1987年
ロック編 (ハードロック、メタル以外)
THE
CULTの登場とPINK FLOYDの復活!
という年でした。
アコースティックスタイルに名作が多かった年でもあったような。
★★★★★星(個人的評価100点満点作品) 全21枚
RUNRIG |
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名曲 |
大体私はスコットランド音楽とアイルランド音楽との違いが全然わからないが、仕方がないから同じようなもんだと思っている。 これは70年代から今現在までにもうかなりの数のアルバムを出している、スコットランドロックの古株バンド。 基本はアコースティックながら、すごくダイナミックなサウンド。ELOみたいにダイナミックな曲もあったりする。 |
THE FABULOUS
THUNDERBIRDS |
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名曲 |
スティーヴィー・レイ・ヴォーンのお兄ちゃんジミー・ヴォーン率いるロックンロールバンドの、脂が乗り切っていた時期の作品。足取りも軽い、とてつもなくラブリーなおっさんロックである。 ブルースロックにいそしむ弟がいつでも「追究」なんて言葉が似合う姿勢だったのに対し、兄ちゃんは徹底してアメリカンなロックンロールを楽しんでおられた。ヨッパライ的、放蕩的なカラーがリスナーを幸せにしてくれる。 レッツゴーじゅんと見間違えるボーカリストはキム・ウィルソン、このバンドの主役はこのレッツゴーじゅんである。すましていてもイチビリ顔がとってもラブリーであり、ハイライト曲では盆踊りにも似た狂態で踊りながら歌ってる御姿が即目に浮かぶ。 聴けば聴くほど味がある、なんてこのへんの音楽を指してよく言われることであるが、これはそんなもんじゃなく、聴いた瞬間から盆踊りである。 “How do you spell 'LOVE'?” “That's M.O.N.E.Y”なんて、言うことまでおっさんくさい。 |
MICK JAGGER |
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名曲 |
どうせやるならここまで弾けてくれー! という、おっさんロッカーの教科書。弾けすぎてて気恥ずかしくなってくるような曲もある。小学生が書いたようなジャケットも秀逸。 |
LOVERBOY |
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名曲 |
LOVERBOY完全復活アルバム。オープニング曲はジョン・ボン・ジョヴィとの共作で、まあこれ以上ないくらいの弾けサウンド。弾ける中にも哀愁味を感じさせるメロディーライン、そここそLOVERBOYの醍醐味。 |
D.A.D. |
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名曲 |
この摩訶不思議な音楽性をどう表現したらいいのか、このアルバムのオープニング、一発ノリの神様ラモーンズすら上回るこの激烈なノリをして、この音自体がひとつのジャンルだと思わずにはいられない。 「カウ・パンク」という言葉で紹介されていたのを雑誌で読んだことがあるが、デンマーク人ながらアメリカ映画のマカロニ・ウェスタンに心酔するこの人たち、確かにこの摩訶不思議な音楽性を表現するひとつの言葉でありましょう。 この作品以上のロックアルバムなど何百枚もあるが、これほどオリジナルという言葉が映えるロックはなかなかない。デンマークから届いた音だというから余計ワケがわからなかった。 |
GEORGE HARRISON |
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名曲 |
ELOの活動をいったんストップさせたジェフ・リンは、このジョージ・ハリスンのアルバムからプロデュース業を大々的にスタートさせ、そして自身のソロアルバム、トム・ペティーのソロ、そしてあのTRAVELING
WILBURYSといい、みんな同じような雰囲気の音になってるのが面白かった。 ジョージ・ハリスン、このへんの人が出すアルバムについて「ポップだ」なんて言うのは、いちいち言うことかという意味で本当に馬鹿げているが、しかし本当にポップである。懐メロ風でありながら、仕掛けというものが(当時)完全に今風だった。 |
TOM WAITS |
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名曲 |
前作、85年の"RAIN
DOGS"が名作とされているようであるが、個人的にはあれはあまりにも濃過ぎて。「枕さえあれば俺にはそこが家」、そんなコンセプトだった。 濃いというか苦いというか。こっちのアルバムは幾分リラックスしているような空気で、かろうじてエンターテイメントではないですかというアルバム。渋いロック味があちこちに出ている。いろんなロックと並べて普通に聴ける。 |
PET SHOP BOYS |
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名曲 |
ゲイで有名なこの人たちであるが、どこかナヨッとした歌といい、メタルミュージシャンなどは特に馬鹿にしてそうである。 ところがGAMMA RAYはしっかりこのアルバム収録の名曲"it's a Sin"をアレンジをさほど変えることなくカバーしている。 実際かなりメロディアスな要素があった70年代ダンスミュージック(...ディスコミュージックと呼ぶ)の色を引き継いでいるサウンドで、いまだ個人的には好きなバンドである。踊らないでもしっかり耳で堪能できる。 ちなみに私は、ヴィレッジ・ピープルなんかいまだに滅茶苦茶好きだが(PET SHOP BOYSも"Go West"をカバーし大ヒットさせた)、私は決してゲイおかまではない。 |
STING |
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名曲 |
大きな話題となったファーストソロアルバム、絶賛していた方はロックとは縁のなさそうな、全身の服費用100万円みたいな人が多かったので、そういう人たちが金のかかりまくったお部屋で聴く専用の音になってしまったら、もう私は何も聴くものないだろうな、なんて思わせた2作目。 結果的にSTING様は人の味方ではなく音楽の味方、真のミュージシャンであったことが証明された名作である。決してポップじゃないのに非常にわかりやすいというこのカラー。雰囲気より先に音がある。 |
PETER WOLF |
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名曲 |
「堕ちた天使」路線から早速脱出、セカンドソロはとてつもなくスタンダードなロックンロール路線になった。J.GEILS BAND70年代からのファンはあまりの嬉しさに悶絶したんじゃないだろうか。とにもかくにもオープニングナンバー。驚天動地、乾坤一擲である。 |
JOHN COUGER
MELLENCAMP |
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名曲 |
ずばり、存在感というものがブルース・スプリングスティーンと完全に肩を並べた名作である。 アメリカのシンボルである。カントリーロックというよりはアメリカ土着のロックサウンドである。 あのフーターズを思わせる雰囲気もあった。ジャケット写真はきっとどこか片田舎のドライブインの風景に違いないが、そういう場所で鳴ってて100%似合う音楽である。 この人のロックの風景は、よくあるナイトクラブ風じゃなくて、本当にドライブイン、道沿いのレストランなのだ。のどかな、人間の顔の「皺(しわ)」が感じられるヒューマンサウンドである。ジャケットに写ってる右奥のおっさんがジョン・クーガーではない。この人物は、そのへんのおっさんである。そんなジャケットが、本当に味がある。 こういう音はアメリカにおいても決してロックの主流とは成り得ないものかもしれないが、いまだロックシーンでは1年に1枚くらいこういう作品がポコッと出て、安心させてくれる。歌の景色は土着的でありながら、歌の心は万国共通である。 |
RORY GALLAGHER |
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名曲 |
もうこの時期になると全盛期をとっくに過ぎていて、新作が出ても話題にはならなかったが、しかしロリー・ギャラガーはロリー・ギャラガー、70何年に出ていても全然不思議ではない雰囲気の作品でありながら、2000年過ぎに(亡くなってしまった、この人も...)出ていてもおかしくないような、王道と呼ぶにふさわしいロックを聴かせてくれた。 時代の先端とか、ハヤリの小手先技だとか、この人には全然必要なかった。シンプルなサウンドだったが、まだまだ艶があった。 実際そんなはずはないが、「この人は死ぬまでコードなるものを知らなかった」なんて噂話を読んだことがある。 曲のパターンこそ様々あれど、どの曲も同じような雰囲気で我流を楽しみ切っているこの御姿をして、やはりそんな噂話もひとつの誉め言葉と解釈したい。 |
THE ALARM |
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名曲 |
誰もこんなこと言ってないので、どこまで正しいのかはわからないが、この作品、私には、ジョン・フォガティー、ジョン・クーガーあたりの80年代アメリカンネイティブロックに対するイギリスからの返答という感想を持った。 双方、神経質に物事を考えず、急がず慌てず、そのままの景色とあるがままの人の表情を、楽器という絵筆を持ってシンボリックな絵を描いてらっしゃる。 そして誰もが即理解できる、このあまりのタッチの違い。比べることなどできないが、耳で聴く音がどれほど視覚に訴えるのかというひとつの究極の形である。 特にこのTHE ALARMのサウンドには印象的なメロディーが多いから、このへんの音景色に造詣が深い方なら、おそらく一生の愛聴盤になるのではないだろうか。 |
JETHRO TULL |
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名曲 |
この87年という時期においてもうジッさま扱いされていた。 別にしんどいから手を抜いているわけではないだろうが、一応ロックというジャンルで、リズムプログラム(機械が全部やってる)なんてものが1曲まるまる聴けるのは私の覚えている限りでは87年のこの作品が初めてだった(“Steel Monkey”)。 曲のあちこちにこの時期最新のインストゥルメンタルを散りばめながら、しっかりフルートは大活躍、歌メロはダイア・ストレイツそっくりの雰囲気を聴かせる。 オープニング曲はそのあまりの今風音に、この人たちの全盛期を知る人はきっと驚いたことだろうが、じっさまの演奏であっても間違いなくロックである。 長い曲ですが、“BUDHAPEST”(ハンガリーの首都)という曲がベストチューンである。メロディーももちろんのこと、景色が本当にきれいなきれいな曲。 こんな作品、今誰も知らないだろうし、実際70年代に黄金期を終えた人たちであるが、しかしこの聴き甲斐をして大傑作だと思う。 |
PINK FLOYD |
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名曲 |
ロジャー・ウォーターズがいない作品ということで片肺飛行になったPINK
FLOYD、デイヴィッド・ギルモアの力量如何に、大きく注目された作品だった。 勝手な解釈ですが、73年の名作"THE DARK SIDE OF THE MOON"、日本盤では「狂気」というタイトルがついたが、その「狂」のイメージを一手に担っていたのがロジャー・ウォーターズ。 そのイメージがなくなったことによって、このアルバムではメロディーライン、音の映像が一気に陽性の色にあふれた。 もちろん陽性といっても、陽性に弾けているロックであるわけがない。正装する一般人のための大衆音楽となったのだ。ギターアルバムとして聴いてもじっくり堪能できる作品です。 日本盤タイトル、「鬱(うつ)」というのは、間違っていると思う。 |
BRYAN ADAMS |
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名曲 |
当時は、渋いブライアン・アダムスなんて想像できなかった。クサかろうが何であろうが、青春なんて言葉がいちばん似合ってしまう人だった。 それがこの枯れっぷり。もちろんいい意味である。脳天気なロックなど1曲もないが、かといって憂鬱な曲も1曲もない。 踊るだか暴れるだか知らんが、ボディーアクションを要求するようなロックが氾濫する中で、これはまさしく聴くロックだった。何もせず、いや何をしながらでもい構わない、じっくり聴いてこそ最高に浸れる、聴くためのロックである。 また「田舎」を歌えば人柄の良い人間性をアピールできるという、アコースティックスタイルすら軽くなりつつあったそんな風潮の中にあって、無理して田舎の空気を歌っていないところがかえって素晴らしいと思った(その意識の現れだろうか、ジャケットが秀逸!)。 |
ANDY TAYLOR |
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名曲 |
元DURAN DURANの人だなんて、もう言わんでいいくらい。全然別人である。 このアルバムタイトルがあの90年代代表ブリティッシュハードロックバンド、THUNDERその命名につながったというのは嘘のような本当の話である(ファーストのプロデューサーがアンディー・テイラーその人だった)。 こんなシャープなハードロック、今でもなかなか見あたらない。懐かしいよりも興奮してしまう。ギターサウンドその奥義と言って差し支えないサウンドながら、要がソロじゃなくリフとリズムというところがポイント高い。名盤中の名盤。 |
THE CULT |
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名曲 |
ロックミュージックの金字塔。笑うくらいシンプルな音であるのにかかわらず、誰がこれを今まで実践しただろう。生まれてからただの1度もロックたる音楽を聴いたことがない人が創ったロック、あるいは文明が滅び切ったのち再び芽を出した最初のロック...そんな仰々しい喩えがピッタリ来る。 ロックファン、ロックリスナーといってもあまりに多種多様であるが、音楽好きなら誰もが絶対聴かなければならない作品である。20世紀名作ナンバー1と誰かが大声で言っても納得できる。 ここまで大衆的で、そしてここまでマニアックな作品が今まであっただろうか。 |
第3位! |
HOOTERS |
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名曲 |
この作品が好きだと言う人に出会えば、馴れ馴れしくも両手で握手したいと思う一方、知らないロックファンがいるってことを嘆かわしく思う。 歴代、現代芸術の域にまで足を踏み入れた数々のロック名作を差し置いてこの作品を持ち上げようとは思わないが、それでも強い愛着がすべてという作品もある。私には芸術、アートより断然こっちである。 まったく仰々しいことを言っておりますが、内容は仰々しさのカケラもなく、アメリカ流に非常にカジュアルなサウンドじゃないだろうか。 音世界こそアメリカの片田舎の絵であるが、しかし日本人が聴いてもなぜか、めちゃくちゃ近く感じる魔法の音である。童謡に近いかもしれない。 アルバム中4回くらい万感のサビメロディーが出てくるが、涙したリスナーの気持ちというのは完成品に対する感動じゃなくて、問答無用に郷愁心をかきたてられる本能的な反応である。“Karla with AK”や“Johnny B”はロック盤「赤とんぼ」である。 アメリカの郷愁ならアメリカらしく、もっともっとパノラマ感あふれるでかい形で描かれていてもおかしくないのに、このカジュアルな感覚に拍手である。こういう音はこれまでありそうで本当になかった。 |
第2位! |
WARREN ZEVON |
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名曲 |
あのR.E.M.のメンバーとの共演作品であるが、シブさとポップさがこれ以上なく美しく際立ったアルバムである。AORに分類されているこの人だが、この音のどこがAORだ。非常に印象に残る歌声であるが、シブいというよりかっこよ過ぎである。80年代アメリカンロックシニア部門、堂々のグランプリ級名作。 |
第1位! |
U2 |
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名曲 |
U2最高傑作。ここまで厳粛な音を聴かされるとアホのロックファンもバカ負け、さあどこへでも導いて行ってくださいという気になる。 まだ正座して聴いてしまうような作品である。何かが頭のてっぺんから足の先まで、じわ〜と染みてくるような音である。スピーカーからオーラが出ている。 |