1986年
ロック編 (ハードロック、メタル以外)
××××××復活の年。
86年は××××××の年といっても過言ではない。
個人的評価100点満点作品 全17枚
BILLY IDOL |
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名曲 |
口を横にゆがめてスカシている顔が嫌いだというリスナーも多かったが、元々そういう顔だとしたらどうする。 オープニングナンバーが感動。スティーヴ・スティ−ヴンス(ギター)との名コンビぶりも完全に芸術作品級の趣きだった。サイボーグのハードロック、90年代サイバーロックの走りと言うべきか、ビュンビュン走るスピード感が何とも快感な聴き応え。堅苦しく考えずにこういうのもハードロックのひとつと考えると90年代ロックも面白いもんである。 ただし、今回はオープニング曲以外に名曲がなかった。 |
GTR |
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名曲 |
エイジアを抜けたスティーヴ・ハウにブリティッシュロック伝説の正統派ギタリスト、スティーヴ・ハケットが合流、プログレファンはそれだけでチビッたという。 そして作品のキャリアは少ないものの、ハードロック界ではこれまた伝説の存在感を誇っていたハイトーン・ボーカリスト、マックス・ベーコン(元BRONZ)を加えたスーパーバンドの登場だった...とはいえエイジアに比べるとかなりマイナーな話だったが。 音はエイジアよりも幾分高尚なプログレッシヴ・ハードポップである。 点数でも付けろとなるとテクニックにうるさい方や楽器マニアの多くの方々から100点満点を献上されることと思うが、エイジアの包容力に比べ、女子供、遊び人はちょっとあっちに行ってなさい、みたいな雰囲気がちょっと窮屈だったかもしれない。 |
BIG COUNTRY |
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名曲 |
ゲイリー・ムーア"WILD
FRONTIER"あたりのファンはぜひ。同郷のご近所サウンドである。 こういう勇ましく最高にメロディアスな音であるからして、もっとハードロックをかましてくれよと言いたいところであるが、これから受けるインスピレーションを素に多くの優秀なバンドがデビューしていったことと思われる。 |
JASON & THE |
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名曲 |
同年デビューしたGEORGIA
SATELLITESのイトコのようなサウンド。間違いなくアメリカ南部産の音であるが、サザンロックという空気はあまりない。垢抜けたオシャレな印象があるが、軽さはない。 このアルバム級のものをあと2、3枚でも出していたら、有名バンドになれた。 |
ELVIS COSTELLO |
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名曲 |
THE ATTRACTIONS表記のない作品。ソロアルバムも何も、音は他のアルバムとまったく同じである。 いや、雰囲気としてはロック色は薄く、おっさんの休日、的にほんわかした空気が漂うアルバムである。 全体的に優しいカラーのアルバム。以前から、この色こそこの人の素晴らしさなので、ファンは十二分に堪能した。とことん和める1枚である。"American without Tears"はバラードロックの最高傑作。 |
CHEAP TRICK |
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名曲 |
音的には前作のパート2。(当時)今風エレクトリックっぽさが駄菓子風魅力をきらびやかにまきちらす、にぎやかさだけは誰にも負けない宴会ロックスペシャルである。 勢いがなかった時期の作品、なんて言う奴は言うが、確かにセールス的には低迷していたながら、そこが今に残すこの作品の評価となっているのならあまりにも悲しい。 弾け具合は前作以上。全アルバム中特に弾けまくっているアルバムである。 |
STING |
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名曲 |
ライブアルバム。当然ぽりすの曲もやっているが、ヒット曲は意図的に外したような感じである。 ブランフォード・マルサリス(サックス)、ケニー・カークランド(ピアノ)、その他、ジャズ畑有名人のロック風プレイが本当に素晴らしいアルバム。曲よりも演奏を堪能させてくれた、ライブアルバムの鏡である。 |
PETER GABRIEL |
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名曲 |
本当にこのミュージシャンは、印象の割には優(やさ)おっさんだった。このお見かけから、かのような全世界戦慄サウンドを造った人であるとは到底思えない。 英国ロックの生神様ピーター・ゲイブリエルの、実は初めてちゃんとしたアルバムタイトルがついたという5作目。ワールドミュージックとブリティッシュロックを魔法の杖で融合させるという生神様の腕を持ってして、初めて「ポップス」に挑戦なさったという、そんな雰囲気のアルバム。 オープニングから立て続けに3連発、震えるような名曲が並んでいる。 しかしそれ以降、寝てしまう私は難解さを感じ寝てしまうというアホなのか、あるいはこの音に対する普通のリスナーの当然の反応なのか、いまだにわからない。 |
PALLAS |
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名曲 |
ハードロック盤ジェネシスみたいなこういう音楽性を持つ一派は当時ポンプ・ロックなどと呼ばれていたが、何がどうなって「ポンプ」なのかはよくわからない。 このバンドはあまり知ってる方はいらっしゃらないと思うが(多分日本盤も出てない)、中でもこのバンドは激しいギターサウンドこそ出て来ずとも、緊張感ある曲構成をして、ハードロックバンドと言い切っていいサウンドを売り物にしていた。 当時向こうの雑誌では大々的に評価されたが、日本の雑誌に至っては輸入盤紹介のところにちょろっと、程度の扱いだった。 |
JOHN FOGERTY |
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名曲 |
ポップ畑を耕していく農夫のような活動を期待されていたこの人、ここでこんなシャープな音を聴かせてくれるとは誰も思ってなかったに違いない。 といっても鋭いのはタイトル曲チューンだけであるが、しかし自然食が肉食を上回るような力を感じさせてくれた名作である。 |
GEORGIA SATELLITES |
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名曲 |
その知名度のわりにあまり作品を出していないバンド。 このバンドこそ80年代最強のアメリカンサザンロックバンドである。コンセプトというにはあまりに仰々しいが、この頭のてっぺんから尻尾の先までのネイティブアメリカンの空気、その同じ加減がものすごく強い武器だった。 すべて同じカラー(=どの曲も同じ)というのとは違う。同じ物を作っているのではなく、同じ道具でいろいろなものを作っている音楽でである。 もちろん音の手触りはハードロック調であり、今のリスナーにはホコリくさすぎる70年代サザンロックの師匠サウンドよりも、かなり近く聴こえたのではないだろうか。私は80年代アメリカンロックの中でも3本の指に入るくらい好きなバンドである。 当時、勝手にこれをメタルと勘違いして酷評した阿呆な雑誌のエピソードが結構笑えた。 |
BILLY JOEL |
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名曲 |
この人のアルバムとしてはダイナミックの逆、テンションの濃淡がないという珍しい作品である。 しかしこの、ほとんど全曲が名曲クラスという質の高さ。よくもまあ次々と、というくらい名曲が並んでいる。今となればあまり有名な作品じゃないかもしれないが、それなら隠れたお宝でである。 |
THE ELECTRIC LIGHT
ORCHESTRA |
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名曲 |
メンバーがごそっと抜けてしまい、この時期「オーケストラ」とは名ばかりで、実際はリーダー、ジェフ・リンのソロ作品と言って差し支えない作品だったが、しかしグレード的には以前の名作と同等。 オーケストラ風仕掛けのなさがすっきり肉を落とした印象、という前向きな空気を感じさせる作品。仕掛けが減った分、そこを補って余りあるのが、使い古されてようが安かろうが、とにかくビートルズ的だとしか言いようのない超大衆的なメロディー。 90年代あらゆるミュージシャンから引っ張りだこの大活躍をするこの御人の、シンプルかつ弁舌なまさに履歴書といった雰囲気があった。オープニングナンバー“Heaven Only Knows”はあまりに完璧すぎてため息が出る。 音が楽しむ、音で楽しむ、音に楽しむ、音を楽しむ...これぞ本当の音楽という気がします。 |
ROD STEWART |
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名曲 |
この時期になってこのアルバムタイトルの意味は如何に。 誰もが思い浮かべるロッドの音ではないが、しかしこの人にしか絶対できないという音である。 80年代ロックとしてはえらく地味な色ですが、地味なのに豪華というこの空気はこのアルバムくらいしか思いつかない。 あまり話題にもならず、名作扱いされてもいない。ほんと、ハイテンションなだけがロックかと言いたい。 |
第3位! |
WHEN THE WIND BLOWS |
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名曲 |
前半5つのバンドの曲が入っていて、後半は長い映画音楽いうサントラ。 映画は老夫婦が主人公の外国アニメ。核戦争が勃発した世界、しかし日常生活を続け、放射能にやられわけのわからぬまま死んでいくという、シリアスな映画である。 童話風の外国アニメという、絵本が動いているような映画だったが、それゆえ何と重い映画なんだと当時衝撃を受けた。 前半5曲がDAVID BOWIE、GENESIS、SQUEEZE、HUGH CONWELLによるナンバーで、そして後半はすべて、映画のサントラらしい曲が並び、これを演奏しているのがROGER WATERS AND THE BLEEDING HEARTS BAND。ロジャー・ウォーターズによるこの作品オンリーのプロジェクトのようです。 ということは、ただのサントラでは済まない。 DAVID BOWIEのタイトル曲も感動的だが、アルバム最後(映画の最後に流れる)の"Folded Flags"はピンク・フロイドを越えた名曲である。本当である。 |
第2位! |
QUEEN |
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名曲 |
映画「ハイランダー」(クリストファー・ランバート主演/不老不死の伝説の騎士ハイランダーたちの争いを描いた硬派ファンタジー映画)の歌入りサントラが4曲ほど、そしてこれまた映画「アイアン・イーグルII」(戦闘機モノ)の主題歌1曲、フツーにクイーンらしい曲が4曲ほど、と前代未聞の構成を持つ作品。 しかし何も知らないで聴けば、サントラだなんて思いもつかない雰囲気がさすがクイーンである。 グレードは他の名作と比べいささかの違いもない。ただひとつ、このバンドらしくないコンセプトのバラバラ具合であるが、かえってお楽しみ袋のような嬉しさとにぎやかさがある。 “Friends Will Be Friends”はまさにクイーンらしい暖かいバラードであるが、バラードを超えた泣きが凄いと言って余りある“Who Wants to Live Forever?”は稀代の名曲。最後はハードロックでびしっと締めくくって、かっこよさでもやっぱり満点級。 |
第1位! |
BOSTON |
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名曲 |
セカンドから8年ぶりのサードアルバム。 8年待った甲斐があった、なんて言う人が当時いっぱいいたが、実際8年も経てばファンも忘れていたというのが本当のところ。だからこそ、前作前々作を聴き倒したリスナーの耳にもおもいっきり新鮮に聴こえた。 70年代ワールドワイドロックのシンボルと言えるあのサウンドがどれほど冴えた形でよみがえっても、あまりにジャンルが増えすぎたこの時期、結局懐メロファンのお気に入り以上の作品にはなり得ないんじゃないか、などと心配しながらレコードかかえて家へ帰ったのを覚えているが、宇宙ロック絵巻は不滅、天才の音楽は不滅だったとひれ伏すしかなかった。 怒涛のクライマックス、感動の津波である。あれやこれやと音楽的な解説をするより、国籍年齢人種問わずあらゆる人に聴いてほしい。 |