1989年
ハードロック、メタル編
全部で40枚近く、省こうと思ってもどれも省けない。
80年代でも屈指の名作イヤーだったんじゃないかな、と思います。
実際、今となれば、90年代メタルなんか
80年代に比べ、段違いに名作は少ないように思うんですけど
1989年、
90年代スタイル先取りを宣言するような
新しいスタイルに名作が多かった年でした。
そんな中でアレだけは別格中の別格でした。(1位のアルバムです)
★★★★★星(個人的評価100点満点作品) 全39枚
BAD ENGLISH |
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名曲 |
アメリカンロックジャンル代表バンド、ジャーニーの中心人物ニール・ショーンにジョナサン・ケイン、そして哀愁ハードポップの職人ジョン・ウェイト(“Missing
You”が有名)という豪華なメンツそのまま、想像通りのバブリーなサウンドだった。 見かけも中身もとにかくゴージャスなので、貧乏生活を愛す(?)真性メタルファンには受けの悪いサウンドかもしれない。しかし徹底のロック美学はこういうサウンドにもしっかり活きている。 |
RAMONES |
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名曲 |
どっこがメタルやねん! という前にまず聞いてみなさい。 こんなにザラザラで太〜い音、メタルファンが聴き逃してどうする!!という音である。この作品は特にハードロックであるが、昔からハードロックをやっておらずとも、血気盛んな連中を先導するような血を持った人たちである。 20年近くも一球入魂の一発芸にかけるその意気込みは、比較するならAC/DCくらいしかいない。 映画も素晴らしかったが、ペット・セメタリーの主題歌が最高。 |
FASTER PUSSYCAT |
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名曲 |
アルバムタイトルにあるITの指すものは一体何だろう。まったくもって尊大なタイトルだが、そこで終わらず同様尊大な内容に脱帽である。 誰もがひれ伏すエアロスミスあたりのメンバーにじかに「おいおっさん!」、とか言いそうな奴らである(ホントはそんなわけないが)。そういう個性ははじめのころのモトリー・クルーに似てなくもない。 激の要素をいちいちウンガァー!言わないで、素で伝えるところがタダ者ではない。装甲ヘヴィ・メタルに相対する武装ロックンロールである。 90年代初め、ロックンロールブームのバンドがすべてこんな血を持っていたら、2000年現在、もっとおもしろいジャンルができていたかもしれない。 |
DOMAIN |
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名曲 |
オープニング曲“Lost
in the City”の民謡牧歌的メロディーラインは、絶対耳に染み付いて離れない。 ふと気付けばタコ踊り、恐るべき即効性を持った曲である。私も年くった分、何千何万というロックチューンを聴いてきたが、これはちょっと似た曲すら思いつかない。 これはジャーマンというより、北欧メタルである。汗のイメージは全然ない。オープニングのインパクトがきつすぎて他の曲が目立たないが、同路線バンドの中では筆頭に近い位置にいるべき音である。 |
PINK CREAM 69 |
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名曲 |
ピンクときてクリームときてシックスナイン、ふざけんな。 と当時は思ったが、内容は様式美寄りのハードポップ、またはその逆、ハードポップ寄りの様式美メタル。 ボーカルは現ハロウィンのアンディ・デリスであるが、歌唱自体は今と変わらず、実際今のHELLOWEEN風に聴こえてしまうサウンドである。わかりやすさが何にも増して一番光っていた美点。どうせなら全曲青春映画風メロディーにしてくれたら良かった。 |
U.D.O. |
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名曲 |
アクセプト丸出しの前作はファンサービスという色も濃かったように思うが、さて、2作目は相変わらずどころか、あれ以上にまだスケールアップしたアクセプトサウンドだった。ファンの希望とバンドの路線がここまで一致した例も珍しかった。一撃必殺、一球入魂、乾坤一擲.....とにかくそんなニュアンスの言葉がピッタリくる、まさにジャンル代表シンボルサウンドである。真にメタルマニアのための音。 |
ONSLAUGHT |
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名曲 |
スラッシュメタル東西いちばんのメジャーロックスタイルがこの作品。 もちろん当初からメジャーに成り得る血を持たないジャンルなので、マニアから見れば物足りなさ、「死んだ」とされる部分的要素、きれいさに対する嫌悪感、いろいろあるだろうが、単純に言って、メジャーになれっこないサウンドが実際堂々とメジャーサウンドに成り上がっているので、こだわりより先に耳の感覚に正直なリスナーなら、とことん楽しめるアルバムである。 ボーカルは元GRIM REAPER、のちLIONSHEARTのスティーヴ・グリメットである。知る人ぞ知るメタル界屈指の名ボーカリスト。 合いそうにないカップリングだったが、このメジャー指向は本気だった。見事にボーカル・オリエンティッドのスラッシュメタル、ニュースタイルが完成した。 |
SKID ROW |
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名曲 |
私なんぞはセカンドアルバム“SLAVE
TO THE GRIND”が凄すぎる作品でしたので、このファーストは比べてどうもしょぼく聞こえてしまうが、ではメタル初心者がこれを聞いてしょぼく感じるか、なんてとんでもない。 真面目に感想を述べさせていただくと、70年代ロックを熟知したつもりでいるベテランリスナーの耳にはニューヨーク・ドールズなんてバンドを思い浮かべてしまう、そんな音ではないでしょうか。 時代遅れと良識人が叩く路線であっても、まだまだヤワいと無頼人間たちが叩く路線であっても、結局メタルは体力のある者勝ち。とりあえずファーストアルバムの時点で、最強のヘヴィ・メタルである。 |
GREAT WHITE |
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名曲 |
結果的に“Rock
Me”ほどの有名曲は産まれなかったが、名曲はある。 メタルなどというジャンルとは完全に決別していらっしゃるが、そうであって然るべきこのバンドの血。誰をも納得させたということが名演の証拠である。英気を養うのにピッタリのサウンド。“Hiway Nights”、“Angel Song”、しみじみ素晴らしい。アダルトな音であるのは前作同様であるが、これを初めて聞いた10代の若い連中は、ストレートにこれに感動したのは事実である。世界中のメタルリスナーの、耳の間口を広げてくれたアルバムである。 |
GIANT |
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名曲 |
これぞまさにメロディアスハードロックの金字塔。これを知らんで何をか言わんや。 いきなりベロベロ泣きじゃくってはいない。泣けばこっちを向いてもらえると思っている凡百の同路線バンドのアホさ加減がはっきり見える。 これがリリースされた当時わしはロンドンで不法労働していたが、ラッシュアワーでごった返す地下鉄の壁にでっかく貼ってあったメタル系のCD(レコード)の広告があって、驚いたことが何度かある。このバンドのこのアルバムと、TIGERTAILZの"BEZERK"がインパクトあった。“See You in My Dreams”はラジオで真昼間からばんばん鳴っていた。 |
VICTORY |
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名曲 |
まだまだオシャレに成り切れない血が本当のメジャーへの道を阻んだという気もするが、血はやはり血、これがこのバンドの最高傑作である。 最先端感覚をキックする態度はタイトルにある通り。ヘヴィ・メタルのネイティヴとはまさにこれ、と解釈していい。マンパワーメタルの野太さに恐竜のような暴れ感覚が加えられ、じっと聴いていても心地良く汗を流せる一枚である。 「語り」ですべてが進むような世界にはまったく似合わない音楽性。これがここにある。だから聴く。ほいで、嬉しい。そんな単純さがいいのだ。 |
SILENT RAGE |
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名曲 |
とことん正統的なサウンドであるが、これ聴いてヒネリがないなどとぬかす人間は80年代最初、ヘヴィ・メタル黄金時代をまったく知らない人間である。 かっこいい言葉で言えばアティチュードというのか、そこはあのゴットハードに似てるなと今思った。 「正統派」という言葉は没個性バンドの隠れ蓑になっているような雰囲気がある90年代だったが、正統が個性的であればこれほど強いサウンドができあがるのだ、雄弁に語る作品である。 |
TESLA |
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名曲 |
デフ・レパードの弟バンドとしてデビューしたこのバンドであるが、これは2作目。弟ではなく完全にライバルの音になっている。全然若手らしからぬシブさとクールさ加減をして問答無用のブリティッシュ・サウンドに成り上がっている。 シブいベテランロックだと思って聴けば意外なポップさが嬉しい。エッヂ感覚や走るスピード感などそんな視覚的な部分は排され、ひたすら聴く専用のハードロックになっている。精神年齢が高く、何か頼り甲斐のあるロックという気がする。 |
TREAT |
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名曲 |
新生作品“PLEASURE
PRINCIPLE”から数えて3作目、3つとも完全に同路線ながら、しかし極上である。 3部作みたいな雰囲気も、今聴いたらある。 泣かず喚かず、猛る感情を音楽の重要な要素とせずに、メロディーラインの素晴らしさのみを追究した本当にいいバンドだった。マイナー時代、ファースト収録ナンバーの焼き直し“Get You on the Run”が素晴らしい。感動のあまり呆然とする。 このバンドも再結成、2010年の"COUP DE GRACE"は最高傑作★5つだった。 |
BILLY SQUIER |
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名曲 |
メタルファンに対する贈り物としては81年のファーストアルバム“DON'T
SAY NO”以来の大傑作だった。べーん!!と一発、大きなハンコのようなハードロック。若手ヘヴィ・メタルをも足蹴にし、蹴散らす。問答無用の覇気である。 通してベテランの味をこれでもかと聴かせる骨太の王道ロックサウンドであり、意外性は乏しいかもしれないが、意外性=満足感とはならないベテランリスナーの方は必聴のアルバムと言える。こういう王道がいつでも聴きやすい場所になければ、ロックも終わりである。 |
EXODUS |
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名曲 |
鋭さがとにかく光っていた前作“PLEASURES
OF THE FLESH”であるが、3作目となるこの作品のテーマはずばり「力」である。 路線はファーストに立ち返ったようだった。スラッシュ/パワーメタル、そのジャンル全体に貢献するかのようなストレート路線でブチかましている。 棍棒と剣で闘えば、普通棍棒が負けると思われるが、棍棒の力があまりに強ければ剣は折れる。まさにこれは激烈パワフル棍棒メタルである。この力強さにメタルファンは大満足、メタルファンじゃない人もバカ負け。誰が聴いても認めざるを得ませんですよこの勢いは。 |
NUCLEAR ASSAULT |
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名曲 |
ついにやった!の最高傑作。 ルール無用のハチャメチャ路線がメタルシーンにおいてはまだまだ足枷が多く、これまでは初心者に対しては結構壁の高いバンドだったが、ここに来て、すべてのメタルリスナーに対してどかぁーーんと弾けた。 確かにスタンダードなメタルと比べたら、誰が聴いても暴力度は度を越しているが、しっかりと歌い込む歌が作品の構成、各曲の流れというものを見事に際立たせている。他を排するではなく、他と比べて美点がしっかり見えるところ、前作あたりと大きく違う。 インパクトは相当なものがあったが、インパクトを除けた部分でもしっかり評価できる、評価されるべき作品である。この音なら世界の隅の隅にまでしっかりと響き渡っただろう。 |
WOLFSBANE |
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名曲 |
アイアン・メイデンではかわいそうな目にあったブレイズ・ベイリーはこのバンドの出身。この時点ではアイアン・メイデンとは似ても似つかない、全く新しいタイプのヘヴィ・メタルだった。 プロデューサーがリック・ルービンで、THE CULTやSLAYERで有名、転んでもタダでは済まない音を作ってくれる鬼っ子プロデューサーときているから、聴く前から普通の音じゃないぞと構えて当然であるが、それでも、いかなる構えも無防備に等しかったのがこの音。 バタバタした素速いリズムに、のっぺ〜と迫る歌、これまで聴いたことのないような強烈さだった。 見たことのないヘンな国の格闘技のようなサウンドに思えるが、手を合わせてみればこれがメチャクチャ強く、そしてスタンダードな格闘技に似た理屈がそこにはしっかり存在することに気づく。珍作かもしれないが、立派に名作である。 |
RAGE |
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名曲 |
4作目、前身バンドAVENGERを入れると6作目の作品になるが、これで初めての大ブレイク、一躍メジャーバンドの仲間入りを果たした名作である。 プロローグに続き飛び出すそのサウンドはとことんシンプルで、まさに新生。神様モーターヘッドにも相通じる骨格の太さを誇示した恐竜のような出で立ちだった。オープニングの空気で名作保証つきだった。 このアルバムが教えてくれるのは、ヘヴィ・メタルというのは骨格が本当に大事だということ。これに至っては骨だけでできているようなサウンドである。贅肉どころか肉すらない。 これまで20枚以上のアルバムを出している大御所となったが、私はこのいまだアルバムがいちばん好きである。 しかしよくよく聴けば、歌、えらいオンチですなあ。 |
W.A.S.P. |
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名曲 |
これがWASPの歴代最高傑作である。 ファーストから聴いていた人はこの変身ぶりが信じられなかっただろうし、この作品を初めて聴いたという人にはファーストの人騒がせな乱痴気ぶりが信じられないに違いない。 しかし着る服が変わってきただけのことであって、アホのフリしてIQがおもいっきり高そうな雰囲気は、実はデビュー時と変わっていない。 この89年のアルバムに至ってはアホ咲き度はゼロである。あのWASPが何もここまでやらんでも、という感想を持ったメタルマニアもいたかもしれないが、これほどの楽曲を提供してくれたということはそれだけでも大きな偉業である。 この装甲騎兵団のようなメタルサウンド、2000年以降にもう一度聴きたいなあー。まだ現役でやっておられますが、全然泣かず飛ばずです。 |
MOTLEY CRUE |
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名曲 |
それなりに熱い歌と少々のギターのエッヂ感覚をもって、かろうじてヘヴィ・メタルの範疇に存在し得たこのバンド、何年もしないうちにヘヴィ・メタルとおさらばか?という気もしないでもなかった。これ以前の何枚かのアルバムである。 ところがやっぱり、この人たちはこういうバンドだった。リスナーがデビュー当初から希望し続けた、ヘヴィ・メタル・ロックンロール。ジャンルの話ではなく、音がまさにそうである。これぞ本当にヘヴィ・メタルとロックンロールの合体融合だった。 |
ALICE COOPER |
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名曲 |
超豪華なゲストの尽力あって、当然、当たり前に名盤である。 アメリカのリスナーのみならず、日本のリスナーもいちばん親密感を覚えるタイプのヘヴィ・メタルである。エアロスミスという音楽もボン・ジョヴィという音楽も、み〜んなこの中に入っている。ゲスト参加しているということだけでなく、もっと大きな意味で。 |
THE CULT |
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名曲 |
名盤“ELECTRIC”(前作)は骨だけでできたような、当時は稀なナマナマロック作品であり、何のジャンルに入れたらよいのやらさっぱりわからない、またそんなことするなとも言い放つ無頼の超個性は、メタルリスナーにも大きな衝撃を与えた。 そして続く作品は、嬉しいことにターゲットがヘヴィ・メタルワールドに据えられている、メタルファン向けのサウンド作品になっている。これを聴いて、当時の私の友人は「暗黒ボン・ジョヴィ化」などとわけのわからんことを言ったが、今になれば何となくわかる。 "Sweet Soul Sister"、"Edie"はじめ、パワーバラード系の曲が特に素晴らしい。 |
QUEEN |
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名曲 |
この時期も全然衰えていない。 “I Want It All”で、バリバリのメタルバンドと比較しても何ら遜色ない、凄いど根性ぶりを示してくれたのが大きなプレゼントだった。 実際ブライアン・メイという人は重々しい音が好きな人だと思う。昔から何をしてもスケール、ダイナミックさとが違います。パワープレイギタリストだったと、このアルバムを聴いて、改めて思った。 |
IT BITES |
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名曲 |
名作中の名作。 軟派なポップバンドの出で立ちであっても、キーボードサウンドの厚みにはハードロックファンもぜひ聴くべきものがあったこのバンドだが、この作品に至っては全編、メタルファンを驚かせる内容となっている。 高速で突っ走るわけでもなく、また重低音がズウ〜ンと響くタイプのサウンドでもないが、エッヂ感覚の際立つスリリングなサウンドが身体向けではなく耳向け。 ヘタすれば腰の軽いアホノリと思われるようなポップスバンドとしての本領も、この切れ味鋭いサウンドをして程よい耳の肥やしとなるように感じた。 “Murder in the Planet Earth”は似た雰囲気すら思いつかない名曲である。 |
SAVATAGE |
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名曲 |
曲は次作“STREETS:ROCK
OPERA”のほうが良いと思うが、雰囲気構成でいえばこの作品がこのバンドの最高傑作になる。 デビュー時はかなりのおどろおどろしさで女子供をビビらせたこのバンドであるが、そんなおどろおどろしさが大作ゴシックホラー映画の雰囲気に昇華、出で立ちに重厚な格がうかがえるサウンドに初めてなり得た、ということで、昔から知っているリスナーからすればまさに拍手拍手の作品だった。 |
HAVANA BLACK |
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名曲 |
このタイトルにバンド名、すべて大正解のサウンド。 かつてのブラックフットもびっくり、完璧なるアメリカンサザンハードロックである。 加えて二ール・ヤングにも似た音の透明感。こっちは聞いて半泣きになった。 なぜこれがフィンランド出身なのか全然わからないが、天才っているもんだ、とただただタメ息の作品だった。 ロックマインドとかスピリットとかそんなもん以前に、すべての曲に心がこもっている。 以降、まだまだこのバンドはでかくなった。 しかし、1円とは...(絶句)(2013年5月現在) |
RUNNING WILD |
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名曲 |
おめでとう!の大出世作品。 今の10代のメタルファンにもぜひぜひ聴いてほしい名作。長い歴史の中でこういう作品が1枚あるだけでバンドの存在感はA級、という作品がこれ。オープニングからうわぁーっとなる。 全曲がヘヴィ・メタルアンセムで、しょぼいこれまでの作品から比べると一体何があったんだろうというくらいの、破格の変身ぶり。 コンセプトはデビュー時から一貫して変わらないヴァイキング路線、そしてセルフプロデュース。ここまでの作品を完成させて、この人たち自身バンド冥利に尽きただろうな。 |
GARY MOORE |
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名曲 |
これも意外に名作である。 ハードロックミュージシャンとしてのキャリアがこの作品で終わろうとは誰も想像すらしておらず、出たこの当時は高得点当然のベテランミュージシャン作品として、何とも積極性の薄い当然の満足感を持って聴いていたファンがほとんどだったんと思うが、以降ブルースマンに完全に転身なさったので、このハードロック時代最後の作品が、今や単なる懐メロには終わらないカラーを発散させている。 「ワイルド・フロンティア」同様、いやそれ以上に意義ある作品に思える。今から思うと。 |
ベスト10!
EZO |
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名曲 |
前作同様、録音場所をすべてアメリカへ移しての第2弾作品。 ただ、日本人が作ったカラーという独創性を強く押し出していた前作とは違い、とことん個性的であるにせよ、この2作目になると日本産やらアメリカ製といった印象はあまり感じられない。 ボーカルのえげつなさを抑えることによってスタンダードなヘヴィ・メタルらしさがグッと前に出てきて、武器よりも身体の全体的出で立ちそのものが光っているという最強ぶり。まるであのVOW WOWを彷彿とさせるワールド・メガロックである。 まるっきりアホみたいな感想であるが、オープニング“Love Junkie”の洋楽ぽさに感動した。 |
GORKY PARK |
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名曲 |
むっちゃくちゃハマったアルバム。 モスクワで行われたメタルフェスティバルの余波で、ついに全世界ワールドワイドデビューを飾った、初の有名ロシアンメタルバンドがこのゴーリキー・パークである。 ボン・ジョヴィが全面協力ということで、何と幸運な連中だったのだろう、というのは少し誤りで、これほどの力量を持った人たちなら、欧米の最高級のバンドのバックアップを賜って当然だった。 全体的にかっこよさよりも聴き応えを重視したまさに「歌」の作品である。本当に世に出る価値のあった作品である。 今となってはピンと来ないが、ロシア、80年代のソ連は、今の北朝鮮と中国が合わさったような印象の、本当にわけのわからない国だった。 ジャケット裏にある「ゴルバチョフに感謝、このアルバムが世界へ進出できたのはあなたのおかげ」というクレジットが泣かせる。この作品こそ、活きたペレストロイカの実例だったのだ。 |
THE McAUREY SCHENKER
GROUP |
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名曲 |
ギターサウンドがここ何年の地味な印象を覆す結構な暴れっぷり。この年いちばんのギターアルバムであると同時に、歌心(ボーカルに限らず)というものが最大限に活きたスタンダード音楽作品だった。 80年代も最初のころなら、こういう作品が一般ヒットチャートのトップを取ることも十分考えられた。マイケル・シェンカー屈指のハードポップ作品“BUILT TO DESTROY”のさらに上を行く、大メジャーポップハードロック作品である。“Destiny”は10年に1曲の超・超名曲。 |
D.A.D. |
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名曲 |
1989年インパクト大賞のアルバム。 シングルでも大ヒットしたオープニングナンバー“Sleeping My Day Away”は名曲中の名曲である。当時、洋楽聴く人なら百人中百人全員知ってたくらいで、知名度の瞬間風速はまさに記録的だった。 この全世界配給メジャー作品に至るまでは、「カウ・パンク」なる名称の、マカロニウェスタン+パンクロックという変態的音楽性を個性としていたという下地があったが、アメリカ西部劇映画風の個性は景色はそのままに、音楽性は何とも哀愁味あふれるロンリーライダーのたたずまいに昇華しております。 こんなシンプルな音数でこんなんありかー!?と叫びたくなる。今でも、初めて聴く人には速効のインパクトがあると思う。 |
AEROSMITH |
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名曲 |
前作“PERMANENT
VACATION”ほどの派手さはなかったが、シブさ、年季をこれまでの作品中一番大きく感じさせた作品である。 アメリカンプロレス顔負けの暴れるリズムを武器に、奥義で魅せる、聴かせる、踊らせる。聴いた後の満足感が普通と全然違う。年季のお祭り、シブさの狂い咲きとでも申しましょうか、どうしようもなく強いオヤジロックである。 |
LILLIAN AXE |
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名曲 |
“All's Fair in
Love and War”、いい言葉である。英語のことわざらしい。 バンド名は当時は女々しい響きがあったが、ファーストアルバムからズゴ〜ンと化けた。このクラスのバンドにしては信じられないくらいの名曲集だった。 広く伸びのあるメロディーラインはどのバンドをも思わせないオリジナリティー。メロディーラインは勇ましいというよりその逆、透明で繊細であるが、かといって線が細いわけではなく、たとえるなら「病んでさえいなければラオウもケンシロウも倒せたヤサ男トキ」のような雰囲気である。 |
KING'S X |
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名曲 |
「80年代ヘヴィ・メタル」と題した1冊の辞書を作ったとしたら、その最後にはこの作品を紹介したい。という、そういうアルバム。 プログレッシヴスタイルの超新星か!?と観るのは当たってるんだかまだまだ底が浅い観方なんだか、本当の衝撃は2曲目に待ち構えていた。 "Over My Head".....「数あるロックの名曲もしょせん身体まで」と言い放つ恐ろしい曲である。脳みそが揺れる。あらゆるジャンルのバンドが名作傑作を数多く出したこの年、いちばんの名曲はこれだ、と断言できる。ヘヴィ・メタルもヘチマもない究極の爆裂ノリ。 その他さまざまなタイプの曲が並んでいるが、どのサウンドも、キングスX以外の何物でもない土台のデカさをどどどどと感じさせるから、まさに最強極上の天才ぶりと申せましょう。 名作は時間の壁を越えるから名作という。この作品が世に出てから20年以上の歳月が経っているなんて、誰が信じられるといふのであらふか。 |
第3位! |
SHARK ISLAND |
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名曲 |
手触りは軽めのアメリカンハードロックでありながら、今聴いても凄い名作。 この作品のただひとつの欠点といえば、売れなかったということ。 それ以外は、曲・テクニック・メロディーというはっきり見える部分から、うるさいマニアを唸らせる演奏のツボという見えにくい部分まで、すべて百点満点のサウンドと言える。私は一生聴いているだろうアルバムである。 再結成したときは「!!!!」と思ったが、アルバムは「??」だった。 |
第2位! |
FAITH NO MORE |
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名曲 |
インパクトだけでも物凄いものがあったが、その後がしっかりあったのだ、この音には。 余程の傑作以外ろくすっぽ聴きもせず棚に放り込む、飽きの権化みたいなこの私が、当時、寝ても覚めても、明けても暮れてもこれをひたすら聴きまくっておりました。 ポップありスラッシュメタルありラップあり、瞑想ありバイオレンスあり、出で立ちこそ立体チャンコ鍋みたいな音楽ながら、特に中盤の曲で聴けるような、聴き手の足底の地面もろともごそっとすくい取り、そのままぐーっと上へ際限なく持ち上げていくかのような盛り上げ方に、70年代ブリティッシュ/アメリカンロック神様の手法でしか聴き得なかったおそろしくスタンダードなものを感じた。 よくよく聴くと、パール・ジャム風の、70年代インスト中心スタイルに対する憧憬もうかがえるのである。見かけは軽そうでも実はものすごく太く重かった。 このバンドだけは普通の今風バンドではなかった。メタルリスナーに「ラップもあり」なんて書くと今昔問わず、まず悪い印象を持たれるだろうが、当時ロンドンで大旋風を巻き起こしたセンセーショナルな名曲“Epic”、これを聴いてジャンル分けの言葉が先に出てくるようでは悲しすぎる。 このバンド自体、メタルどころか、どのジャンルにも執着心など持っていなかっただろう。それでいて感じさせる大陸のように巨大なロック。「我こそジャンル」と豪語するこの音楽性に嘘偽りはない。 タイトルも秀逸! |
第1位! |
BLUE MURDER |
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名曲 |
もはやあり得ないと思ってきたハードロックの復権、当時20〜30代リスナーには涙涙の作品だった。王侯のハードロックである。80年代後半、堂々の歴史的名作。 ジョン・サイクスがこれほどの力量の持ち主だとは夢にも思わなかった。太いギターサウンドは細かい理屈抜きであり、歌など、師と仰ぐゲイリー・ムーアを軽く越えた。 ジョン・サイクスなる人をまったく知らない人が聴いても必ずやびびるこの圧倒感覚、ここにカーマイン・アピスなんて70年代の巨人がしっかり加わっているから、真正面から見ても後ろから見ても、まずその出で立ちというものがこれまでのメタルと違った。 これほどの押しの力を感じさせた作品は80年代メタル全盛期においても数えるほど。比較するなら70年代の巨人たちの名作群を持ち出すしかない。 “Valley of the Kings”はいまだ正座して聴いてしまう。もう音の津波、雪崩ですねこりゃ。 |