1988年
マイナーメタル編
前年の不作を盛り返す充実度。
しかしやたら男っぽい音が多かった。
★★★★★星(個人的評価100点満点作品) 全16枚
KRUIZ |
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名曲 |
私が初めて接したロシア産(このころはまだソ連といいました)のヘヴィ・メタル。 爆笑必至といった感じで、よくもまあこんなというくらいドンくさい音である。 しかしそれだけなら、ソ連に限らずとも世界中どこでもあった。どんくさい音にかかわらず、魔法みたいに出で立ちだけはメジャーサウンドだったのだ、これが。 マイナースラッシュの「お金10倍かけました」みたいな雰囲気である。あまりの真っ直ぐさが根負けを通り越して、メジャーバンドのプロ意識の産物に聴こえてしまうのがメタルの魔法である。 プロダクションがとことん豪華だった(おそらく国内録音ではないはず)ということもあるが、とりあえずあまりのヘヴィ・メタル・パラダイスぷりに客観的な感覚など粉々に砕け散る。本当に凄いですよこれ。 この時期も今も変わらず思うことは、これに最高傑作評を献上しないで何がメタルマニアか!ということである。 |
ANACRUSIS |
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名曲 |
ここまでのオリジナリティーの高さは本当に珍しい。質が良いというのはまた別の話になるが、80年代でも屈指の変り種だった。 もうちょいわかりやすけりゃ良かったのにと単純に思ってしまうが、わかりにくいゆえのこの凄みかもしれない。 変態と呼ぶほど飛んでいるわけでもなく、とりあえず重量感あふれるメタルサウンドであることは誰にでもわかる。強烈な自閉症メタルである。 2000何年再結成して、このファーストは再録音された。かなりかっこいい音になっていた。 |
DANTON |
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名曲 |
ドイツの国民性かなとも思うが、ダサくてかえって素晴らしい、という雰囲気があったのだ。 これを聴けば、一直線ぶりを応援しなければならないという気にさせられる。このDANTONなるバンドの作品を聴けばわかるように、ジャーマンマイナーメタルの美点は「あれもこれもほしい」ではなく「ひとつふたつあればそれでいい、文句あるか」である。ましてやこのバンド、アクセプト在籍のニコちゃん大王実の弟が歌っていたというところもポイント高し。同じ声出してるというのが本当に笑える。 |
BLIND ILLUSION |
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名曲 |
このファーストアルバムを出すまでにかなりの紆余曲折があったみたいだが、POSSESSEDから超絶変態ギタリストラリー・ラロンデを迎え、とうとう世に出た悪魔の子たち、みたいなアルバムである。 ポゼストからデスメタルの血の色を取り去り、視覚的悪魔性を倍化させたようなサウンドだった。 マイナーメタルの音的意識的限界に挑戦したような実験的な雰囲気が風変わりだった。明らかに、気合いよりも意識を先行させたサウンドである。 挑戦の色が見えても結局わかりにくけりゃプ〜作品になるが、これは違う。マイナーメタルファンなら聴いているだけでメチャクチャ楽しめる。 禍々しさとかっこよさが取っ組み合いのケンカをしているような音。 |
CORONER |
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名曲 |
ファーストの必殺テクニカルサウンドはちょっとした話題になったが、そんなカラーは少々薄れたにせよ、技だけでは描き得ない黒々とした個性がにじみ出るように感じられる、このバンドでしか聴けない世界が完成している。 アルバムタイトルの語呂の良さといいハイセンスなジャケットといい、CORONER代表作に推したい1枚。テクニカルにもスラッシュにも陥らない、テクニカルスラッシュというひとつのジャンルだった。 (CDバージョンのジャケットは普通すぎた) |
SADUS |
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名曲 |
深みだとか奥行きだとか、そんなものとはおよそ縁のないまるっきりのスラッシュメタルである。好きな人には本当に価値がある。80年代スラッシュメタルファンには最高に和める一枚である。 当時はすごく危険だ!なんて思ったこの雰囲気も、今となっては何が危険なんだという感じで、懐かしさだけが際立っている。 |
BATHORY |
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名曲 |
こんなバンドのこんなアルバムに★5つつけるアホは日本では私だけかもしれない、というのがこの1988年という時代だったのだ。トリビュート作品まで出ているこのバンドの独創性特異性を、いまだに、特に日本のみなさんは知らないでいらっしゃる。人生損していると思う。 いっぱいアルバム出てるので、そりゃ中にはハズレもあるが、ブラックメタルファン/スピードメタルファン/パワーメタルファン/スラッシュメタルファン、好きなリスナーの聴き甲斐で言えばこの作品こそまさにベストである。恐がらないで是非、堂々と買え。 バイキングメタル、MITHOTYNやEINHERJERやENSLAVEDのファンも大喜びと思う。 |
DANZIG |
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名曲 |
この禍々しい音が、実際聴きやすいということが凄いのだ。 耳がありのままに感じる感覚としては、重量感というほどのものでもなく、ヘヴィ・メタルの要であるギターサウンドだって全然おとなしい。なのにこの聴きやすい重圧感何だろう。 ロック歴何十年という方でも初体験に違いない。「形」のハードコアがガキ専用の幼稚なものに聴こえてしまうかもしれない、こんなのを聴いてしまうと。 まさに音楽の魂を食らう魔人のサウンドである。 |
CHARIOT |
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名曲 |
ファーストは予算のないのが丸出しのアマチュア作品だったが、セカンドでかなり、というかめちゃくちゃレベルアップした。 いずれにせよ個人的には100点満点献上したいが、そんなこと言っても内容は伝わらない。内容はずばり、7年8年ぶりに蘇ったまるっきりのNWOBHMサウンドである。 こもった音におっさんボーカル、煮え切らない憂いがメロディーラインを支配する、それでいてものすごくパワフルなサウンド。1曲目2曲目3曲目のヤサぐれたごり押しにファンはあふれ出る涙を隠すことができない。 以上。 |
VIKING |
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名曲 |
バンド名はウソ言わず、今で言うバイキングメタルとは趣きも何も全然違うが、もっと初歩的な印象、正しくバイキングサウンドである。もしくはターザンメタル、ゴリラメタルでもいい。 あのマイナーメタルの墓守、WHIPLASH(初期です)がもっとやかましくなったようなサウンドであるが、そう言って何人の方にわかってもらえるのだろう。 数あるくされスラッシュの中でも特にやかましい音である。このゴリゴリバキバキ加減がダサく聞こえず、シャープな印象をたたき出していると感じるなら、あなたもクサレメタルファンの仲間入り。 |
TANKARD |
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名曲 |
突進突進また突進、ヘヴィ・メタル界の突貫工事屋である。 暴れ倒すその勢いがあくまで陽性で、このころから世界中を震撼させつつあったデスメタル予備軍たちとはカラーというものがまったく違った。 反則技まで笑って許せてしまう酔っ払いのハードコアプロレス大会みたいな、ハチャメチャな絵を持っている。やってる本人たちがいちばん楽しそうである。 形式よりキャラクターを大きく感じさせた作品で、いくらマンネリと言われようがこのまま何年もまったく同じままでやっていってほしい、と当時は思ったかもしれないが、途中少々の試行錯誤はあったにせよ、2013年現在、いまだにこんな音を喜々としてやっている。 |
RATA BLANCA |
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名曲 |
アルゼンチン出身。世界的に名を知られるメタルバンド、ロックバンドとしてはおそらく初だったと思う。 90年代には南米のレインボーと呼ばれた超個性である。セカンドアルバムがいちばんおすすめであるが、このファーストアルバムも素晴らしかった。さすがにボーカルはエスニック感覚にあふれているが、そこ以外は全く欧米のメジャークラスのサウンドだった。 とりあえず全曲、適当に流すということの絶対にないギターソロが素晴らしすぎる。 量感がもっとほしいという気もするが、歌メロで引き込みソロで唸らせるという曲作りのツボだけはしっかりと心得ている。 |
VIO-LENCE |
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名曲 |
アメリカンスラッシュ/パワーメタルの名作。小粒のボビー・エルズワース(OVERKILL)みたいな歌はご愛敬。突進、突進また突進の音の波状攻撃にバカ負け。リリース当時は、メタリカのセカンドの衝撃を忘れられないメタルマニアはぜひこれを!と言われた作品だった。 しかしまあ、ホントにOVERKILLにそっくしやなあ(笑)。何かに似ている、ということが許せない博学メタルマニアにはのめり込めないかもしれないが、しかし私には心地良さがすべて。4曲目が「ちょっと休憩です」と言わんばかりのミドルテンポだが、それ以外は全編あのレイザーも顔負けのだだっ走りパラダイス。 ギタリスト2人のうち1人は現MACHINE HEADのロブ・フリンでである。 |
第3位! |
SWORD |
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名曲 |
前作に比べ音質が少々軽く70年代ハードロック風になった代わりに、疾走感、小気味良さが倍増している。ファーストに続いてこれも名作。 中にはモーターヘッド全盛期みたいな曲もあって、何の気なしにジャケットのかっこよさに惹かれて買ってみれば意外や意外の嬉しいサウンドになったに違いない、そういうアルバムだった。 ラスト3曲ほどの劇的なかっこよさと言ったら。なんか、タンクのセカンドアルバムを思い出す。贅肉のないサウンドは鍛錬の賜物であろう。男なら聴くべし。 |
第2位! |
WARGASM |
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名曲 |
これはもう、本当に物凄い作品。 こそっとこんなバンドがいたことが吃驚(びっくり)というか、こんな作品があること自体驚愕というか。 トリオ編成ということを知れば椅子から転げ落ちる。ガンガン突進してくる音の塊が鋼鉄をすぱっと斬ってしまう鋭い切れ味を感じさせ、これは象のガ体を持つキバイノシシである。雰囲気はものすごくガラの悪いメタリカ(デビュー時の)という感じであるが、ただし、ファーストアルバムというのにホンマかいなと疑ってしまうほどの枯れ度ヤサグレ度、そこがとにかく異色も異色である。 凄すぎて売れない作品、というものがやっぱり本当にあるのだと思わずにいられない。決してブラストビートがポコポコ唸るハードコア路線ではなく、あくまで疾走感とメリハリの激しさで迫ってくる、というのがいちばんの美点である。つまり、これも正統派なのだ。 しかしセカンド以降はぱっとせず... |
第1位! |
BULLDOZER |
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名曲 |
いつだったか、今は亡きメタル専門店で、このバンドの作品全4枚組ボックスセットと、その特典、オマケについている生写真なるものを見せてもらったのだが、笑うというよりコケた。 メンバーが血のべっとりついた「アレ用なんとか」を口にくわえているのだ。前代未聞もいいところ、血まみれの内臓くわえているブラックメタル死霊連中の何十倍もアホらしく、さすがだ、と思った。 そんな、人類史上最低としか言いようのないこのバンドが、こんな爆弾を隠し持ってたとは。本当に驚きである。 88年という時期において現ブラックメタル最高傑作級のこのサウンド。スラッシュメタルとしても満点級。これは、88年というリアルタイムでは形容する言葉もなかっただろう。はっきり言ってVENOMなんぞ軽く超えた。 "We Are Italian"という曲名があって、まったく何をやっても笑わせてくれる連中でした。 もはや再結成ブームもここまで、と思ったのがこのバンドの再結成。悲しいことにアルバムは凡作だった。 |