代の頃を思い出しますよ。
 思い出してるだけじゃいけない。
 このバンドがついにここまでの名作を作り上げた。私は屁の足しにもならぬ後方支援として、80年代メタルサイトをよりグレードアップさせることを心に誓うのでありました。

 

FROZEN BY FIRE
"THE QUICKENING"


アメリカ
09年デビュー
2作目
http://www.frozenbyfire.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=frozen+by+fire+the+quickening
 これは個人的には嬉しい音。若いリスナーにはシビレのスカタンみたいな音であろう。
 80年代マイナーアメリカ産メタルそのまま、アメリカンメタルではなくてアメリカ産メタル。あのCIRITH UNGOLが80年代風にスラッシュメタル化したような音、あるいはあのOBSESSIONが階段の上から落ちてきたような音だが、要するにどうしようもない音である。歌から演奏から、ここまでに今風を捨て去っている音があろうか。ドラムスのやかましさは近所迷惑この上ない。
 メンバーはこの音に似合わず、普通の若もんメタラーであるが、この見かけでこの音というのが唯一意外である。
 しかし今のこの時代にここまでダサい音。清々しさすら感じられる。清々しくはあっても音はめちゃくちゃ暑苦しい。何が素晴らしいといって、今のこの時代に、何も狙っていないところである。強いて言えば80年代マイナーメタルの復活とか、そういうことを主張したいのであろうが、今の時代そういう1円の金にもならないことを本気でやっているから、これはもう、私みたいなメタル界の時給300円清掃労働者みたいな人間がしっかりと拾い上げてあげなければいけないバンドである。こんなバンドが存在しているだけで嬉しい。絶対に消えないでくれ。

 

FIRE DRAGON
"TIERRA QUEMADA"


スペイン
デビューアルバム
http://firedragonheavyrock.wix.com/fire-dragon-web
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fire+dragon+tierra+quemada
 さてこいつらは↑のFROZEN BY FIREと同じジャンルにありそうな音でありながら、出で立ちがまるで違う。言うなればこっちのほうが本物である。スペイン語がわからないまでも、海外の紹介ページではBARON ROJOやらOBUSやら、香ばしいヒーローたちの名前が出てくるが、とりあえずこれ、本当に今の、2013年の音なのか?と疑わざるを得ない。音路線から音質から、すべてが80年代ださださマイナーメタル、それもメタル輸入盤専門店で注文して4か月待ったぞレベルの世界である。こんな音がデジタル化されているとは、CDを作る機械もパソコンも泣いているであろう。
 オープニングナンバーが笑うほどへぼいのだが、2曲目以降は暑い、暑苦しい男祭りメタルの連続である。80年代に出ていたとしてもスペイン以外の国ではダサいだのマイナーすぎるだの、酷評を叩きつけられていたに違いない音である。若いのになぜこれを今の時代に、という部分に私たちの知りえない、スペインという国の神秘があるのだ。
 オフィシャルサイトもまた感動的で、友人バンドとのライブの告知ポスターが面白い。それに練習スタジオをGOOGLEの航空写真つきで紹介してるサイトなど初めて見た。

 

 

THE FECKERS
"IT'D BE RUDE NOT TO"


オーストラリア/ニュージーランド
プロジェクト第1弾アルバム
http://thefeckers.net/main/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=the+feckers+--+it%27d+be+rude+not+to
 検索しても日本語のページがまったくなかった。つまりネットの世界では日本人は全然このバンドを話題にすることはない。
 だからまあ、不思議で不思議で。現地ではそれなりに有名らしいオーストラリア人ギタリストChris Szkupとニュージーランド人ボーカリストRichard Andersonによるプロジェクトということだが、ゲストというか競演というか、20人以上のミュージシャンが参加していて、私が知っている名前ではトミー・デナンダーしかいない。面白いのは、ゲスト参加というより完全にお友達参加みたいになっているその人たちの国籍が、てんでバラバラ。近所のおっさんみたいな人もいれば、ロシア人もいて、中国人女性バイオリニストもいれば、驚いたことに、イギリスで一時話題になったというフレディー・マーキュリー成り切り御ハゲ中年ボーカル日本人、エトウ・ヨウヘイ氏までいる。(詳しくはオフィシャルサイト参照)
 そういうことをすべてさておき、このアルバム。
 予備知識何もなしで聞いてこそひょっとしたら一番楽しめるのではという、ストレートに名曲が詰まっているアルバムである。ゴキゴキのメタルではないが、最も聞きやすい感じのハードロック。やかましいのもあれば、ポップもあり、渋いのもある。こんなスタンダード曲集は久々に聞いた。
 年齢の若さではなく、人間の若さというのか、一般人が出しては見苦しいものでありながら、アートや音楽の世界では気の若さが年齢の若さを超えるという若さもある。快適な名曲集、これを大きな音でかけながら田舎をドライブしたいという気分になる。素直すぎる音楽なので反応も人間としてストレートなものである。しかし私には自転車しかないので、自転車で田舎まで出かけることにする。

 

F.K.U.
"4 : RISE OF THE MOSH MONGERS"


スウェーデン
99年デビュー
4作目
http://www.moshoholics.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=f.k.u.+rise+of+the+mosh+mongers
 ついに日本盤でリリース。ドアホスラッシュかと訊かれればその通りだと答えなければならないが、内容は一級品である。F.K.U.、Freddie Krugers Underwearだそうだ。underwearというのがわからない。このバンドはDARKANEのボーカリストによるプロジェクト。超絶テクニカルバンドLOCH VOSTOKのメンバーもいる。
 メンバーはステージでも常に、収監されたゾンビのような恐ろしい風体をしているが、音はDARKANEよりもまだ完成度が高いんじゃないかという、申し分のないスラッシュメタルである。一番近い音はOVERKILLかもしれない。音楽以外の部分で本気でアホをやっているくせに、音も本気の本物である。スラッシャーは必聴の傑作。

 

FACEBREAKER
"DEDICATED TO THE FLESH"


スウェーデン
04年デビュー
4作目
http://www.facebreaker.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=facebreaker+dedicated+to+the+flesh
 暴虐デスラッシャー4作目。かなりバイオレントで血肉滴りまくる世界であるが、初期のグジャグジャな音と比べたらかなりレベルアップしており、かなり上から目線の歓迎のような、ウェルカム・トゥ・バイオレンスワールド作品。こういう音だって今風売れ線のカケラもないという部分では、メタルマニアには頼もしい部分も感じさせる音である。テクニックよりも何よりも、迫力が大きく勝っているところが素晴らしい。
 こういう音で、ブラストビートでどかどかと歩き回られたらやかましすぎてかなわない。実際そういうバンドが数多くいるのだが、このバンドはなんせクールに疾走するから良いのだ。

 

FADING BLISS
"FROM ILLUSION TO DESPAIR"

ベルギー
デビューアルバム
http://www.fadingbliss.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fading+bliss+from+illusion+to+despair
 ベルギーの陰鬱ゴシック・ブラック・デス・ダーク・メランコリック・何でもいい、とにかく暗い暗いメタルサウンド。しっかりとメタルサウンドは各曲に織り込まれているので退屈はしない。
 ゴシックデス、こういう音も何年か前まではひとつの印象しかなかったが、今ではこのようにひとつのバンドの音でも、商店のように広い音になっている。こういう音で3人編成とかまずあり得ず、最低でもメンバー5人いるので、どんな色の音であれ工夫もできるし手数も出せる。となるとやっぱり曲である。このバンドは仕掛け、手数は十分なんだから、アルバム中1曲、忘れられないような曲を作ってくれい。

 

FAIR WARNING
"SUNDANCER"


ドイツ
92年デビュー
7作目
http://www.fair-warning.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fair+warning+sundancer
 名作"RAINMAKER"と対を成すアルバム、というのが前宣伝。
 と言われても、特に私などは天邪鬼で、大体RAINMAKERのどこが名作やねんと思ってる人間だから、あんな地味な音だったらおもろないなあと思ってこの新作を聞いてみた。
 良いじゃないか。
 このバンドの美点はおおらかなメロディーライン。それしかない。願わくばファーストみたいに名曲の宝庫であってほしいし、3作目"GO"みたいに天にも突き抜ける大きなスケールの音であれば言うことはない。
 このアルバム、目の覚めるような名曲はなかった。天までは行かず、しかしスカイツリー、いや東京タワーくらいまでは突き抜けているかもしれない。
 残念作品という感覚がないのは、おおらかなメロディーラインが変わらずここにあるからである。やっぱりこれがあるからこのバンドなのだ。
 メタル的にはかなり地味なアルバムである。でも私には、存在していてくれるだけでありがたいというバンドであり、音である。
 神が降りなくてもいい。メタル界を代表するバンドにもう一度返り咲いてほしい、とか、不思議と思わない。メタル界を代表するバンドは数え切れないほどいる。そして最低今月末まで1日1食を余儀なくされている私に、リラックス感覚を与えてくれるバンドなど、他にいない。そういう人間がゆっくりと楽しめるメタルアルバムなど、あるか?
  とか、すぐに自分の生活を出してしまうところが音楽を語る人間として失格であるのはわかっていても、結局、言いたいことはですね、音楽は機械ではない。食べ物でもない。鑑賞するという、特別なものである。思ったとおりに使い勝手が良くなかった、おいしくなかった、だから駄目。と早々に判断を下すものではないのである。このアルバムが集中して酷評されているようで、私は悲しい。

 

FAITHXTRACTOR
"THE GREAT SHADOW INFILTRATOR"

アメリカ
08年デビュー
2作目
https://myspace.com/faithxtractor
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=faithxtractor+the+great+shadow+infiltrator
 まったくデスメタルらしいデスメタル。2人プロジェクトだが、2人は兄弟である。もう少し音質が良ければ、などと言うのは素人の感想であり、最初にそう思った私も素人である。近年、デスメタルではあってもこういう風に疾走してくれる音、バンドが増えて、私のようなメタル老人にもデスメタルが聞きやすくなった。
 ベタな言葉で申し訳ないが、今、デスメタルはやばい系とエンターテイメント系があると思う。このバンド、この音の印象にグロはない。結構楽しめた。VADERが太って汚くなったような音である。

 

FALSOS POSITIVOS
"NUESTRA HORA"

スペイン
11年デビュー
3作目
http://falsospositivos.bandcamp.com/album/nuestra-hora
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=FALSOS+POSITIVOS+Nuestra
 スペイン産ハードコア・スラッシュ。こういう音にどこ産も何もないが、しかしストレートでかっちょええ音を出している。メタル度も満点に近い。海外のサイトを見てもメタルとしてこのバンドが紹介されているものはなく、もったいない。
 例えば一昔前は、ハードコア(パンク)のギターリフは全弦一斉掻き鳴らしが基本だったはずが、何年も前からそんなルール?などなくなり、もはやギターについて言えばスラッシュメタルと何の違いもない。唯一ソロがあるかないかだが、スラッシュバンドのギターソロなど大御所バンド除いては何の意味もない。ということはスラッシュ好きはハードコアと呼ばれる音楽をもっと覗いてみても損はない。スペインの中堅でこの音なんだから、メタラーが知らないままでいるハードコアの猛者は世界中に隠れている。

 

FAMOUS UNDERGROUND
"FAMOUS UNDERGROUND"

カナダ
デビューアルバム
http://www.famousunderground.tv/
you tube
http://www.youtube.com/user/nicktoxik
 90年代初めのほうに3枚のアルバムを出したSLIK TOXICというバンドがいて、そのメインボーカリストが今になって結成した新しいバンド。
 気だるいのか熱いのかわからんような歌が80〜90年代アメリカンメジャーメタルの雰囲気を伝える。趣き、雰囲気モノでこのボーカルはいい味を出している。しかし今このバンドを助けているのはギターであり、ギターのみ今風というか、2013年に通用する野太い音を出している。
 素行の良くないBUCKCHERRYという雰囲気もあり。メンバーは若手と呼ぶには程遠い出で立ちであり、無名のままではもったいない。なんか一発当ててほしい。

 

FATALITY
"PSYCHONAUT"

ブラジル
09年デビュー
2作目
http://fatality.bandcamp.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fatality+psychonaut
 久々に聞いたどぐされくそスラッシュメタル。仮にこのCDを見つけても絶対に普通の人は手を出さないように。墓場でゾンビがビール飲んでいるという強烈にあほらしいファーストアルバムのジャケットが印象的過ぎて誰の頭にも残っていないという、そういうバンドが↑こういうジャケットで来たから、少しは何かに気付いたのかなと思いつつ、さて、確かにしょんべんくさい、はしゃいでいるカラーは薄れたにしても、音質がゴミの一歩手前で、そんなもん、メガデスの新譜もこのCDも店では同じ値段やなんて1000人中1000人納得しないだろう。
 曲構成に凝る、という猪口才なこともはじめたようである。しかし何をやろうが、全体に漂いまくるこの安っぽさをして、バンドのメッセージなどすべて灰と化している。各家々に備え付けの普通のパソコンでこれ以上の音を作ることが十分可能というレベルで、さてはマイクの問題なのだろうか。マイクを一回川かどこかに落としてきて、それをまだずっと使っているような雰囲気である。
 つまり、くされメタルとして傑作ということである。素晴らしい。

 

FATES PROPHECY
"THE CRADLE OF LIFE"

ブラジル
98年デビュー
4作目
https://myspace.com/fatesprophecy
you tube
http://www.youtube.com/user/FatesProphecyTV
 いつの時代に出たのか全然わからない少々垢抜けない正統派ながらも、真っ直ぐさが光るバンド。バンド名はハズレばっかり出しているプログレメタルバンドみたいであるが、中身は至って正統派のヘヴィ・メタル、正統派も正統派、正統派以外の言葉が出てこない。FIREWINDやMYSTIC PROPHECYみたいにもっとどかーんと弾けた音を出せば、今の時代没個性ながらもCDの売り上げ、人気はそこそこ期待できるのに、わざと弾けていないのか、これでも弾けているつもりなのか、とりあえずわし個人的にはこういういっぱいいっぱいの正統派サウンドは好感が持てる。デビュー時からずっとこんな音である。成長しているつもりなのか、あえてこういう音を出しているのか。
 以前は確かちゃんとしたホームページがあった。今はなく、どうして見たらいいのか全然わからん新MYSPACEやフェイスブックなんぞになっており、老人メタラーからすれば今の当然であろうが何であろうが、ちゃんとしたホームページがないのは寂しい。大体、このバンドの歴史も何もわからないではないか。あほ。

 

FEARED
"FUROR INCURNATAS"


スウェーデン
10年デビュー
4作目
http://www.feared.se/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=feared+furor+incarnatus
 同じスウェーデンのバンドで言えばCARNAL FORGEスタイルの、2000年代型突貫スラッシュメタル。かつてのPANTERAを思い出させるような音でもある。アメリカンスタイルを取り入れながらそれが決して鼻につかず、突貫工事屋のようでいてフットワークの軽いテクニック、センスを感じさせる。見た目、モロのスラッシュメタルバンド、スラッシュ受け狙いのマイナーバンドが多くなった今、一見してわからずとも、こういうふざけないバンドの音こそ実際オチャラケ軍団よりは遥かに強い。それは当たり前のことだが、バンドとリスナーの耳との間にさまざまなものが介在しているような今の時代、当たり前のことが目立たなくなってきているような気がする。私はオチョケ軍団も好きであるが、正統派にバカモノたちをどーんと蹴散らしてくれと思うときもある。何というか、このバンドの蹴散らし力は凄い。

 

FEED HER TO THE SHARKS
"SAVAGE SEAS"


オーストラリア
10年デビュー
2作目
https://myspace.com/feedhertothesharks
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=feed+her+to+the+sharks+savage+seas
 人でなしなバンド名が目を引いた。ジャケットも最高にかっこいいと言ったら怒られるか。
 音はデスボーカルとクリーンボーカルが登場する爆音アメリカンメロディックデスのステレオタイプかもしれないが、ものすご〜パワフルな音なので、私のような老人でも単純に耳が喜ぶ音である。
 売れてる爆音メタルの、あのスマートな感じは何なんだろうな。音は激しくても、音に無茶が感じられない。同じような曲が並んでいるから、眠気を感じる。比べてこのバンドの音にはかなり無茶がある。あともう0コンマ2,3、低音を上げたら音が割れてしまうだろう、ぎりぎりのところである。音がぎちぎちに詰まっており、そしてタイトな感じの完成度がないからこそ、異様な迫力がある。これからも恐いメタルバンドでいてほしい。

 

FEJD
"NAGELFAR"

スウェーデン
09年デビュー
3作目
http://www.fejd.se/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fejd+nagelfar
 あのと言ってもマニアックな話かもしれないが、あのNOSTRADAMEUS、スウェーデンの疾走メロディアスメタルバンドのドラムとキーボードとベース、3人が参加している民族音楽フォークロアメタルバンドである。
 この手の音はあっちの国には本職がいっぱいいて、8割はほんとにアコースティック演奏に始まりアコースティック演奏に終わるようなバンド、アルバムばかりである。中でもこのバンドは「動」のある、ひょっとしたら珍しいバンドかもしれない。
 例えばBURZUMの今年のアルバムみたいに、広大で陰鬱なる森だけを見つめて。のような音は、それこそ作文好きな人には魅力ある音かもしれないが、動きのない音は私のようなメタルマンには退屈でしかない。ああいう音楽の日本盤を何枚か持っているが、解説がまた頭に来る。音が陰鬱な森を描いている、それしか描いていないのに、森の話を延々と作文して、読んでるほうは何が面白いのか。自分が当地を訪れた体験を書いている者までいて、大阪から出たのはもう半年前か、私みたいに市内から出られないくらいの貧乏人には、知らない土地の動きのない音楽など退屈以外の何物でもない。
 何の話だ。
 つまり、このアルバムは森の音楽であり、悪魔も妖精も踊っているかもしれないけど、しっかりとリズムがあり、起伏もある。民族音楽スタイルはこういう音であってほしいものである。

 

FEN
"DUSTWALKER"

イギリス
09年デビュー
3作目
https://myspace.com/fenband
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fen+dustwalker
 変わったバンドである。北欧森林スタイルのブラックメタルのようで、ロンドンにこういう音があるというのがへぇーっ、と思うが、聞いておれば、なるほどの音だった。今ではダーク・アンビエントなど呼ばれるその音のルーツはイギリス、ロンドン周辺に80年代生まれたものであり、そこを活かした音にもなっている。11分、12分という長い曲はロンドン周辺に造詣の深い音楽マニアこそ楽しめるだろう。ブラックメタル演奏部分はロンドンではなくても同じイギリス産ということか、あのANAAL NATHRAKHのような混沌感覚もある。全体的にもう少し音質が良ければ...

 

FENRISULF
"ETERNAL INHERITANCE"

日本
デビューアルバム
https://myspace.com/blackfenrisulf
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fenrisluf
 09年に最初のデモ、結成はそれ以前と思う。ホームページがMYSPACEなので何もわからん。
 しかし日本のバンドにはかなり珍しいプリミティブ・ブラックメタルというか、ノルウェーあたりの相当狂っている白塗りブラックメタルであり、日本のバンドじゃなければ私もじっくりこうして聴くことはなかった。
 巷のメタルとは音質も何も異色であることは言うまでもないが、極悪音質というわけでもない。北欧のバンドも全部ひっくるめて、これでも結構聞きやすいプリミティブ・ブラックメタルではないでせうか。日ごろ一体どこに潜み、どういう生活をしている連中なのかと思うが、冗談抜きで、日本でここまでのスタイルを完成させていることには敬意を表する。何に火がつくかわからん今という時代、是非頑張ってほしい。

 

FERRETT
"YEAR OF THE FERRET"

アメリカ
デビューアルバム
http://ferrett.bandcamp.com/music
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=ferrett+year+of+the+ferret
 YEAR OF THE FERRETと言われても、もう少し勇ましい動物はいなかったのかと思うが、音のほうは呑んだくれたPOISONみたいなポップメタルで、ついでにボーカリストの名前はKing of the Night Time Worldという。名前の間に" "で入っているセカンドネーム?ではなく、本当にそういう芸名である。その心意気がしっかりと映えている曲もあるが、メタルバンドとして大事な大事なオープニング2曲がほんまに呑んだくれグダグダ曲であり、こんなもん、何の話題にもならんだろうと思った。かっちょええ曲はかっちょええんやけどねえ。興味ある方はオフィシャルサイトで十分視聴できます。

 

FESTERGUTS
"HERITAGE OF PUTRESCENT"

ロシア
デビューアルバム
http://festerguts.com/
you tube
http://www.youtube.com/user/Festerguts
 化膿した内臓、という香ばしい名前を持つこのバンド、ジャケットでは女性メンバーまで腸を貪り、オフィシャルサイト表紙では2歳くらいの坊やにまで内臓を食わせているという極悪非道のバンドになぜ私がマークなどつけているのかというと、正直内容が素晴らしいからである。
 ボーカルは完全デスメタル、演奏はスラッシュメタル疾走感が活きまくった音で、そこにCRADLE OF FILTHのようなシンフォニック演奏が加わる。ここまでかっちりした音を出しながら、内臓食わんでも、とは聞いた人間誰もが思う。なぜこんな営業をするのかと訊きたいが、そこはここ数年正統派だけではなく、もはや何でもありになったロシアンメタルの奥深さだろうか。話すとアホであるが腕、仕事が確かという職人がたまにいて、このバンドもそういう筋なのだろう。女性ボーカルはソプラノコーラス担当(全曲には出てこない)。

 

FIGHT OR FLIGHT
"LIFE BY DESIGN"


アメリカ
DISTURBEDのギタリストのプロジェクト、デビューアルバム
http://fightorflightofficial.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fight+or+flight+a+life+by+design
 2013年最もアメリカンメタルな音。という位置づけのアルバム。私はDISTURBEDは中でも好きなバンドなので、このバンドにも悪い印象はない。ベースの音が効いているか、ただガシャガシャうるさいだけか、今風の音を聞くときはそこを一番に見て(というか聞いて)しまうが、ドーン、ズーンと響くベースが効いたこの音はメタル以前にハードロックの迫力を心に刻んでいるミュージシャンの作った音である。ギャーと叫ぶ歌がないので、老齢メタラーにはDISTURBEDよりずっと聞きやすいかも知れない。ただギターの躍動感は相当なものである。凝ったリフに、しっかり音をタイミングよく合わせるベース、今風の音にしては非常に耳に心地良いアルバム。

 

FILTER
"THE SUN COMES OUT TONIGHT"


アメリカ
95年デビュー
6作目
http://www.officialfilter.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=filter+the+sun+comes+out+tonight
 インダストリアルメタルではなくインダストリアルロックみたいなバンドと思ってたが、何枚か聞かないうちにえらくかっちょええ音になっとるではないか。アメリカ産爆音メタルよりもよっぽどこっちのほうがインパクトがある。音の跳ねがたいがい凄くて、今風爆音メタルバンドのメタルパワーを軽く上回っていると思う。
 メロデス、と言ったらIN FLAMESがDARK TRANQUILLITYか、などという解釈は死語ならぬ死解釈であり、今言うメロデスとはアメリカ産爆音メタルを言う。などと私が言うまでもなく皆さん知ってらっしゃる。そのメロデスのワンパターンぶりに私など老人は大変うんざりしている。このアルバムみたいな音は80年代からメジャーロックにちょろちょろ存在していた。なのに、この新鮮なインパクトは何だ。メロデスよりもよっぽどしっかりしていて頼もしく、これはもうリスナーの年齢関係なしに、誰もが聞いてしっかりと堪能し楽しめる、普遍ロックの大傑作である。
 今風の音が好きでも今風は飽きた。そういうリスナーは多いだろう。このアルバムはそういう人に絶対おすすめ。広い音です。

 

FIND ME
"WINGS OF LOVE"


スウェーデン
デビューアルバム
http://www.frontiers.it/news/10655/(レーベルの紹介サイト)
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=find+me+wings+of+love
 なんとも女々しい(差別用語ですか、すんません)タイトルで、しかしAORハード、メロディアスでは女々しいのが受ける(、、再びすんません)。流し聞きしてはいサヨナラと思ったら、中にもこういう当たりバンドがいるからAORも侮れない。
 例えばAORメロディアスバンドの解説には必ずと言っていいほどJOURNEYやSTYXやそれクラスのバンドの名前が登場するが、ではそういう神様のバンドのアルバムに本当に近いものを提供してくれているかというと、9割それはない。そういうところがわしのような気力だけマンみたいな老人には気に食わないというか、派手な看板はいらんから中身で勝負せんかい、と。そしてこういう当たりのバンドの場合、他のバンドの名前が出て来ず、純粋にこの音だけが素晴らしく思う。80年代で言えばALIENや、90年代ではCLOCKWISEあたりを思わせる、解説無用の素晴らしさがこのアルバムにもある。仮にもハードロックなら、まったり感、和み感覚など要らない。素晴らしい曲と躍動感があれば他はどういう要素が入っていても、それは名盤である。いや〜〜これは本当に名盤だ。

 

FINDING IRIS
"WE THE MOON"

アメリカ
デビューアルバム
http://findingiris.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=finding+iris+we+the+moon
 i tunesで大人気、だかどうだか知らないが、そういうバンド。多くの場合わしはそういうバンドはスルーしているが、このバンドはなかなか良い。そこそこハードロックで、歌はギャー系ではない。90年代のCOLLECTIVE SOULやTOAD THE WET SPROCKETのような切れのあるリズム感が耳に心地良い。哀愁的というより、わかりやすく詩的な音である。よくある音ではありながら、みんなそれなりに水準が高く、デビューアルバムからして完全にプロフェッショナルの音を出しているという、昔にはなかった新人勢力のパターンも決して馬鹿にできたものではないと、こういう音を聴いている間はそう思ってしまいますね。このバンドも重低音が◎。

 

FINNTROLL
"BLODSVEPT"


フィンランド
99年デビュー
6作目
https://myspace.com/officialfinntroll
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=finntroll+blodsvept

 FINNTROLLとKORPIKLAANIの対決はいい意味で、いまだ決着がつかない。俗な言葉であるが両方とも、神である。FINNTROLLももはや、↑何とも形容しがたい御姿であられ、アホが咲いている中に威風堂々もうかがえるから大したものである。
 音は変わらず、KORPIKLAANIほど華々しい音ではないまでも、全体評価としては私はずっとFINNTROLLのほうが凄いと思っている。この音には海の猛者も山の猛者も勝てない。音だけの話だが、ここまで来たら、ライバルはHELLOWEENあたりではないかと思ったりする。どの曲も耳にしっかりと残り、完成度、安定感はスタンダードメタルを超えている。
 例えばパイレーツ・オブ・カリビアンなんか、映画の描く世界はまったく今風ではなかったのに、あまりに当たったから、またはあまりに高い評価を受けたから、映画全体が今風のスタンダードになってしまった。FINNTROLLはまさにそういうことを、音楽でやっている。
 7曲目"Skogsdotter"
がベストチューンで、メタルどころか音楽すら聞かない人もこの曲には立ち止まる。そういう曲がアルバム中必ず1、2曲あるのでこのバンドは凄い。

 

FIR BOLG
"TOWARDS ANCESTRAL LANDS"

フランス
デビューアルバム
https://myspace.com/firbolgtruepagan
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fir+bolg+Towards
 ASSACRENTISというバンドを率いているDagothなる男の独りブラックメタルプロジェクト。フランス産だが全編英語である。
 しかし最近になってこういう音が増えてきてわしは嬉しい。独りブラックの最高峰は言うまでもなくあのBATHORYであるが、そっち方面に行かずに、完成度、曲全部ひっくるめ、まるでバンドみたいな音を独りで造ってしまうミュージシャンがちょろちょろ出てきたことが嬉しい。このアルバムは一応ブラックメタルだが、肝心の音質をはじめ、迫力も勢いも、まるでバンドサウンドである。ボーカルは禍々しいが、演奏は結構スタンダードで、歌さえなければブラックメタルに聞こえない曲もある。
 これまでの独りブラックメタルは「好きだったら出来てしまう」という部分が多分にあり、それゆえかなりのマニアでないと楽しめないものばかりだったが、つまらない音はどれほどのマイナーメタルであっても、聴く人間の数はあんまり増えたりしないわけだから必ず淘汰される。こういう、バンドサウンドのような独りブラックがこれからはどんどん出てくるかもしれない。
 独りブラックどころか、いずれ独りジューダスとか独りアクセプトとか出てきて、しまいに独りKANSASとか独りKING CRIMSON独りYESとか出てきたりして。

 

FIREWIND
"APOTHEOSIS - live 2012"


ギリシャ
02年デビュー
通算9作目、2作目のライブアルバム
http://www.firewind.gr/
you tube
http://www.youtube.com/user/FireTV
 いい仕事してますね〜、というライブアルバムの良心みたいなライブアルバム。昔の音がどこまでちゃんと出せているのか、仕掛けの凄さはどうなのか、とか、そういうことを観てしまうどこかの大御所正統派メタルゴッドあたりのライブアルバムよりも、こっちのほうが何倍も安心して聴いていられる。いや、安心して聴くというより、音そのもの、曲そのものをじっくり楽しめるのだ。
 ライブをDVDリリース、ブルーレイリリースなんてバンドもいるけど、聞いた話では、映画並み、または映画以上の価格を設定していながら、制作費用はライブ会場1日限りのことなので映画よりも遥かに安く済み、つまり音楽のDVD(、、、今はブルーレイか、私は持ってない)は儲けが大きいらしい。だから無名のバンドもライブアルバムはDVDを出す。
 そんな状況の中、このアルバムのようにCDのみのリリースであり、そして気合いがこもっていてまったく手を抜いていないアルバムというのは、ベストアルバムとは少々違ったベストスタイルをしっかり聴かせるというライブアルバムの初心を持っている素晴らしいバンドだと思う。長い歴史を持つバンドなら、ファンもそりゃ1作くらいは映像で持っていたい(実際このバンドも2008年のライブ盤はDVDでもリリースされている)。しかしメタルはあくまでも映画ではなく音楽。映像の前に音ありき。私はメタルを聴いてる間は目よりも耳をいつも優先させたい。と思う次第である。おわり。

 

FIT FOR A KING
"CREATION / DESTRUCTION"


アメリカ
11年デビュー
2作目
https://myspace.com/fitforakingband
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fit+for+a+king+creation
 これもまた優秀なメタルコアサウンドである。わしらおじいリスナーは扉にメタルコアと書かれていたら自然と尻を向け別のところに行きたがる習性があって当たり前だと思うが、昔風の音であれ今風の音であれ、中に入ってしまえば、別に聞き方は自由である。ライブハウスで言えば、80年代みたいに、暴れてない奴、貴様は何者だと変な目で見られたりすることも今はない。というわけで私は年寄りの冷や水的に、どんな世界のどんな音であれ一応は聞いてみることにしている。
 どの曲も同じとは聞くほうは言いながら、作るほう出すほうもちゃんと考えているわけで、出来るバンドはこうして、決して飽きないような構成を楽しませてくれる。メタルバンドの本筋、そこについては物凄い破壊力である。何を聞いても、「凄い」と思う感覚は大事にしたいものであります。何を聞いても凄いと思わなくなったら、介護施設行きである。
 くだらない言葉を出したついでに言うが、耳だけ、介護が必要な状態になってるような奴が若い奴にも多いと思う。耳の悪い方のことを言っているのではない。人の、友人の助けがないと好きな音楽も聞けない奴、好きな音楽が見つけられない奴のこと。そういう変な傾向をぶっ壊してくれるのは、やっぱりメタルしかない。その道30年で素晴らしいアグレッシブサウンドを叩き出した我らがRAGING FURYと、おそらく親子ほどの年代差があるこの新しいアメリカのバンドFOT FOR A KINGを聞き比べてみるのも面白い。素晴らしいメタルは「根」はみんな同じだと私は思った。

 

FJOERGYN
"MONUMENT ENDE"


ドイツ
05年デビュー
4作目
http://www.fjoergyn.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fjoergyn+monument+ende
 アバンギャルド・ブラックメタルと外国のサイトに紹介されているが、このバンドの音はメタル的にもしっかりと筋金入りで、わけのわからん環境音楽ということはない。演奏中心の(ブラック)メタルサウンドをアバンギャルドと呼んでいる場合が多いが、アバンギャルドのニュアンスが日本人が勝手に考えているものと違うのかもしれない。
 陰鬱な音のふりをしているような見掛けで、実際オープニング1、2曲は陰気だが、徐々にダイナミック+シンフォニックになってくる。奥ゆかしいと言うか、丁寧というか、はじめの最初から、アルバム全体をじっくり通して聴いてくれるリスナーに対してのみ造られているという職人の空気がある。
 愛想はよくないが、結局客は大満足。音楽界でもそんな音は表通りでは完全に絶滅したが、表通りの店が快適で広いかというと全然そうではない。言ってみれば表通りの店などアホが並ぶ、店員2人でスペースいっぱいのケータイショップみたいなものだ。実際の世の中は表通りだけあって裏通りがないような状態だが、音楽の世界、メタルの世界にはこうして、裏通りの店でゆったりと聴けるものがまだまだたくさんある。まあ、決してこれはゆったりと聴くような音楽ではないかもしれないが、約1時間、じっくりと鑑賞できるアルバムであるのは間違いない。繰り返すが、メタル的に筋金の入った音なので、マイナーメタルファンは決して退屈とは思わない。

 

FM
"ROCKVILLE" "ROCKVILLE II"


          

イギリス
86年デビュー
9作目
http://www.fmofficial.com/fmofficial/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fm+rockville
 近年発足したそうな、アーティストの活動資金をチャリティー形式で支援するPLEADGE MUSICというものがあり、そのサイト経由でリリースされたのがこの新作。イギリスでは2週間ほど間を空けて、2作品がリリースされた。
 というか、この、80年代からメロディアスハードを実践している、AORハードの神であるバンドが活動資金に困っていたのか?と勘ぐってしまったと同時に、こういうプロ中のプロフェッショナルなバンドがなぜチャリティーを使って新作を出すのかわからん。
 わからんままにあれこれ調べてたら、このバンドおよび他ジャンルの有名バンドも協力して、中間搾取者なしにもっと新人が活動しやすいように業界を変えていくプロジェクトらしい。
 とりあえず、音のほうはさすがにこのジャンルでは神様の音である。私などは微妙な年齢の方がおっしゃるメロハ〜なんて言葉に、食べ物がなく道に落ちてるパンくずを拾いながら、高級料理店から腹をぽんぽんと叩きながら出てくる客を恨めしく眺めているような気分になるのだが、人間、私みたいになってしまったら終わりだけど、そんな私にでもいい音楽はしっかり音楽の効用を与えてくれる。さすがに老舗の音は違うなあ。と思った次第である。
 "II"のほうは、もともとPledge Music資金調達キャンペーン協力者への特典として配られていたものらしく、内容がいいから売り物にしましょうということで、2作続けてのリリースとなったそうだ。音は"I"も"II"もまったく同じ。音はそこそこ厚い+熱い、歌もギターもパーフェクトに職人、これなら金の払い甲斐もある。このバンドの人たちはどう言うかわからないが、AORとかメロディアスハードと呼ばれる作品(特に新人)の大半が駄作であるということを、このジャンルの頂点であるこの人たちのアルバムがしっかりと証明していると思う。ここまでの曲の素晴らしさと、風格がなければ、売ってはいけない音楽なのだ。造る側としてはすごく難しい音楽だろう。

 

FRACTURED SPINE
"SONGS OF SLUMBER"

フィンランド
デビューアルバム
http://www.fracturedspine.net/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fractured+spine
 フィンランド産、メランコリック・ダーク・デプレッスト・ゴシック・ドゥーム・デスメタルバンド。と、今のバンドには一体いくつのジャンル名をつけなあかんのかと思うが、しかしどれだけ長くても言葉をつなげるだけで本当に音が想像できてしまうから、あほらしいながらも便利である。
 フィンランド産だからというわけではないだろうが、ある瞬間TO/DIE/FORみたいにメランコリックな旋律が感じられるのはやっぱりフィンランド産の意地矜持か、フィンランド人がメタルやったら何も考えないでもこうなってしまうのか。しかし暗い音である。音質が良いから聞くのがしんどいというわけではないが、しかし暗い。私は週に2回程度バイトに出る以外はひたすら引きこもっている。仕事が本当にないからである。金がないのでクーラーも控えている。地獄のように暑い。熱中症とはあんまり、痛いとかないのだななんて思う毎日である。夜中になると温度も若干下がり、こうしてパソコンに向かう元気も出てくるが、シルバー人材センターもいいけど、おっさん人材センターも作らないと、これからますます私のような人間が増えるぞ。
 という、嘆きの気分をさらにパワーアップさせてくれる音です。

 

FRANKENBOK
"CHEERS, BEERS & BEARDS !"


オーストラリア
00年デビュー
5作目
http://www.frankenbok.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=frankenbok+cheers
 こんなバンド初めて知ったが、SLAYERやSLIPKNOTの前座で過去大きな話題を集めたバンドらしい。ジャケットもタイトルもアホなので、アホの音かなと思ったら、やはりアホの音だった。TANKARDにも似た疾走スタイルで、たまにSLIPKNOTみたいにへんちくりんな酔い方もしている。
 メタル技はもう全体的に一流メジャークラスで、おふざけもOK、マジでも凄いという、最強の出で立ちである。スピード感を変な曲展開で殺すことがない音なので、安心して聞ける。ヒネクレてそうな連中だが、これはメジャーなヒネクレサウンドである。スピード感を武器に、何でも来いの構えである。
 世界は本当に広いというか、日本のリスナーはいいバンドを知らなさ過ぎる。その理由は、多額の献金をしない個人にはラジオ番組すら制作することを法的に許さない馬鹿協会が何年も総理大臣みたいに居座っているのと、CDの値段があまりに高すぎるからである。結局損をするのはリスナーで、そしてこのバンドのように、多くのバンドが日本というマーケットを意識しない。今じゃ日本で売れるメタルというのは北欧の限られたジャンルだけである。

 

FREDAG DEN 13:e
"TJUGOHUNDRATRETTON"

スウェーデン
10年デビュー
2作目
http://fredagden13e.blogspot.jp/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=Fredag+Den
 また変なバンド紹介しやがってと思われるかもしれないが、ゴキゴキバキバキのスラッシュハードコアサウンドにモーターヘッド、エース・オブ・スペーズみたいなギョリンギョリンのギターサウンドが聞けると言われたら、心が躍るリスナーもおっさんなら多いに違いない。アマゾンでは近日発売とあったが、なんとLPレコードバージョンだそうだ。意味がわからん。
 しかし確かにレコード盤で聞いてこそかっこいいという音ではある。全然昔懐かしアイテムじゃないのが凄いぞ。THE HAUNTEDやTERROR2000と堂々と喧嘩できる音。何が何でもスラッシュという括りもなく、その割にはしっかり全曲走り倒しているが、余裕ありまくりという感じですな。素晴らしいー!

 

FREE FALL
"POWER & VOLUME"


スウェーデン
デビューアルバム
http://columbia.jp/nuclearblast/bands/freefall/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=free+fall+power+and+volume
 ニュークリア・ブラストももはやメタル界のデパートですな。マイナーバンドのメンバー2人がプロジェクト的に結成したバンドのデビューアルバムだが、このジャケットからもわかるとおり、実際聞いてゲラゲラ笑ってしまうほど70年代ハードロックである。どうせならオフィシャルサイトがフェイスブックなんて今風のあほらしいことはせず、レトロなホームページでも作ってほしかった。
 まるでCACTUSのデビューアルバムのような爆音優先の音に耳を奪われてしまう。パワーでは今のどスラッシュメタルに全然負けていない。そんな、家も震えるような音で全力で70年代サウンドをやってくれるもんだから、若いリスナーにとっては完全に色物だ。
 しかし歴史に残るバンドが最初の名作を出したとき、誰もが色物として接し、そして即その色物を認めた。1発で終わるイベントならあまりにもったいないなあこれ。次は有名バンドのカバーアルバム出して、こけたりしませんように。

 

FROM THE VASTLAND
"KAMALIKAN"


イラン
11年デビュー
2作目
http://www.fromthevastland.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=from+the+vastland+kamarikan
 イラン、テヘランからの独りブラックメタラー。こんなん初めて聞くわ、と悶絶するようなものを当然私は大いに期待したが、そういう馬鹿な期待は速攻裏切られ、違う意味で大いに驚いた。北欧産暴虐ブラックデスメタル、そのままである。オフィシャルサイトには北欧でおこなわれたフェスティバルでの模様も紹介されているが、サポートメンバーがまあ、MORBID ANGELにGORGOROTHに1349のメンバーときている。珍しいだけだったら決してこんなモンスターたちがサポートするわけない。
 何の贔屓目もなしに、このアルバムは北欧暴虐エキストリームメタルミュージアムに、何の違和感もなく展示されている。それも入り口の近くに。激烈メタルとしてのパワーは軽くクリアーしているのは言うまでもなく、疾走スラッシュメタルとしてもいいツボを突いた、まったく素晴らしいアルバムである。YOU TUBEで確かめてほしい。タイトルチューンは名曲である。凄すぎる。
 何年か前「中華人民共和国承認」という小さなシールが貼られた、中国のデスメタルバンドのCDを買ったことがある。私は家中のたうち回った。そういう世界を期待して、まったく申し訳ないとこのバンド(人)に謝りたい気分である。ネットの発展、録音機材の超発達の恩恵をこうむり、これまであり得なかった国に何10人もの天才が控えているのだろう。

 

FRONTBACK
"BORN WITH A SECRET"

スウェーデン
デビューアルバム
http://www.frontback.se/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=frontback+born
 これがAMAZONで買えないとは不思議なくらい、メジャーメタルの申し子のような、これまた活きの良すぎる新人。90年代に流行したようなBACKYARD BABIESやHELLACOPTERSスタイルの力強い演奏に、出突っ張りの女性ボーカルが乗る、まったく絵に描いたような音ではあるが、いつ聞かされても飽きがこないスタイルでもある。個人的にはこういう、ベースの音が目立っている音は好きでございます。
 路線そのものがポップだとされるような音だが、軟弱さはまるでない。音は今風の艶ではあるが、アクセルを緩めない勢いがどこか懐かしい雰囲気もする音でもある。後年のRAMONESがやっていてもおかしくないポップチューンが何曲かあって、それも◎。
 どんなスタイルでも、いいバンドはみんな北欧、というこの図式はいつまで続くのだろうか。わしらリスナーはいいものがたくさん聞けるのならどこの国製であってもいいのだが。

 

FURION
"THRASHING FOLKS"

マケドニア
デビューアルバム
https://myspace.com/furionmkd
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=furion+thrashing+folks
 元ユーゴスラビア連邦構成国のひとつ、マケドニアからのスラッシュメタルバンド。
 80年代終わりごろ、"THRASHING BLUES"なるタイトルで本当にスラッシュメタルとブルースロックを合体させる試みにうつつを抜かしたアホなアルバムがあったが(バンド名何だったか忘れた、アホメタルに紹介してます)、このアルバムは"THRASHING FOLKS"、スラッシュメタルでフォークロックもやります、という意味のタイトルである。
 当然そのアホ咲き具合に期待が膨らむが、実際あんまり、というか全然フォークロックなど出てこず、スラッシュメタルの演奏にフォークロック調のメロディーラインをたまに混ぜましたという感じで、そこにしてもFINNTROLLほど極めているわけでもない。期待とは違って、結局なかなかの良質スラッシュメタルアルバムとなっているという、わけのわからなさである。ジャケットはアホであるが、中身は鋼鉄戦車の爆走アルバムである。
 巷のチープスラッシュバンドとは一味違う。まるでアイアン・メイデンみたいなベースで始まるオープニングは笑うが、全体的にスティーブ・ハリス命のベーシストである。しかし音はアイアン・メイデンとはあんまり似ていない。ベースの存在感がこうしてどぉぉぉぉん!と体力一番漫画のセリフみたいに目立っているので、突貫スラッシュであっても他とは格が違うという雰囲気がする。でもそれは雰囲気だけか、という屁曲もあったりするのだが、いいアルバムかしょうむないアルバムかと聞かれたら、これは絶対いいアルバムだ。



メタルではないよのページ

 

FERGIE FREDERIKSEN
"ANY GIVEN MOMENT"


アメリカ
70年代デビュー
ソロ4作目
http://www.fergiefrederiksen.com/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fergie+frederiksen+any+given+moment
 ソロアルバムとしては4作目という、えらい少ないなと思ったが、私の年代で言うと、この人は何と言ってもTOTOの名作中の名作"ISOLATION"のボーカリストである。あのアルバムからもう30年、とか、そういうことは言いたくない(、、、自分の老齢が嘆かわしくなる)が、しかしまあ、毎日何を食ってこういう、あの時代と何も変わらないどころか、より一層透明感も深みも増している歌が歌えるのか、これはアメリカンAORスタイルのミステリーである。良い曲に躍動感、まったくもって完璧どすな。こんな声の50代60代、いるのかと思うが、こうして本当にいる。
 裏が何もない代わり、表の姿が超巨大なのが80年代洋楽スタイル最強の強み。歌心が光って、なんてアルバムじゃない。巨大なロックアルバムである。巨大な商業施設は来る者を選ぶが、音楽は聴く者、買う者を選ばない。繰り返すが躍動感が素晴らしい。光を見たような気になる。私は今老人派遣労働者肉体労働、落ちるところまで落ちてしまった人間になったが、このまま死にたくはなく、やはり光、救いは音楽か、と一般の人が鼻で笑うようなことを真剣に思ってしまいます。

 

FIDDLER'S GREEN
"WINNERS & BOOZERS"



ドイツ
92年デビュー
16作目
http://www.fiddlers.de/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=fiddler%27s+green+winners+%26+boozers
 知る人ぞ知るという凄いバンドで、YOU TUBE映像を見てもらえばわかるように、20年一貫してこういうバンドである。ライブアルバム入れて16枚ものアルバムを出している超人気者で、フォークロック(本当のフォーク・ロック)スタイルでは世界一という存在だろう。とか偉そうに言う私がこのバンドを初めて知ったのは2011年"WALL OF FOLK"、この↑アルバムの1作前、「突っ込め!スピードフォーク」という風流なタイトルがついたアルバムです。というのも、本当の話、個人のブログを除いて日本のサイト、メディアでこのバンドをこれまで紹介してくれたところなどまったくなかったのでは。日本盤もその「突っ込め!」たった1枚しか出ていない(この新作は出る予定なし)。
 私のアホ文よりこちらのほうがもっと参考になるが
http://surf-project.com/uncleowen-music/fiddlers-green/、1980年代はTHE POGUES、90年代はFLOGGING MOLLYにDROPKICK MURPHYS、音は完全にアレ風であるが、92年のデビューアルバムからスタジオ盤がこれで14枚目というのが凄い。近年ようやくメタルファンにも注目を浴びるようになったそうだが、確かにFLOGGING MOLLYよりもパワフルである。メンバーはかなりおっさんばかりだが、とにかく音はめちゃくちゃ若々しい。パンチ力キック力が凄いのなんの。飲み屋の親父ロックというよりは、酒場のプロレスロックである。最も前向きに日常を忘れさせ、夢の世界に逃避させてくれる音楽。わざわざ外国の音楽を聞かないでも、日本の中にもこういう人たちはいると思う。だから誰にも彼にも推薦というわけにはいかないかもしれないが、洋楽聴いて80年という私のような老人にはなんせ今、一番楽しい音楽がこれである。

 

FLASH - featuring RAY BENNET & COLIN CARTER
"FLASH - featuring RAY BENNET & COLIN CARTER"


イギリス
およそ40年ぶりの復活(だそうです)
http://www.psychosync.info/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=ray+bennett+%26+colin+carter
 YESのオリジナルギタリスト、ピーター・バンクスが結成したバンドで、1972年、73年に計3枚のアルバムを残し、解散して、そしてピーター・バンクスではなく、別のメンバー2人が実に40年ぶりに出したFLASHの新作ということである。参加していないピーター・バンクスはこのアルバムリリース直前に亡くなったそうだ。
 40年ぶり、ってそんなん、ぶりと言えるのかと思うが、メンバーがCD出したんだから確かに40年ぶりで正しい。
 40年ぶりにしっかりレビューできる人がいたら凄いだろうな。私はおっさんの作った洋楽として接するしかない。FLASHのアルバムは1枚だけ持っているが、内容はよく覚えていない。あの時代のYESに似た音だったと思う。
 で、ディープ・パープル同様、還暦とっくに過ぎたおっさんたちの作った洋楽ロックとして感想を述べたいが、これがかなり聴ける音である。ジャケットはなんか、ブルースのミュージシャンみたいだが、内容は70年代スタイルプログレのリラックススタイルのような音である。音の張りが素晴らしい。枯れているプログレというのも聞いてみたい気もするが、ここでは無理なく音に、張りがある。40年ぶりとかそんな大仰な宣伝は一切音に出ておらず、ベテランのブリティッシュロックという雰囲気で、繁華街のしゃれためし屋でBGMに鳴っていても少しもおかしくない。
 プログレを主張するにはあまりにも控えめな鍵盤サウンドが、地味ではあってもいい味を出している。

 

FORRAJE
"QUEJIDOS QUE NO ESCUCHA NADIE"

スペイン
03年デビュー
4作目
http://i29903.wix.com/forraje#
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=forraje+quejidos
 スペインのGREEN DAYみたいなバンド。レーベルはワーナーミュージック・スペイン。今スペインを代表するロックバンドのひとつである。
 よくもまあこんな借りもんばっかり、という音だが、完成度はアメリカ産級に高く、若々しく真っ直ぐな音なので、嫌味な感じはない。一切裏のない音なので、何とも元気の出る音である。何が面白いといって、聞けばわかるように全編に渡るスペイン語。音が音なので、おっさんくさいこの歌もなんかおしゃれに聞こえてしまう。というか、若い人間は聞き慣れた音楽に乗る異質のこのボーカル、おしゃれなもんを感じてしまうんじゃないでせうか。

 

FOWARD
"CALL THE AMBULANCE"

アルゼンチン
00年デビュー
2作目
http://www.forwardhcp.com.ar/
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=forward+call+the+ambulance
 アルゼンチンから、またむちゃくちゃ面白いバンド。さほど個性的なことをやっているわけではないのだが、健気なくらいにアホの華が咲いた音である。スピード・メロディックコア。本当にそういう音。世界中に転がっているポップなパンクロックスタイルに、ブワーッとスピードをつけた音。重々しい音だとスラッシュメタルになるが、このバンドの音はメタル色が少なく、かつむちゃくちゃスピード感があるから面白い。こっちのほうが数段豪華な音だが、SUICIDAL TENDENCIESがスケータースラッシュと呼ばれていた初期の音、あんな雰囲気もある。
 スピード感はパワーメタル、スラッシュメタルだけのものじゃない、ということを態度で示すバンドが意外に少ない。このバンドもメタルが死ぬほど好きであることは間違いないのだが、スラッシュメタルカラーを排した分、スラッシュメタルの傑作よりもインパクトのある音になっている。
 私はアルゼンチンのバンドはたくさん知っているが、バンドの数も質も正直、スペインより断然凄いですよ。

 

FRANCO
"SOUL ADVENTURER"

フィリピン
00年デビュー
2作目
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=franco+soul+adventurer
wikipedia(英語)
http://en.wikipedia.org/wiki/Franco_(band)
 ウィキペディアを参照してほしいが、フィリピンで今現在最も人気のあるロックバンドだそうな。全編英語であるせいだけではなく、いい意味どこの国の音かわからず、ぐんと明るくなったSOUNDGARDENみたいな音である。どうしようもないメタルバンドをいくつか聞いたことはあるけど、これほど質の高いフィリピン産ロックは私は初めてである。日本ではまったく知名度がないが、なんで近い国の音を誰も(どこのCD会社も)紹介してくれないのかと思う。
 歌はあんまり熱く歌うタイプではないが、しっかり歌い込む感じで、渋さもある。激しい演奏とこの渋い歌が不思議と合っている。フィリピンで一番売れている、といわれたら、世界歌謡祭のような色とりどりでエスニックな印象を思い浮かべるが、時代が違う。アメリカのヒットチャート上位にあってもまったく、少しもおかしくない音である。

 

FREE ROADS
"ONCE"

イタリア
デビューアルバム
you tube
http://www.youtube.com/results?search_query=free+roads+once
 イタリアからもついに出たかこういう音、という音。オルタナディブスタイルのとっつきにくい部分を切り取って、AORロックからおっさんくさい香水のにおいを切り取ったような音。イタリアというとオペラメタルか重さの足らんスピードメタルしか思い浮かばないので、こういうワールドワイドな音は珍しい。というか今時点ではもうイタリアでもこういうバンドが数々生まれているかもしれない。とにかく快適で聞きやすい。語らないし、踊らない。まずじっくり聞いてくださいという音。ハードコアな要素はまったくないのは当然、しかしメタルの影響はないわけではない。癒されてるんだか興奮させられてるんだか、どっちなのかよくわからんアルバムだが、ここ数か月で一番洋楽らしい洋楽を聞いたな、とべたな感想が出たところでおしまい。





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