1988年
ロック編 (ハードロック、メタル以外)
ジミー・ペイジとロバート・プラントの
共演が大きな話題になった年ですが、
しかしベテラン勢、おっさん勢が
若手に大きく打ち勝った年と言えるんじゃないでしょうか。
全体的に。
★★★★★星(個人的評価100点満点作品) 全18枚
JANE'S ADDICTION |
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名曲 |
“NOTHING'S SHOCKING”「何もびっくりすることはない」なんてよく言えたもんですわこれが。 90年代PORNO FOR PYROSでお釈迦様も寝耳に水的大ヒットをかっ飛ばし、その奇人ぶり変態ぶりで名を馳せるペリー・ファレルのバンドがこのJANE'S ADDICTIONである。 バンド名もヘンであるが、音も強烈なクセのカタマリ。江頭とマリリン・マンソンを足したようなこの御人のルックスはこの音楽性をして正しいと言わなしゃあない。 3枚ほど作品が出てたと思うが、中でも、かろうじてハードロックらしいこの2作目がおすすめ。くねくねタコタコハードロックである。 |
JIMMY PAGE |
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名曲 |
この時期、ロバート・プラントもソロを出したが、双方の作品ともレッド・ツェッペリンマニアを納得させた音ではないにせよ、メジャーロックの中に十分喰い込む勢いと要素を持っていたところが、さすが現役の意地だった。 伝説のバンド解散以降初めて競演が実現した(“the Only One”)のもこの作品だった。 (当時)今風ににぎやかな曲もあって、ギターの独り舞台はマニアが期待していたほどには聴けないが、しかしこういう作品こそギターアルバムという。何をやってもしっかりギターが上座に座ってるではないか。 |
THE MOODY BLUES |
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名曲 |
ジャケット、タイトル、外見はすごくオシャレな雰囲気だが、音の方はすごくポップで、とにかく快適。 80年代初頭に大ヒットをかっ飛ばし、その後中ヒットの連続、それからはどうしてるか知らん、となってたようであるが、80年代後半にも、こうして聴き甲斐のある作品があった。 この時点でバンド歴20余年を誇る大老舗ブリティッシュロックバンドの、心の陽性音楽がこれ。音楽こそが快適空間を作ってくれるという、ありがた〜い音楽。こういうのこそ大音量で聴け。 |
ROXETTE |
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名曲 |
このバンド(?)、私めちゃくちゃ好きでして。すんません。 ダンスミュージックならダンスミュージックで構へんのです。でもダンスミュージックでも、踊らなければ楽しめないもの(私とは1億%無縁)と、しっかり聴く用のものとがあります。 スウェーデン出身ということで、あのABBAとも似ている部分が多い。 |
ENYA |
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名曲 |
今現在も一線でご活躍中で、ヒーリングミュージックの女帝といった趣きがあるが、少々オシャレで敷居が高い雰囲気がする近年の作品よりも、やっぱりこのファーストアルバムは男性女性オカマ、老いも若きも問わず入っていける一大アミューズメント作品である。 そして興ざめな分析かもしれないが、これほどまでに厚みのあるキーボードサウンドは、ハードロックでもなかなか聴けやしませんぜ。 |
IT BITES |
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名曲 |
このセカンドを経て、サードアルバムになると結構パワフルなハードロックになってました。そして解散。 たった3枚の作品は90年代ある種伝説的な評判があった。 80年代は、目立つボーカルとなれば必ず女性が惚れる風にかっこよくなけりゃならなかったが、この、ピーター・ゲイブリエルが唐辛子入りのユンケル飲んだような歌声は、慣れない間は結構異様に聞こえる。 聞きはじめは「高音大丈夫か?」などと無粋なことを考えてしまうが、結局力量は声質などで判断できるものではない。1枚通して聴けばこの歌声の、独特の艶に惚れる。確かに伝説化するだけのことはあるサウンドである。 |
CHEAP TRICK |
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名曲 |
81年以来になるオリジナルメンバーでの再編成だった、聴き応えからしてすごく珍しいというか、"DREAM
POLICE"、全盛期のサウンドを期待したリスナーにとっては期待ハズレとは行かずともスカッと肩透かし、初めは何とも戸惑う作品だった。 ただ、ケツまくって走ることが最後までないこのアルバムをじっくり聴けば、ケツまくって走っていたころの名作はやはりあの時代の名作として、誰あろうこの人たちによって大切にされているんだな、と思った。 70年代80年代を駆け抜けたアメリカ代表ロックバンドによる、90年代をきちんと見据えた作品であるということは、ロックの良心なんてどこ?という雰囲気に染まりつつあったアメリカ当時のヒットチャート、そのトップに返り咲いたという実績が証明している。 トンがってもいないし以前のようなスピード感もないが、その分、時代を超えてしみじみ良い曲が並ぶ。 結局は星5つ級の名作だと思った。 |
KANSAS |
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名曲 |
「万物の霊魂」とえらくまた仰々しいタイトルですが、聴けばおわかりのようにそんなタイトルが映える、とことんパノラミックでビッグスケールな音のテーマパークである。 70年代アメリカンロック代表のこの人たちによる、1988年の音。この前のアルバムに続いて、確かにカンサスはこういう色のバンドではなかったかもしれない。しかしパノラマ感あふれるファンタジーロックであることは間違いなく、確かにこの人たちにしか造れない世界だった。呼吸している場所というのが他のバンドと違った。 再結成第1弾作品である前作"POWER"は新加入のスーパーギタリスト、スティーヴ・モーズ(現ディープ・パープル)の凄腕御披露目大会という雰囲気があったが、今回はその存在感もずいぶんと抑え気味。それでいて然るべき、巨大一枚岩の音楽性である。 あまりに完璧な映画音楽的流れに、ロックミュージックの熱さなどあっちへ追いやられている感じであるが、それであってこそ完成するスタイルもある。曲の素晴らしさもまた映画音楽的。88年ベストソングス部門第1位である。 |
GEORGIA SATELLITES |
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名曲 |
特にハードロックリスナーに対して、どこかの阿呆どもが広めた誤解を一気に解いたような作品だった。 あの名作、ファーストについてはなんせ「新しさがない」(プッ...)とか「トゲがない」(プププ...)やら、もっとヒドいのになると「若さがない」(ぶはははは!)とか、ハードロック/へヴィ・メタル畑ではそんなおポンチ評論家の言葉がまかり通っていたのだ。 ファンとしては腹立つを通り越して、なんか平和な気分になる。 60年代後半から続くアメリカンサザンロックというジャンルの中で、このアルバムほど活き活きしている音はまずない。当時のメタルファンなどは、このアルバムからさかのぼってまたいろいろな名作を買いに走ったに違いない。聴いた人を動かすパワーを持ったサウンドだった。 |
TOTO |
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名曲 |
TOTOがまさにTOTOという作品。ファーストから5作目までの全盛期サウンドに比べると、えらく地味なサウンドで、名作扱いもされていない作品だが、即効性には欠けても、実際何年も聴ける味のある作品である。 "Mushanga"や"Home of the Brave"といった無名曲こそ素晴らしいという作品。 |
U2 |
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名曲 |
ライブ、新曲、ニューテイク、いろいろありの総合的作品。しっかりひとつのカラーでまとめられている。 以降、U2が変な方向へ行ってしまった(ロックマニアが思うに)のもある意味納得。歴史の総まとめ的、こういう究極の作品を作ってしまったのだから。 路線自体は「究極」なんてアート風の言葉は全然似合わないが、ブルースありゴスペルあり、そしてお得意の寒い旋律あり、コーラスも含めると合計4〜50人は参加してる作品である。 ならではのオリジナリティーに音楽系譜的に正統なスタイルをからめた、これは誰がどう聴いても100点満点をつけざるを得ない文化的ロックアルバムである。 ラストナンバーも泣けるが、この曲、やっぱり何かにさようならしているように私には聴こえる。 |
TOMMY CONWELL & |
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名曲 |
HOOTERS一家の関連作品のひとつ。 無鉄砲な若々しさとクサいまでの極上歌メロが同居している、ロック初心者がいちばん喜ぶであろう超スタンダード路線である。元気いいロックが好きな人には2000年にも2100年にも、必ずや愛されるスタイルでありましょう。 本命級の愛着でも単なる懐かしさでも何でもいいが、この歌が頭に響いているときの生活は必ず幸せな生活なんだろう。 私は幸せのない独居老人だから、せめてこれで夢を見る。 |
FAIRPORT CONVENTION |
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名曲 |
大英帝国伝統のフォークバンド。デビューは1968年、この作品が通算20枚目近くになるという大御所中の大御所。しかし全然知名度がない理由は、ロックではないからである。ある音楽ジャンルでは言うまでもなく、昔から大御所中の大御所である。 私の持ってる昔のベスト盤など宮廷ご用達みたいな音であるが、この88年のアルバムは結構ポップス寄りで、イングランド、スコティッシュ、アイリッシュ総合的先祖という空気がわかりやすく伝わります。U2やPOGUESの祖父という感じ。 |
LIVING COLOUR |
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名曲 |
現WWEスーパースターズ、メインイベンターCMパンクの入場曲が"Cult
of Personality"。2013年現在の話である。 元々とげとげしい手触りのロックに何ら抵抗のないメタルリスナーが、異種格闘技戦のツワモノというふうに解釈すれば、今でもまだまだ楽しめる作品でありバンドである。 あるジャンルのスタイルに染まっているリスナーが聴けば、確かに食当たり的感触はあるが、このとんがり具合をしてこの時期いちばんブッ飛んでいたバンドだったことは確かである。 単純で軽快なノリを排した、ウネるパワーロックである。起きがけに食う豚キムチのような強烈な濃さはさすがに黒人のロックだった。 |
TRAVELING WILBURYS |
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名曲 |
知らない人は絶対にひっくり返るでしょうが、このバンドの5人兄弟、その正体はジャケットが語る通り、ボブ・ディランにジョージ・ハリスン、トム・ペティー、ジェフ・リン(ELO)、そしてロイ・オービソン(「プリティー・ウーマン」が有名なアメリカの北島三郎)という、おそらくロック50年余の歴史の中でいちばん豪華なメンツによるプロジェクトと言える。中身は秘密でも何でもなかったが、見かけは完全な覆面バンドだった。 覆面バンドといえば普通別人に成り切って完全にお里を隠すような行動をとるものながら、何が面白かったといって、このメンツが揃いも揃って全員、自分満開である。 例えばボブ・ディランの歌い方はやはりまったくのボブ・ディランで、ジョージ・ハリスンの仙人風ポップスタイルも70年代そのままに全開、トム・ペティーやジェフ・リンは以降のソロ作品の予行演習みたいなことをやっているし、ロイ・オービソンの歌の暖かみときたら貧乏人に至福をもたらすクリスマスソング級。 音楽の神様は本当にいたのだ、音楽の神様ありがとう、のアルバム。 以降第2弾、第3弾まで出た。 |
第3位! |
ANDY McCOY |
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名曲 |
HANOI ROCKSの超わがままギタリスト、アンディー・マッコイの初ソロ作品。 これがまた強烈にヤサグレていて素晴らしい。70年代にポンと出ていたって何ら不思議ではない、まったくスタンダードなオールドスタイルである。時間が止まっている場所から聞こえてくる雰囲気。 世間の注目やリスナーの興味の動向なんぞこの人にとっては何の関心もない。 この、勝手にやってリスナー放ったらかしという空気は確かに独特唯一である。 聞くなりいきなり飛び出す昭和キャバレーみたいな女性コーラス(聴けばわかる)はまさに目が点であり、確かにこんな始まり方からして普通のミュージシャンの作品ではない。与太者のパラダイス的音世界である。 |
第2位! |
THE POGUES |
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名曲 |
英国風に正装した8人編成の、バンドというより楽隊である。パブ・ロックなんてそれ風の名称を与えられましたが、そんなことはどうだっていい。 アコーディオン、フィドル、何とか笛、その他何でもかんでもにぎやかに登場し、万国共通の「踊り心」をかきたてる何ともプリミティブ(原始的)なダンスミュージックかもしれない。当時私のアホ友は「フォークダンスやぁ〜!!」と叫んで踊り狂っていた。 私自身こんなに楽しいロックは初めてと思ったが、クリスマスシーズンの名曲として本国では名高い“Fairy Tale in New York”で楽しい以上の感動を味わわせていただいた。汚い言葉が飛び交う場末的場面の曲でありながら、何とも裏がなく、感動の絵への持って行き方にバカ負けして、恥ずかしくも泣けてしまうような1950〜60年代の洋画の名作を観ているような気になる。 ロックファンからすればこんなんありか、という気もするが、ただ単純な感動も極まれば、個人の趣味など小さいものだという悟りにつながる。 私はこの作品はいまだ神棚に飾っているが、あとに続けるべき(続いて聴くべき)音というものを結局見つけずじまいだった。 関連作品はいろいろあるが、桃源郷の意義やら仕組みやら成り立ちを探し分析するような無粋なことはしたくない。 無人島へ行くとき持っていくやら、死んだとき棺桶に入れてもらうやら、私にとってはそんな作品の1つである。 |
第1位! |
STATUS QUO |
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名曲 |
あまりのポップサウンドぶりにもはや、かつてのハードロックの猛者ぶりなど微塵もうかがえないが、それでもこれが「ハードロック」がごくまっとうに歳をとった姿に他ならない。活動は今に至るまで順調に続いており、2013年、新作の音もこのアルバムから続いている音である。 大きい木には必ず年輪がたくさんあるということで、このサウンド、大きな包容力の陰にはたくさんの音楽、経験が詰まっている。フランシス・ロッシのハゲ頭までとてつもなくラヴリーに思える、おじさんたちのポップでかわいいロックである。 オヤジらしさはそれこそ最強であるが、だからと言って決してオヤジ専用ではない。国籍不問年齢不問のロックンロールパラダイスである。 1曲1曲の完成度、歌メロの極上ぶりといったらヒットチャートナンバーワン級である。とにかくメロディーラインも神的に素晴らしいのだ。 1988年、もうこれが受けるご時世ではなかったが、大人も子供も男も女も踊りながら歌い出さずにはいられない、本当に大衆的な音だった。もちろん本国、イギリスでは売れた。 あまりに清潔な音と言う人は言うだろうが、子供に道を説き大人に郷愁を抱かせる、これは教科書なのだから、清潔であって当然である。このバンドだけは絶対に清潔でなければならないのだ。 特に70年代はゴリ押しのブギースタイルリフが炸裂するハードロックの名作を数々出しているが、現在までの歴代30作を越える作品群の中で、私個人的にこの“AIN'T COMPLAINING”がいちばん好きである。 (そして私はクオファンの中でも浮いている....) |