1989年
ロック編 (ハードロック、メタル以外)
いろ〜んなカラーの作品が揃った、
まさに90年代手前にふさわしい年でした。
アレを89年ベストアルバムだ...と思う私は
罰当たりな人間です。許してください。
個人的評価100点満点作品 全22枚
BAD BRAINS |
||
名曲 |
レゲエなんかも織り込まれた黒人4人組の爆音ロックバンド。 名ばかりのアホの評論家がお山の大将ぶって酷評しまくってたのがお笑いだったが、ハードコアギターに加えて、ならではのソウルフルな歌が入れば、途端に新しい音に聞こえた。 ヘヴィ・メタルが爆音謳歌のロックだとしたら、これは扇動一番のロックである。 立場的にどっちが上だとか、そんなことはどうでもいい。相対しているものだとも思わない。 とりあえずギターの爆音は、メタルファンにとっては目ん玉をひんむく衝撃があった。激しさにとどまらずこのザラザラ感が未体験だった。 RAGE AGAINST THE MACHINEの勢いあった時期の雰囲気も感じる。ウー!とかヌー!とか、肉食動物的なコーラスがとっても多いが、この迫力といったらヘヴィ・メタル以上。怒りのロックである。 特に90年代爆音ロックが好きな方には絶対におすすめ。 |
NEIL YOUNG |
||
名曲 |
オープニングにアンプラグドバージョン、ラストにエレクトリックバージョンという2バージョンが入っているタイトル曲は二ール・ヤング久々の名曲だった。 ジャケット、↑この、立った姿勢でアコースティックギター持っているという絵がまさにこのアルバムの雰囲気そのものだった。 |
JEFFERSON AIRPLANE |
||
名曲 |
マーティン・ベイリンとグレース・スリックといえば60年代アメリカンロック幕開け当時のメンツ。 日本ではそんなに大きな話題にはならなかったように思うが、アメリカではお祭りだった。巨人バンドの歴史的な復活である。 音も当然、偉大なるフォークロックスペシャルの89年版スタイル。ロックファンが聴けば、寝る曲は寝るが、"Solidarity"など、アメリカ音楽最高の位置に鎮座する奥ゆかしさを感じる。 |
TEARS FOR FEARS |
||
名曲 |
ダイナミック極まるあの名曲、"Shout"の第2弾を聴きたかったのだが、いくぶん渋く、それにかなり人類愛的にポップな音を聴かせてくれたアルバム。 ダイナミックな空気は薄れたが、結局奥ゆかしさは変わらず。アリーナ、スタジアムが似合うポップスバンドというのはなかなかいなかった。 |
STRAY CATS |
||
名曲 |
復活アルバム。デビュー時の盆踊り風景気の良さは少々抑え目に、誠に真摯なロカビリースタイルが展開されている。"Gena"の完璧なメロディーラインなど聞いてると、90年代ブライアン・セッツァーバンドの根がここにあるじゃないか、と思った。 |
THE FABULOUS
THUNDERBIRDS |
||
名曲 |
オープニングナンバーの電気サウンドぶりに驚いた。ZZトップの悪友みたいな音である。 ブルースロックと紹介しているところもあったが、こんなに景気のいいブルースなどどこにある。 キム・ウィルソン、別名アメリカのレッツゴーじゅんのオチャラケ的覇気が冴えまくる、東西無比のおっさんロカビリーロックスペッシャルである。 「レッツ・ロック・ディス・プレイス」である。これを越えられないで、若手バンドは5年も6年もそれ以上も苦労するのだという壁みたいなものを、ヒョイとスキップで跳び越えているような印象がある音。奥義のかたまりである。 |
NUCLEAR VALDEZ |
||
名曲 |
一応アメリカのバンドだが、音は完璧にラテンだった。どういうわけかメタル/ハードロックのジャンルに入れられていた。90年代、TRIBE
OF GYPSIESなんかが近い音だと思うが、あんなにミュージシャン然とした音ではない。 肉体的官能的リズムあふれる哀愁ロックといえば言葉が安いが、ボーカルの声質など、何をどう歌っても泣きの哀愁一直線になっている。 このジャンルの代表格、ラテンロックの数々と比べたら、かなり精神年齢が若く、当時風の音としては満点級の作品だった。 ただし、激しいのが好きなロックファンが聞くなら2、3曲が限界かもしれない。 |
PUBLIC IMAGE LIMITED |
||
名曲 |
このバンドのこのバンドらしいアルバム、79年の"METAL BOX"や81年の"SYSTEMS OF ROMANCE"はもはや100%、ロックとは呼べず、いまだ人間の聴く音楽か?と思ってしまうが、変態も、食い合わせの悪いものでも食えば、かっこよく見える瞬間もひょっとしたらあるかもしれないということで、86年スティーヴ・ヴァイ参加の"ALBUM"や89年のこの"9"、えらいカッコいいサウンドがちゃんとこうしてあるのだ。 |
RED HOT CHILLI
PEPPERS |
||
名曲 |
一般ロック的にはこの年いちばんの名盤だった。 音的にはファンクロック+メタル。これ聴いて一気に目覚めたメタルリスナーも多いと思うが、この作品のインパクトと充実度はそんな小さなところにとどまらない。 ポップスファンにもソウルミュージックファンにも、メタルファンにもパンクロックファンにも、いやそれどころか、白人にも黒人にも、男にも女にも子供にもおっさんにも、地球人にも宇宙人にも、それぞれ一人ひとりが持つ音楽の趣向という「居間」の中にずいずいと侵入してきて、そしてその中で大きな顔してドベーと寝そべった、そんな作品だった。 |
DAN REED NETWORK |
||
名曲 |
この作品は当時主に欧米で異常なまでの盛り上がりを博したが、音自体はメタルではない。 レッド・ホット・チリ・ペッパーズあたりと同様ファンキーなノリが活きる、ハード・ダンスミュージックである。あんまり濃い音でないから受けたのか。 メタルリスナーもすんなり入っていける世界である。次にボン・ジョヴィ級のロック作品を作ってくれそうな予感を感じさせるような、そして、実際はそこまで行かずとも、近いアルバムを造ってくれたバンド。 路線より先に立つのはやっぱりメロディーで、向こうのリスナーは新しい手触り以上にそこを認めたんじゃないだろうか。 |
THE ROLLING STONES |
||
名曲 |
このオープニング曲だけは何とも白々しいというか、老齢の冷や水、そこまで元気を出さんでいいじゃないかという曲であるが、結局、このアルバムは名作だった。やっぱり凄いオッ様たちですわと感激。 チャーリー・ワッツが特に元気で、確か娘が嫁より年上だという複雑な家庭も、この元気があれば何だって乗越えられたに違いない。"Hold on to Your Hat"が齢50近いおっさんたちのロックに聴こえるか!? ラスト曲はキース・リチャーズ最高の名演。 |
WARREN ZEVON |
||
名曲 |
"Run Straight Down"はこの年のベストチューン。素晴らしすぎる。何ロックと呼べばいいのか、この音楽性そのものはウェストコーストAOR+シワガレ声+フットワーク軽い、というスタイルであり、他にもいい曲があるけど、とりあえず"Run Straight Down"、型に収まらない本当にミラクルな曲だった。 |
NEAL SCHON |
||
名曲 |
アメリカンロックの代表格、ジャーニーのギタリストのソロ作品。 まさにタイトル通り、夜の音楽である。かといってAORなのかといえば全然そんなことなく、簡単に言えば、例えばHR/HMバラードナンバーでよく聴けるメロディアスなソロの集大成みたいな感じである。 あれやこれやと副業の多い人であるが、実際どれほどの技量を持った人なのかはこの作品で一聴瞭然。 劇的な「動」をも呑み込む「静」の醍醐味である。 |
TOM PETTY |
||
名曲 |
70年代からの長い活動を経て、初めてのソロ作品がこれである。 確かにハートブレーカーズ共同名義の作品と雰囲気は違うが、聴き応えは全く同じ。冒険を要求されない大御所ミュージシャンならではの味だった。 プロデューサーがこの時期忙しマン大賞ナンバー1、ELOを解散させた直後のジェフ・リンで、プロデューサーというより、これはほとんど共同作品の様子を呈している。 知る人ぞ知るトラベリング・ウィルベリーズあの余韻たっぷり、ポップロック教科書的サウンドが真正面に出ている王道サウンドである。 トム・ペティー的アメリカンサザンロック風テイストは、ここの場合隠し味といった雰囲気。 |
HOOTERS |
||
名曲 |
感動の名曲集。もう、さすがである。 10年、15年くらい前であるが、知り合いの外人が家でパーティーやって、私はそこへこのアルバム、前のアルバム、次のアルバム持っていって、それで全員朝まで馬鹿踊りだったら絵になったものを、なんたることか、全員に総スカンくらったことがある。わははは。笑う。 この旋律が響かない人たちがいるなんて、誠に悲しい。 ファーストアルバムの時点から「一生ハズレなし」の保証マークを感じさせた天才バンドであるが、牧歌調ロックメロディーも目新しさを過ぎた感のあるこの時期、マンネリどころかもうアメリカ国民の唱歌と言っていい格と深みを感じさせるものとなっていた。音楽の存在感はボブ・ディラン級である。 なんか、これにめぐり合ったただそれだけのことを感謝したいような音楽である。 誰でもそう思うとは言わないが、このバンドを好きな人のしあわせ具合が他のバンドの場合と全然次元が違うのだ。 |
THE POGUES |
||
名曲 |
呑んだくれ楽隊ロックバンド、ポーグスの“IF
I SHOULD FALL FROM GRACE WITH GOD”に続く、これもまた名作。 メジャーの舞台においては「お初」のイメージがあった分、前作こそ名作という気もするし、実際そう観られているが、このアルバム、聴き応えに充実度はまったく前作と同様である。 オーケストラもしっかり活きまくっている。前作が名作と思う方は何がなんでも聴いておいてほしい作品。 マイナーチェンジした部分としては、ロックらしいアレンジが強められていて、前作にはなかった迫力がある。 生楽器がちっとも狙った路線ではないのだ、このバンドの場合は。ホーンセクションもそう。 各楽器これといった見せ場、聴かせどころがないようでいて、サビのメロディーの後ろで派手に鳴る一体感がいちばんの聴かせどころ。ひとつでも欠けたらこの迫力はない。バンドたるものは何かを教えてくれる。 踊ってアホになって聴くも良し、目をつぶって浸り切って聴くのもよし。ねえちゃんと聴くのも良し、家族といっしょに聴くも良し。あらゆる聴き方を許してくれる音楽である。 「自然派」を自称する日本のミュージシャンの誰かさん、さりげなくこのバンドの技をパクって偉そうにするな。恥ずかしくないのですか。 |
TREVOR RABIN |
||
名曲 |
今現在はハリウッド超大作あたりの映画音楽家になってらっしゃって(「アルマゲドン」や「60セカンズ」などなど)、その前80〜90年代は堂々イエスのブレインとして活躍していた。イエスの活動と並行してリリースされたのが、この久々のソロ作品。 内容はさすがというか、のちの、ロックバンドを越えた世界人としての活躍を予感させる、まさしく80年代最後のミュージックパラダイスである。 大元では同じかもしれないが、イエスの何倍もわかりやすく、真に大衆的なサウンドである。ハードコア以外の要素がすべて詰まっている。押しあり引きありの音楽性、泣きあり笑いありの映像、その他、隅から隅まで最高の大衆性があり、本当に映画みたいなロックである。 |
THE ALARM |
||
名曲 |
売れているアコースティック、そのほとんどが都会人の息抜き専用であったこの時期、まだそれならいいのだが、都会人の癒しのためだけにあるような、しっかり都会という場所の人工物ばっかりで、アコースティックが早くも嫌になってきた。90年代になる前である。 カッコばっかりつけて勝手に気疲れしてるような連中がよく吐く「癒し系」なんて流行り言葉も、今では死語であるが、あれには犬のうんこでも投げつけたくなった。 そんな連中専用、田舎を荒らすだけ荒らして必ず都会へのこのこ帰ってくるアホ人間の傷心旅行のBGMみたいなアコースティックロックが多かったなあ。 このバンドは、デビュー時から1、2年ほどはジャンルの殻を破れない小粒のサウンドだったように思うのだが、90年代も近づくにつれて、音楽性は破格にスケールアップしてきた。 アコースティックの武器はもちろんギター1本という絵だが、そこにこだわらず効果的と思われるあらゆる楽器を総動員させているところが、かえって好感が持てた。要はスタイルではなくメロディー。真の牧歌的音楽である。 「山」の歌は広大な自然が前に、「河」の歌はまさしく大河を前に感じるこのストレート感覚。安い涙などここにはない。ただただ広い道が頭の中に作られる、そういうロックである。これが真にアコースティックのサウンドなのだ。 名曲“Rivers to Cross”に新しい音楽観を授かったような気さえした。 「ゲール語バージョン」なるものも当時は日本盤でリリースされた。 |
BILLY JOEL |
||
名曲 |
「文章」ではなく、アメリカ史を語る固有名詞が最後まで、これでもかとずらずら並ぶ“We
Didn't Start the Fire”は、アメリカロック史に残る名曲中の名曲である。 高校生のヒアリングテストにピッタリやったりして。 よくまあこんなすごい曲が作れたものだ。曲が先にできたのか歌詞を先に考えたのか、英語の韻のオールマイティーさが羨ましくさえ思える。この曲1発でこの人がアメリカの永遠のヒーローたる理由がわかる。じっくり歌詞を見てほしい。 個人的にいちばん感動したのは海の男の物語“the Downeaster Alexa”。御大がピアノではなく、アコーディオンを抱えて歌う究極の哀愁曲である。 何が凄いといって、よくよく聴けば、実際ハードロック級に音が太いのだ。こういう音感覚は「ナイロン・カーテン」(「グッドナイト・サイゴン」あたり)以来である。 歌心だけを重視した音作りでいいものを、力を大きく感じさせるこの演奏。歌もそれに煽られている部分も多分にあり、まだまだこの人はロッカーなんだなと思わせた。 時代と真っ向に勝負したサウンドだった。名曲のオンパレード!! |
第3位! |
XTC |
|
名曲 |
80年代初期から熱狂的ファンの多いXTC、久々の黄金ポップス復帰作品である。 何とか門下の詩人が禁忌としていた趣味性がどうのこうの、超越するアンビバレントがどうのこうの。 というのが、当時のこのバンド評である。ええかげんにせー、わけわからんわい。 日本盤にもくそ面白くも何ともない小難しいことばっかり書いあって、しらけるが、音そのものは小難しい印象はゼロで、難しい音楽じゃないのに難しいこと書く人がいるということが滑稽だった。未聴の方はこわがってないで是非是非聴いてほしい。 2曲目“Mayor of Simpleton”、「シンプルトンの市長さん」はまるでクマのプーさん町へ行く、みたいなのどかさが嬉しい名曲。 何がアンビバレントか、これは子供時代を思い起こさせてくれるような、素直でまっすぐなアルバムである。このひねくれたバンドが、よくもやってくれたもんである。 これほど理屈抜きのロック、ポップスもない。 |
第2位! |
JEFF BECK, |
|
名曲 |
80年代屈指のインストロック作品。オープニングを聴いたあたり、何か効果音サウンドの寄せ集めのような感じがしたが、聴いていくうちにそれが強固なリズムを形成しているのに気がつく。 ヘヴィ・メタルでもハードロックでもないのにこのパワフルさ、ド迫力は何なんだろう。 音のひとつひとつがハンマーとなって、テンポよく聴き手の聴覚を叩く。メロディーが主役じゃなければリズムにすべて道を譲る、この組み立てがまさしく名人の極め技。 インスト作品にしてはあまりのメロディーの出番のなさが異色で特殊であるが、そのメロディーにしても、数少ない出番でかえって凄みが出ている。“Stand on It”には気絶した。 収録時間もCDにしてはかなり短いが、これでいて全然構わない潔さを感じた。職人の一球入魂仕事である。ここまで魂を張った作品、なかなかありませんぜ。 |
第1位! |
TRAVELING WILBURYS |
|
名曲 |
本当に申し訳ない。すまん。すんません。 これ、海賊盤です。 海賊盤でも、ライブじゃなく、幻の"VOLUME 2"である(正式ディスコグラフィーは"VOLUME 1"と"VOLUME 3"のみ)。 ボブ・ディラン、ジョージ・ハリスン、ジェフ・リン、トム・ペティー、ロイ・オービソンによる、全然覆面かぶってなかった覆面プロジェクト。 オールディーズ「悲しき街角」が有名なデル・シャノンをメンバーに加え再び活動を始めたこの2作目だったが、完成間近にしてデル・シャノンがピストル自殺、そしてお蔵入りになってしまった。 希少価値だけだったら絶対紹介しない。 これが本当に、VOLUME1もVOLUME3も上回る、とてつもない名作なのだ。わざわざお蔵入りにした、それも未だに世に出ていないのだから、海賊盤など手に入れて、紹介などしてしまって、デル・シャノンに本当に申し訳ない。 いつか世に出ることを祈って。 "Runaway"はご存知「悲しき街角」、これがとてつもなく豪華なアレンジであり、そして"Crying"はロイ・オービソンの"Oh Pretty Woman"に並ぶ大ヒット曲、"Under the Red Sky"はボブ・ディランの90年作品のタイトルチューンになったし、"Every Little Thing"もジェフ・リンのソロアルバムのオープニング曲となった。つまり、このアルバムはのちにしっかり生きたのだ。 それにしても、これほどの内容をお蔵入りにするとは。持っていてはいけないアルバムかこれは? 誇張抜きで、普通にリリースされていたなら間違いなくアメリカのヒットチャート、トップを取っただろう。 この幻のアルバムを私は苦労して手に入れたわけではない。お金捨てたと思って、大阪、難波の中古屋で1000円くらいで買ったのだ。 |