1987年
ハードロック、メタル編
あのバンドが全世界デビューしたということで、
歴史的な年にはなるのでしょう。
アイリッシュ荒野の男とタラコくちびるが銃と薔薇で
白い蛇を撃ってヒステリーになった年である。
しかしベストアルバムは私はアレを選びました。
しかし
名作出して当たり前のバンドが名作を出して、
満足度は大きくとも嬉しさの乏しかった年かもしれません。
マイナーメタルもどちらかといえば不作。
★★★★★星(個人的評価100点満点作品) 全28枚
JOHN NORUM |
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名曲 |
EUROPE脱退後もソロギタリストとしてまっすぐにキャリアを重ねていったが、EUROPE脱退後初のこの作品は、バンドに対する思い入れを吐き出すというか、整理するというか、そういう雰囲気の、北欧ならではの良質なポップハード作品となっている。 ハイライト曲の透明感あふれるバンドサウンドは弾く姿をも薄れさせるほどの世界を持っており、時折うかがえる「オレはギタリストだ」というアピールが次作以降の予告編といったところだろうか。結局、この人のソロ作品の中ではバンドカラーがいちばん濃い作品だった。 |
SANCTUARY |
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名曲 |
ボーカリストは現ネヴァーモア(NEVERMORE)に在籍している。 クイーンズライチのジェフ・テイトがトチ狂ったようなこのボーカルは、音階を上へ下へと八面六臂の大活躍であるが、それ以上にサイキックホラー映画の雰囲気を感じさせるバックの演奏が素晴らしい。 走ったり止まったりというリズムチェンジ多用タイプというより、リズム感覚を歩調走調のスピードに限定しない型破りな曲構成で迫る。 プロデュースはデイヴ・ムステイン。当時はメガデスよりかっこいいなと私は思った。 |
VOI VOD |
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名曲 |
まだまだマイナーでの活動が続くが、質的には3作目にして最高傑作、このバンドの代表作と言える。 今現在のブラックメタルあたりにも通じる恐怖感覚をまとっていたコワいコワい出で立ち、それが変わったわけでもなく、相変わらずバタバタした雰囲気のサウンドではあるが、このジャンル、この作品ならではの聴きやすさが新しかった。 |
TNT |
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名曲 |
通算3作目、初のメジャーデビュー作品。ウソついてたやろ!と言いたくなるくらいの化けっぷりだった。 それなりに激しい音であっても野蛮さを極力取り去った、北欧産の魅力満開の透明感あふれるサウンドである。重量感がヘヴィ・メタルとしても十分合格点だったが、包容力あるメロディーもなかなかのもので、ナイト・レンジャー級に売れていたとしても何らおかしくなかったサウンドである。 |
WHITE LION |
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名曲 |
甘いボーカルにヴァン・ヘイレン風の爆撃機ギターがうなる、何とも個性的なサウンドだった。しっかり体温の感じられる、人間味あふれるハードロックである。ラットあたりにも共通する、ヘヴィ・メタルバブル時代の華やかさを感じさせるサウンドでもある。バブリーな雰囲気を持っていたバンドはごまんといたが、音そのものではちょっと似たようなバンドは思いつかない。 |
EXODUS |
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名曲 |
アルバム1枚で棍棒メタルからとっとと卒業、この新しいサウンドの要はやはりリズムだったと思う。 もうすでに手段的に飽和した感のあるこの時期のヘヴィ・メタルスタイルだった、リズムの部分に可能性があった。 メガデス風の忙しいリズムチェンジはない。ヘヴィ・メタルならではの伝統的な疾走感の中に新しさが展開されているところが名作と呼ばれるゆえん。誰も見たことないような格好で走っている変態ランナーみたいである。 一聴したところ頭が地面につきそうなつんのめり具合でありながら、絶対にコケない。コケないどころか何百、何千のメタルバンド中最高速をマークしていた。 自動車でたとえるならエンジンの作りからして画期的という感じがする。 |
RATT |
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名曲 |
シングル“Dance”なる曲がヒットして、何を軽いこと抜かしとんねんという具合に多くの男性リスナーがソッポを向いてしまった作品。 デビュー当初のバイオレントな雰囲気はぐんと薄れるも、なかなかパンチ力のあるぶりぶりのロックンロールを聞かせてくれる。筋肉モリモリのジュニアヘビー級レスラー、ダイナマイト・キッドやデイビーボーイ・スミスみたいなサウンドで、私は好きである。 |
SHY |
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名曲 |
パワーメタルとケンカしてるようなメガスペシャルな前作を聴けば、えれぇ小ぢんまりした音になったなと、どうしても地味な作品に聞こえてしまうが、曲はかなりグレード高い。本気でアメリカのヒットチャート進出を試みたみたいで、半数の曲が外部の書き下ろしという力の入れよう。全体的にドッケンの弟みたいなサウンドだが、しっかりドン・ドッケンのプレゼント曲もある。 特にスティーヴ・ハリスという誰かと間違いそうな名前のギタリストのセンスが、前作に続いて相当素晴らしい。 |
VENGEANCE |
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名曲 |
メジャー2作目、通算3作目の作品で、もうこの時点で引き出しの多さは間違いなくワールドワイドメジャークラスだった。一般ヒットチャート狙えるような名曲がほしかったが、メタルファンに向けたメジャー作品としては文句なしに満点級。相変わらず歌がかっこいい。この時期いちばん弾けていたメジャーハードロックだった。 |
GREAT WHITE |
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名曲 |
この柔らかいサウンドはもはやメタルではないのは誰にでもわかるが、かといって一般ロックをダンスミュージックやアイドルポップスが独占している状況では、ハードロックの範疇にとどまっていた方がバンドもリスナーも便利だったってことで、それを前提に言わせていただくと、このバンドはこの名作で80年代ハードロックというジャンルが誇るべき逸材に成長した。 中でも稀代の名曲“Rock Me”に身体が打ち震える。句でも読みたくなる風流さが素晴らしい。何万分の1のバンドしか持たない抜群極まるセンスである。アダルトというより、本当に大人の音。大人のハードロックである。こんな曲聴かされた日には、それまでの自分の趣味というものまで疑ってしまう。 サビに感動、メロディーに感動、というより曲そのものに感動。 |
DIO |
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名曲 |
いちばん個性的だったのがこの4作目。ただ単にかっこいいメタルが聴きたいなら前作をおすすめするが、このバンドに興味があるのなら、個性が完全に結実したこの4作目をおすすめしたい。 よくある表現に「〜節(ぶし)」というのがあるが、そこに至るまでの個性を確立しているバンドはメジャーバンド10のうちひとつあるかないか。そんな作品の極めつけがこれ。 強すぎる個性を前にして、バンドをここまで私物化していいのか!と怒った奴ら(本当にそういうのがいた)は笑い者。このバンド名、たった3つのアルファベットも読めないのか? |
TESTAMENT |
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名曲 |
このバンドの登場がひとつの大きな現象だったと言っていいくらい、まさに80年代後半アングラヘヴィ・メタルの歴史を凝縮したようなバンドである。 スラッシュ/パワーメタルの極めつけ、とばかりにいきなりメタルシーンに飛び出してきた。どこどこが聴きものというよりか、そこにあるだけで凄かったという怪獣みたいな音である。 この作品がそこそこの知名度を確立したということが、マイナーの典型とされたスラッシュ/パワーメタルがメジャーロック級の確固たる位置を獲得したことを示した。と思う。 |
EZO |
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名曲 |
あのフラットバッカーの超個性はところどころ生きてはいますが、ああいうパンキッシュなスタイルではなく、スローテンポ中心のおどろおどろしく黒々しいヘヴィーサウンドが誰にでもわかるくらいに目立ちまくっている。 ずんずんのっしのっしという感じで、ゴジラの国日本の生んだヘヴィーロックとしてまさしく表彰もんだった。世界進出を果たしたバンドの中では、60年代のフラワー・トラベリン・バンド以来の個性的な音だった。 2曲ほど入っているアップテンポの破壊力も凄いが、ミドルテンポ調の曲が、特に和風の呪術的雰囲気であり、やはりジャケットも秀逸だった。 しかし全然売れなかった。 |
TRIUMPH |
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名曲 |
90年代に再結成もしたが、デビューからの黄金の3人メンツはこの作品で最後となった。 確かにこれまでの歴史を総合した集大成的色合いを感じさせる。近年の機械的なクールさに以前の恐竜サウンドのエッセンスが戻り、言うなればメカゴジラ・サウンドである。こんなでかいサウンド、真似しようたって誰もできない。“Headed for Nowhere”などため息が出るほどの名曲である。職人風を捨ててエンターテイメント路線を追及して、そしてしっかり職人の世界がある。万人が認めるべき最高傑作である。 |
STATETROOPER |
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名曲 |
マイケル・シェンカー・グループというよりプレイング・マンティスに近いサウンドである。ドラマーの人はプレイング・マンティスである。 オープニング曲なんか、プレイング・マンティスで焼き直してくれたらよかったのに。意外にもギターが素晴らしい。2人とも聞いたことないギタリストだが、おそらく初出の作品でここまでのプレイを聴かせるとはタダ者ではない。 ゲイリー・バーデンはのち本当にPRAYING MANTISに加入し、そして2000年代このSTATETROOPERも再結成され、メジャーから何枚もCDを出した。めでたしめでたし。 ところがこのファーストアルバムは、当時日本盤が出なかったことに加えて、長い間CD化もされていなかったということで、ゲイリー・バーデン、この人に対する世間一般の評価の低さにムカッ腹も立った。 |
LOUDNESS |
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名曲 |
アメリカでもヨーロッパでも全然無視されてしまった駄作"SHADOWS
OF WAR"で大きく株を落としたこのバンド、世界進出も大いに危ぶまれたが、あれはいちばん悪い色のバブルメタルと思った。あんなカラーがこのバンドにとってプラスに作用するはずがない。 というわけでとっとと軌道修正、“THUNDER IN THE EAST”に引けを取らない大傑作になったのがこのアルバム。少々荒っぽいプロデュースになっているが、それでいて大正解。やっぱりこの人たちは、ふんぞりかえって座っているような人たちじゃなかった。 ものすごくケンカが強いサウンドに戻ってるじゃありませんか。服がずり落ちても全力疾走する、足を緩めないこのがむしゃらさが欲しかった!と私は思った。ポップチューンさえいかつくてかっこいい。 |
PHENOMENA |
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名曲 |
プロジェクト第2作。前作の固定メンバーとは違い、今回は1曲1曲にいろいろな方が参加している。 ジョン・ウェットンまでが参加となると、いつも家で茶をすすりながら同じようなのばかり聴いてる70年代オヤジロックファンもじっとしてはいられないだろう。山本恭二、新見俊広というVOWO WOWのメンバーも参加している。 前回と違い、参加メンバーそれぞれ100%自分の味を出してくださいという御達しがあったのだろう、リズム隊を除きみんな自分の味を出しまくっている。ひとつの曲としてそれぞれ完成させたプロデューサーの腕も凄い。 中でもレイ・ギランの熱唱が感動ものである。 |
OVER KILL |
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名曲 |
メジャー化=ポップ化なんてもう昔のことだ、と聴いた当時何人ものリスナーが思ったに違いない。メジャーに移籍しなかったら、このバンドは死んでいた。 それくらいメジャー転身甲斐のあるサウンドだった。いくらメタルがメジャーになったご時世とはいえ、女性横に乗せて車の中で聴こうもんなら絶対に気まずくなる、あるいは家で聴いてたらオカンが「消せ!」とホウキで叩きにくるような、そういう色で通しているのが素晴らしい。 |
ベスト10!
KANE ROBERTS |
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名曲 |
肉弾ギタリスト、ケイン・ロバーツのファーストソロアルバム。美麗メロディーの洪水、というのが意外も意外だった。ギタリストというより、優れたソングメイカーである。 親分であったアリス・クーパーの復活作“CONSTRICTOR”と同等の、いやあれ以上の品質を誇っている。アダルトな空気もあるが、これは精神年齢の高いポップメロディーと言いたい。大人が聴けばほろりと泣けるし、子供が聴けばそれこそ大きな音楽観を授かる。 |
GUNS N'ROSES |
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名曲 |
80年代以降ハードロック、メタルの代表とされているくらいの世界的有名人たちでありながら、出したアルバムは3枚だけというのが凄いというか、なめとんのかと思うが、87年のこのアルバムを今さらじっくり聴く機会などないにしても、確かに世界的名声を得るにふさわしい名作、傑作であることは間違いない。 このファーストを初めて聴いたときは、ここまで売れるとは思わなかった。そして今聴いて、そりゃ、あそこまで売れるアルバムやな、と思った。 もはや1割程度も期待していなかった??年ぶりのアルバムCHINESE DEMOCRASYが、さすがのアクセル・ローズ、歴史的名作だったのは記憶に新しい。あのアルバムは私はいまだに思い出したように聴いている。 |
VOW WOW |
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名曲 |
なんとあのニール・マーレイが正式加入し、ワールドワイドな活動もいよいよ板についてきたこの時期のVOW
WOWだったが、誰が考えたのか「メガ・ロック」の名称もますます映えるバケモノのようなハードロックが聞ける。 ジョン・ウェットン作(書き下ろし!)の“Don't Leave Me Now”が何というメガな出来だろうか。誇張なしでイギリスのナショナルチャートNO.1をとっていてもおかしくなかった、ポップでパワフルな名曲である。“III”ほどのインパクトはなかったが、そのインパクトをちゃんと踏まえた円熟のサウンドである。 この王様然とした出で立ちに誰が文句などつけることができようか。1秒聴いてこれ名作!と断言できる空気を持っていた、近年には全くない王道の名作だった。 |
WHITESNAKE |
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名曲 |
タイトル通りこれがいちばんホワイトスネイクらしい音だったのか、そこは聴く人の意見が分かれるだろうが、ハードロックと呼ぶには重すぎるし激しすぎるし、メタルと呼ぶにはあまりに渋すぎるベテランの味、言葉こそ単純ですが「ヘヴィ・ロック」なるひとつのジャンルを確立させた名作中の名作である。 この時期に至るまで20年のハードロックを総計したような音である。今風でありながらどこか懐かしい雰囲気もあり、野人っぽくもありながらネオンライトきらめく華やかさだって感じさせる。 最近こんな作品あんまりないなあ、と思えるその理由は音の持っている温度と湿度だろうか。 |
DEF LEPPARD |
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名曲 |
セールス内容共々、モンスターアルバムと呼ぶにふさわしい作品。音の感触はすごく未来的でありながら、これほどまでに活きているロックサウンドは他に知らない。かなり機械っぽい音という評価も当時はあった、何を言うかご老人、最新鋭のエクイップメントを鑑賞しながらここに暖かい血の流れを感じられないでロックリスナーと言えるか。 しかしデフ・レパードはここで終わった。本音で言えば。 |
GARY MOORE |
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名曲 |
ハードロックの世界一凄腕ギタリストとして完全にステイタスを確立していたこの人が、腕ではなく魂で描く作品を制作するに至って、少なくともこの人の目の前にロック精神などという軽いものはまったくなかったようである。アイリッシュというこの人の生まれが唯一音楽面にくいこんでいるというか。 ものすごく軽く言わせてもらえれば、アイリッシュロック(ポーグス、クラナド、エンヤ、昔のU2あたり)のハードロックバージョンということになるのだろう。特に「心」の音楽とは縁遠いメタルリスナーに、極上至福の体験をさせてくれた作品であることは間違いない。 |
WILD DOGS |
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名曲 |
2作目までは「がんばれよ若者」という真面目なメタルだったが、ボーカリスト変われば親分格のどっしりしたジャンル代表サウンドにまで成り上がった。ドヤクザ・メタルである。 初聴きのインパクトからして確実に名作級で、その後何度聴いても飽きないという、満足度からしても名盤と呼べる。存在感とか歴史的意義とか、そんなもんくそくらえ。ただただかっこよくずんずん重い、本当に聴き甲斐のあるヘヴィ・メタルが聴ける。 |
第3位! |
DOKKEN |
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名曲 |
この作品で、初めてこのバンドが本命級に浮上したというリスナーも多かったと思う。アルバムタイトル含めソリッドな出で立ちに新スタンダードの風格が見えた。 メタルバンドがいろいろ新要素を試すのはこういう作品を出してからにしてくれ、という気がする。歌メロ大好きファンも超絶ギターファンも、オヤジメタルファンもスラッシュメタルマニアもみんな寄っといで!と高らかに声を放つ作品である。今聞いてもまったく古い感じがしない。 |
第2位! |
AEROSMITH |
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名曲 |
再結成の意義成った、80年代ロックアルバム屈指の名作である。 前作のように昔のファンだけが感激してるようでは、コンテンポラリーな活動は無い。 2000年になってもまだなお衰えない健在ぶりはこの作品からはじまった。70年代スーパーロックバンドとしての位置、まだそれ以上の場所が保証されたと言っていい、とことん前向きな100%のコンテンポラリーロック作品である。 ポップなチューンもあくまで重く、荒々しいのがファンには嬉しかったが、アルバム中途のルーツ満開おっさんロックがたまらなく良い。古いことやってコンテンポラリー。スタンダードなのに新しい。年季物なのにぷりぷり。こんな音、この人たちにしかできない。 |
第1位! |
LEATHERWOLF |
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名曲 |
飽きの早い傑作が増えつつあったこの時期、久々に名作らしい名作を聴いたという気がした。これほどの聴き応えを感じさせる作品は滅多にない。 アメリカのバンドながら雰囲気はブリティッシュ、基本はパワーあふれる様式美であるが、湿っぽさが発散された瞬間、それが滞ることなく屋外へ排出されるようなこの音感覚はアメリカンハードロックからの賜り物である。 この1987年という時期において、ヘヴィ・メタル/ハードロック統合的なカラーを持っていた。津波のようなメロディーが疾風怒濤のコーラスにのってばんばん飛び出してくるもんだから、まあ何という強い突っ張り技押し技なんだろう。ナチュラルに物凄く強い音である。 |