1990年
ハードロック、メタル編




個人事ですが、この年はロンドンで惰眠をむさぼっていた時期。
思い入れの深いもの、多いです。
ほとんどをロンドンで買いました。
グランプリはやっぱり! これしかないでしょう。


★★★★★星(個人的評価100点満点作品) 全34枚



34位!

BILL WARD
WARD ONE : ALONG THE WAY


名曲
"Shooting Gallery"
"Bombers"

 当時はまるで誰も注目していなかったブラック・サバスのドラマー、ビル・ワード好々爺のソロアルバム。
 しかしこれが、オジー、ザック・ワイルド、その他をしもべのように使いまくるどえらいアルバムを届けてくれた。ブリティッシュ・へヴィ・メタルとして雰囲気は完璧だった。メタルチューンと好々爺の趣味との落差が激しいが、忘れられないアルバムである。




33位!

BRUCE DICKINSON
TATTOOED MILLIONAIRE


名曲
"Tattooed Millionaire"
"Dive! Dive! Dive!"

 初めてのソロアルバムがいちばんメジャーハードロック路線だった。ポップな音でもあったが、さすがこの人のキャラ、野生味が生きている。
 重厚に思えるオープニングだが、2曲目からこれでもかとフットワークの軽い曲が並んでいる。
 7曲目、モット・ザ・フープル70年代名曲中の名曲であるが、この曲がこの作品のアルバムの色を語っているわけではないにせよ、こういうことができるのがソロアルバムの醍醐味である。
 ソロで余計に沈む人もいれば、自分がリーダーとばかりにハイになる人もいる、これは後者の典型的作品。




32位!

WARRANT
CHERRY PIE


名曲
"Cherry Pie"
"Uncle Tom's Cabin"
"Train, Train"

 デビュー時は本当に嫌いなバンドで、このアルバムにしてもイメージというものがむちゃくちゃ軽く、相変わらず嫌いだったが、実際聴いて、ごめんなさいとアメリカの方角向いて謝った。えらく男っぽい激しいメタルサウンドである。SKID ROWほどゴリゴリの音ではないが、そのぶん「ハードロック」という下地で頑張ってるサウンド。なんせ、「トレイン、トレイン」である。70年代BLACKFOOTのカバー。 




31位!

SLAUGHTER
STICK IT TO YA


名曲
"Eye to Eye"
"Up All Night"
"Spend My Life"
"Thinking of June"

 VINNIE VINCENT INVASIONのハイトーンボーカル、マーク・スローターが結成したバンド。slaughter=猟奇殺人者、どれほどいかついスラッシャーかと思われたかもしれないが(実際カナダに同名のスラッシュバンドがいた)、slaughterは名前である。
 音のほうはVVIよりももっとポップで、音の跳ね具合も倍加したアメリカンハードロックサウンド。名曲"Up All Night"は跳ねて跳ねて跳ねまくり。印象としてはあのKIXに似てるかもしれない。意外にギターもかっちょええ。




30位!

RIOT
THE PRIVILEGE OF POWER


名曲
"On Your Knees"
"Runaway"
"Storming the Gates of Hell"
"Black Leather & Glittering Steel"

 各曲各曲の間に入る街の喧騒・人の会話等のSEがあまりに長く、そこがうんざりするが、個人的には大好きなアルバムである。
 特にオープニングナンバーのメタルサウンドとホーンサウンドとの合体は革命的だった。
 このホーンセクションを担当しているのがそのジャンルの神様、TOWER OF POWERのメンバー。雑誌の受けはとことん悪かったそうで。「メタルにラッパとはどうのこうのブウ」、そんなもの、耳の育ちが哀れ以外の何物でもない。これ聞いて心が動かないで、何が音楽ファンだ。
 走る曲、歩く曲、交互の組み合わせのようなスタンダードな構成である。真面目で真摯なメタルアルバム、というところはこのバンド、これまでのアルバムと何も変わらず。ただ、聴くときは長すぎるSEをカットして聴きたい。




29位!

EXTREME
EXTREME II : PORNOGRAFFITTI


名曲
"DEcadence Dance"
"Get the Funk Out"
"More Than Words"
"It('s a Monster)"

 90年代いちばん最初に登場した、90年代メジャーハードロックを代表する名作。メロディーという点でも、器用さという点でも満点級である。
 ファーストアルバムからすればやっぱり大きく化けた。この時期クイーンのブライアン・メイと親交が深かったそうだが、クイーンに似ているというサウンドではない。ただし大きなインスピレーションを受けたのだろう、メタルの発想を超えたメタルサウンドが詰まっている。
 アルバム中何回も登場してくる、パッパカパッパカと誠に景気良さそうなホーンセクションが武器である。こういう音が一気にジャンル化しそうな勢いすら感じた。
 ヌーノ・ベッテンコートのバカテクが光る作品、という紹介がよくされていたが、テクニック云々よりもアイデアが素晴らしいギターサウンドである。
 5曲目“More Than Words”は一世一代のバラードの名曲。べちゃーっとしていないところが素晴らしい。当時大ヒットした一発屋STEELHEARTの"She's Gone"などより、こっちのほうが数倍素晴らしかった。




28位!

ZAR
LIVE YOUR LIFE FOREVER


(レア盤になってます...)

名曲
"Heart of the Night"
"Live Your Life Forever"

 TOMY CLAUUSなる人物のバンドであるが、それはどうでもいいと言ったら怒られるか、しかし! ボーカリストがかのジョン・ロートン(LUCIFER'S FRIENDSの)。こんな場所で復活してくれた。
 存在感で言えばマイナーバンドがメジャーの音を出している、程度のものだったかもしれないが、内容的にジョン・ロートン堂々の復活!と紹介していかほどの不都合があるのか。硬柔自在のギターサウンドが唸るジャーマンメタル、そこにジョンさんの澄んだ歌声が縦横無尽に舞っている。
 残念ながら1枚きりでジョンさんは脱退、以降ソロ活動に入る。




27位!

MANITOBA'S WILD KINGDOM
...AND YOU?


名曲
"the Party Starts Now!"
"Haircut and Attitude"

 MANOWARを脱退したギタリスト、ロス・ザ・ボスが加入したバンド。ロス・ザ・ボスのバンドではなく、70年代にTHE DICTATORSというバイオレントハードロック+ポップ度もかなり高しというバンドがいて、そこのリーダーDICK HANDSOME MANITOBAという激しい名前のオッサン主催のバンドだった。
 真面目な評などこいてると笑われるぞ〜!というサウンドである。漢(おとこ)テイスト全開のギャグマンガのような世界。
 メタルファンも喜ぶ硬いサウンドであるが、しかし至ってポップである。色物か本物かと聞かれると、限りなく色物に近い本物だろう。
 いや、限りなく本物に近い色物かもしれない。どっちでもいい。
 これ1作で終わったのが残念。




26位!

WOLFSBANE
ALL HELL'S BREAKING LOOSE DOWN AT LITTLE KATHY WILSON'S PLACE


名曲
"Steel"
""Paint the Town Red"
"Hey Babe"

 えらく長いタイトルの、5曲入りミニアルバム。
 これがまた、やたらにかっこいい曲が詰まっている。前作の変態メタルが成りを潜め、ただただ単純にかっこいいメタルがどおん!と前に出ている。
 ロンドンのど真ん中に当時あった、MARQUEEでフツーの観客としてきていたこの人と話してもらったことがある。眼光めちゃくちゃ鋭い割に、かなり人の善さそうなにいちゃんだった。
 ロンドンだけにいたもんで、よくミュージシャンに出会った。メタルの聖地が(当時)MARQUEEだった。ミュージシャンはステージのある日、平気でそのへんを歩いたりしていた。
 私は日本人だから、当然英語はへたくそだったが、それでも話をしっかり聞いてくれた人のことは今でも覚えている。ちゃんと話聞いてくれない奴もいたが。




25位!

CHROME MOLLY
SLAPHEAD


名曲
"Shotgun"

 ロンドン生活中では毎日のように雑誌、店でメタルはチェックしてたが、これは知らんかった。
 LITTLE ANGELSなんてバンドが大きく注目されていたこの時期、同じようなスタイルを持っているこのバンドに、どうしてお鉢が回って来なかったのだろう。
 マイナー丸出しだったファーストアルバムあたりとは大きく出で立ちを変えており、4曲目"Shotgun"あたりを聞くと聴くと、人気のなさが気の毒に感じた。
 跳ねる音の感触がメタルバンドのメタルらしさに迫っている音というか、(当時)今風の新生ハードロックとはこれだ、というカラーを大きく持っていたと思う。
 アルバムタイトルの意味は「張り頭」だか「張られ頭」だか、音も本当にそういう印象である。
 もはやメタルでもなんでもないこの音かもしれないが、傑作である。LITTLE ANGELSが好きだったリスナーは探してでも買ってほしい。




24位!

QUEENSRYCHE
EMPIRE


名曲
"Best I Can"
"Empire"
"Silent Lucidity"

 名作中の名作"OPERATION:MINDCRIME"(88年)に続く作品として大きく注目されたが、パート2と名打っていない以上、期待外れと評するのは酷である。メタル度以上に映画音楽風のきれいな絵があちこちでうかがえ、メロディーについては世界一の風格すら漂う作品である。
 しかし前作のようにポップではないので、親しみを重視するリスナーとしないリスナーとでは評価が違うだろう。しかし"Silent Lucidity"の美しさときたら、映画音楽級。




23位!

人間椅子
人間失格


名曲
“針の山”
“あやかしの鼓”
“ヘヴィ・メタルの逆襲”

 これは本当にインパクトあった。
 いろいろなバンドをデビューさせようという、雑誌主催のイベントがあって、そこからデビューしたのがこのバンド。
 当然色物中の色物で、メタルファンどころかたくさんの日本ロック好きにもソッポを向かれていたようなバンドだった。まことちゃんの梅図かずおとステージで踊っていたのだ。
 ところが肝心要のCDを聴いて絶句。
 まず、気持ち悪いSEに続いて、BUDGIEの"BRENDFUN"のカバー、歌詞をまったく変えて(もちろん日本語)オープニングでやっとる。
 そしてこれをヘヴィ・メタルと呼ぶかどうかは聴いた人の感性によるが、しかし私は最もジャパニーズなメタルスタイルだと思った。
 歌詞だけではなく、曲調が「墓場の鬼太郎」風のイメージで占められている。
 おどろおどろしさだけしかないようなサウンドであり、ブラック・サバス初期の作品がヘヴィ・メタルの古典なら、このアルバムだって堂々とした、正統派ヘヴィ・メタルと思って何がおかしい。
 そういうファンがたくさんいると思うが、私はこのファーストアルバム以降今に至るまで、ずっとアルバムを買い続けている。今でももちろん、日本一好きなメタルバンドである。




22位!

JAGGED EDGE
FUEL FOR YOUR SOUL


名曲
"Out in the Cold"

 このファーストフルアルバムで解散、以降ギタリストはSKIN結成へ、ボーカリストはSKINTRADEへ、そして残りはブルース・ディッキンソンのソロ用バンドへ行った。
 SKINを知ってらっしゃる方はもう、まさにSKINの前身と思って正しい、そのまんまの音である。ブルージーハードロックという便利な言葉があるが、実際ブルースロックお決まりの展開は出てこない。要は激シブハードロックスタイルである。どこかポップな曲が素晴らしい。"Out in the Cold"はほとほと素晴らしい名曲である。




21位!

PANTERA
COWBOYS FROM HELL


名曲
"Cowboys from Hell"
"Primal Concrete Sledge"

 この先の90年代メタルが渡っていく大きな道を作った、名作中の名作。
 異色の激しさ、新しさ以外に、80年代メタル眼で好意的に評価できる部分は少なかったかもしれない。
 この時点では「しっかり歌うがメロディーレス」という歌に鋭さを感じた。ただ、どうもカクカクしたノリにこっちもリラックスして聴くのに限界がある。メタルをリラックスして聴いてどうするんじゃい、と言われればその通りだが。




20位!

VICIOUS RUMORS
VICIOUS RUMORS


名曲
"Don't Wait for Me"
"World Church"
"Hell raisers"

 これを聴けばいまだに、ロンドンの今は亡きSHADES RECORDSの薄暗い店内を思い出す。外国人(アジア人)には徹底的に愛想がなかったとんでもない店。普通に何か聞いてるのに筆談で返してくるオッサンがいた店。
 このアルバムだって筆談で教えてもらった。
 名曲といえばオープニング1曲だけかもしれないが、しかしこの男度胸、矜持のメタルサウンド。これを大音響で鳴らせば、その場所がどこであっても「メタル専門店」になってしまうような音である。
 カッチョええーーーーー!!




19位!

AXXIS
AXXIS II


名曲
"the World Is Looking in Their Eyes"
"Save Me"
"Little Look Back"

 これはかなりの傑作。このバンド最高傑作かもしれない。北欧ポップメタルらしき透明感もそのままに、メロディーもメタル度も5ランクくらいアップ。繊細さが薄れた分、ジャーマンメタルの新星と称されて当然の出で立ちになっていた。
 "Little Look Back"はバラードでもないのに感涙の名曲。バラードじゃないのにじ〜んと来る曲が多い。このバンドは。




18位!

AC/DC
THE RAZOR'S EDGE


名曲
"Thunderstruck"
"Fire Your Guns"
"Moneytalks"
"the Razor's Edge"

 この時期から80年代の名作を例に出し「パワーが衰えた」と厳しい評を浴びせかける評論家が増えてきましたが、何を言うやら、老いたのは評論家の耳なのである。
 有望な若手に押されて存在感は薄れてきた時期かもしれないが、確かにジューダス・プリーストに張り合うようなメタルゴッドの出で立ちではないにせよ、AC/DCはそもそも最初から、そういうバンドではない。
 歳相応に枯れた味わいに、何かほっとしたような雰囲気も感じられた。ロックは10代のリスナーのためだけにあるのではない。
 名曲“Thunderstruck”の躍動感は感動モノ。1990年ベストチューンでである。




17位!

DAMN YANKEES
DAMN YANKEES


名曲
"Coming of Age"
"Bad Reputation"
"High Enough"
"Damn Yankees"
"Piledriver"

 テッド・ニュージェントにトミー・ショウ(STYX)、ジャック・ブレイズ(NIGHT RANGER)という90年代アメリカンハードロックその頂点といっていい豪華なメンツにサウンド。
 「再結成」バンドなど1作だけのイベントにとどめておいてほしい。と思うときもある。こういうロック界の巨人たちによるニューフェイスが実際、いちばん存在価値があると思った。おそらくどんなロック好きに対しても「もう降参、勝手にしてくれ」と言わしめる、メジャーハードロックの90年代版最高傑作である。
 このメンツ通りまさにスティックス+ナイト・レンジャーみたいな音だが、テッド・ニュージェントの影が薄いと評するのは早計で、80年代の野人はしっかりと、このバンド以前にこういう音の作品ばかり出していた。(ラストの"Piledriver"のみ例外、野人サウンドでひとり気を吐きまくっている)
 頂点の存在がこういう音を売ってこそ、ロックは人間らしく暖かい、まっとうに真っ直ぐなものになる。
 人間らしいとは言えないメジャーロックの色をこのアルバムが軌道修正するとまでは行かなかったが、しかし真っ直ぐに音楽を聴くリスナーには、たかだか2000いくらのCDが永久の価値を持つ宝物となる。未聴の人はセカンドアルバムと同時に買いましょう。




16位!

VICTORY
TEMPLES OF GOLD


名曲
"Backseat Rider"
"Take the Pace"

 ヘヴィ・メタルというそもそも色気のない音楽が、生誕10何年ともなれば、素材の味というものがたくさんのリスナーに飽きられて、着ている服の色は何色か、やらメッセージは何かやら、二次的要素がそのバンドの顔となってしまう傾向が生まれてしまい、こういう「メタルの顔」というサウンドがマイナーのお宝的存在となってしまったのが残念無念。
 このケツどっしりの、100%ピュアなヘヴィ・メタル。メタルはこれでいいのだ。




15位!

NELSON
AFTER THE RAIN


名曲
"(Can't Live without Your) Love and Affection"
"After the Rain"
"More Than Ever"
"Bits and Pieces"

 これは有名な作品。ボン・ジョヴィのファーストみたいに特別な思い入れを持っているリスナーもたくさんいる。
 ハードポップの記念碑、万国共通教科書のようなサウンド。曲がなんせ感動的に素晴らしい。何枚もアルバム出しているが、このファーストを超えたアルバムはないと思う。
 出た1円!(2013年5月20日現在)




14位!

KING'S X
FAITH, HOPE, LOVE


名曲
"We Are Finding Who We Are"
"I'll Never Get Tired of You"
"Moanjam"

 メタル的には前作よりも結構(というかかなり?)退屈なアルバムかもしれないが、しかしリアル・KING'S Xが確立したのがこの作品。目で見てもわからないから耳で聴く、という3次元絵画のようなサウンドである。
 "I'll Never Get Tired of You"の暖かさ、人間らしさはポピュラーロック側から見ても猛感動もの。"Mr.Wilson"は、走らないが、前作収録の歴史的名曲"Over My Head"につながっているKING'S Xオリジナリティー満開の名曲。




13位!

LOVE + HATE
BLACKOUT IN THE REDROOM


名曲
"Blackout in the Redroom"
"Rock Queen"
"Tumbleweed"
"Fuel"

 これはまあ、私がめちゃくちゃ好きなバンド。ロンドンで見たライブ、凄かったの何の。ロックンロールメタルの最高峰バンド&最高峰アルバムである。
 よく聴けば(いやよく聴かないでも)いろんなバンドの技をパクっている。結局は完全に自分のサウンドにしている。ものすごい厚かましさである。




12位!

CINDERELLA
HEARTBREAK STATION


名曲
"the More Things Change"
"Love's Got Me Doin' Time"
"Shlter Me"
"Heartbreak Station"
"One for Rock'n'Roll"
"Winds of Change"

 まあこの名曲の多さ。正真正銘、CINDERELLAの最高傑作である。
 オープニングがかろうじてメタルと呼べるサウンドであるから助かったものの、全体的には激しいアコースティックロックという感じである。
 エレクトリックギターに力技で勝つ生ギター、という雰囲気の曲が多く、それゆえ名作だと思うのだが。単純にメタルカラーの薄さゆえ背を向けるリスナーも多かったと思うが、しかし向けた背の両肩をつかみ、ぐいっと真正面に向かせるサウンドである。




11位!

U.D.O.
FACELESS WORLD


名曲
"Heart of Gold"
"Blitz of Lightning"
"Faceless World"

 イギリスの週刊メタル雑誌では"FACELESS, HOPELESS"というとんでもない見出しで酷評されていたアルバム。
 あの時はお前ら脳みそハゲか!と言いたくなった。
 まず、走っている曲がほとんどないことがマニアの不満の一番の理由だったと思うが、しかし、U.D.O.史上いちばん曲が素晴らしい作品だと断言する。
 このアルバムがあるから、U.D.O.は凄く頭のいいバンドだと言えるのだ。
 外国で酷評され倒し、日本では好評だったという、特にロックンロールメタルではよくあったパターンであるが、しかしこれがロックンロールであるはずがなく、珍しいパターンだった。
 オープニング曲"Heart of Gold"、そしてタイトル曲がアコースティック感漂うミドルテンポである。鋼鉄の権化様の音としては確かに意外も意外、大意外である。
 ところが曲の素晴らしさが悪印象をすべて帳消し。特にこの2曲はバンドの枠を超え、バラードメタル?部門歴代グランプリに近い場所にある名曲中の名曲である。
 もちろんU.D.O.らしいメタルチューンもあるが、いい曲がいちばん目立つというのはジャンル関係なしの現象だから、よくぞここまでの冒険をしたと思う。
 17曲も収録されているベスト盤で聴いても、本当にこの2曲は際立っている。




ベスト10!

10位!

ALICE IN CHAINS
FACELIFT


名曲
"We Die Young"
"Bleed the Freak"

 さすがに異形のハードロック。スラッシュメタルも一歩下がる強烈な音である。爆風を感じる。オープニングナンバーはまさに90年代のニューヘヴィ・メタルというインパクトがあった。
 ギャギャギャギャッと鋼鉄をこするようなギターリフがメタルファンには一番の聴き所。100%ミドルテンポ中心で、曲が全然疾走しないところ、メタルファンの好き嫌いが分かれると思うが。
 曲的に中盤少々退屈であるが、しかしこの空気をして名盤と言える。




9位!

LOUD
D-GENERATION


(プレミア盤、というより希少盤)

名曲
"D-Generation"
"I Am the Idol"
"Infatuation"

 一概にメタルとは呼べないスタイルだが、THE MISSION UKあたりがメタルリスナーにも非常に親しみやすいのと同様、このサウンドに打たれるリスナーも絶対多いはず。
 チャカチャカと鳴る電気音が決して邪魔に思えない。
 シャキッとした音の反りが素晴らしい。メロディー的にもかなりのもの。オープニングのタイトル曲、そして"Infatuation"は似た曲すら思いつかない異色の名曲だった。もう1枚出して解散、短命のバンドだった。




8位!

LARD
THE LAST TEMPTATION OF REID


名曲
"Forkboy"
"Pineapple Face"
"Drug Raid at 4 PM"

 MINISTRYなるインダストリアルメタルは、実際のところ「メタル」なのか、80年代終わりころからよく言われていたそうだが、そのMINISTRYがDEAD KENNEDYSの怪人パンクおやじ、ジェロ・ビアフラとともに組んだこのバンドこそ、メタルファンが泣いて喜ぶ、まさに正真正銘・一撃必殺のメタルサウンドだった。
 中には変な曲もあるが、ハイライト曲のインパクトがもう、並みではない。あまりのクールさに耳が落ちて地面で跳ねる。
 97年に久々の2作目"PURE CHEWING SATISFACTION"を出しているが、あれがまたこのアルバム以上にメタルだった。




7位!

RATA BLANCA
MAGOS ESPADAS Y ROSAS


名曲
ぜ〜んぶスペイン語

 このセカンドアルバムで南米のレインボーと評される音楽性を確立した。線の細さが消え、大木一本のヘヴィ・メタルがどーんと完成している。
 2曲目なんかジョー・リン・ターナー時代のレインボーそっくりだが、さすがのスペイン語が格別の哀愁を感じさせる。その他にもレインボーの一瞬技を拝借したような曲があるが、3曲目を聴いてほしい。一番の聴きどころはやっぱり、このバンドオリジナルの激烈哀愁音である。ここまで来ればレインボーファンにはマストの作品である。狂おしいまでのメロディアス天国。レインボーの何倍メロディアスである。
 今現在でも活躍中だが、知名度のなさが嘆かわしい。
 アルバムのうち何枚かは日本盤もしっかり出ていたが、ある大きな店では「ワールドミュージック」の棚に目立たず置かれていたり、この音を聞ける場所がない。昔は輸入盤が大半を占めるメタル専門店で流れていたもんだが、そんな店もほとんど絶滅した。




6位!

YNGWIE MALMSTEEN
ECLIPSE


名曲
"Makin' Love"
"Save Our Love"
"Motherless Child"
"Devil in DIsguise"
"See You in Hell"
"Eclipse"

 出た当時は評判が良くなかったらしい。
 実は私はこのアルバムがいちばん好きだというヒネクレ者である。
 ロンドンの寒空の下、よくこのアルバムを聴いてたから、思い入れがこれをベストアルバムと思わせるのでありましょう。
 とにかく、音は100%北欧メタル化している。生まれは北欧の人なので、この音こそ最も自身に忠実な作品という観方も当時は間違いではなかった。
 オープニング"Makin' Love"なんて言って、こんなに寒い(しらけるという意味じゃなく言葉通りの意味)曲があるか。何という曲タイトルだ。
 顔が憎ったらしいイングベイまるむし、このアルバムのメロディーラインに限っては非常にヒューマニズムにあふれている。異色のアルバムであるのは間違いないが、名作である。




5位!

THUNDER
BACK STREET SYMPHONY


名曲
"She's So Fine"
"Dirty Love"
"Don't Wait for Me"
"Until My Dying Day"
"Backstreet Symphony"
"An English Man on Holiday"
"Distant Thunder"

 ロンドンで観て、一番素晴らしかったライブがこのバンド。アルバム買って間もなくライブを観て、それはもう、気絶級に素晴らしかった。
 あのときはほとんどこのバンドのことを知らずに観たが、かのTERRAPLANEの再編バンドと、隣にいた知らん奴に聞いて、ひっくり返った。
 あまりに感激して、それにあまりに長くその感動が続いたもんで、こっちに帰ってきたら知り合いという知り合いにこのアルバム薦めまくったのだが、誰も「良い」と言ってくれた奴がおらず、本当にガックリきた。
 日本向けの音じゃなかったということか。
 慟哭のバッド・カンパニーみたいなサウンドである。どう聴いてもこのファーストがいちばん出来のいい、いちばん奥の深いアルバムだと思うが。
 泣き咽びまくるバラードロックが印象的であるが、しかしハイライト曲("Dirty Love"とか"An English Man on Holiday"とか)はロンドン界隈、のどかなロッカーの日常という感じで、こういう空気は絶対に他のバンドでは聴けない。




4位!

SODOM
BETTER OFF DEAD


名曲
"An Eye for an Eye"
"Spitfire Defence"
"the Saw Is the Law"
"Bloodtrails"
"Better Off Dead"

 スラッシュメタルはついにここまで来た!というアルバムだった。売り上げ的にはまだまだメジャーとは言えなかっただろうが、このアルバムで格は完全にメジャーになった。今現在、このバンドに影響を受けているバンドがどれほど多いか。
 個人的にはTANKのカバー"Turn Your Head Around"に感動。
 この路線をずっと通してくれたら良かったのだが、90年代、このバンドはとち狂ってしまった。発狂してしまった。それでもついていくファンはついていったが、90年のこのアルバムが一番大きな音だったと思う。
 2000年近くになって人間性を取り戻したのか、再び大きなスラッシュメタルを天下に響かせた。




第3位!

SCORPIONS
CRAZY WORLD


名曲
"Tease Me, Please Me"
"Don't Believe Her"
"Winds of Change"
"Hit Between the Eyes"
"Send Me an Angel"

 1990年最高の名曲集。世界最高水準メロディアスバンド+メタルバンドの心意気、極上のバランスである。70年代伝説のスコーピオンズよりこっちのほうがずっと聴きやすい。新しいんだから当たり前か。
 "Winds of Change"は当時世界に向けて大々的に門戸を開放したソビエト連邦(今ロシア)について歌った感動的なバラードロックである。よほどの天才でもこれは真似できない。




第2位!

TIGERTAILZ
BEZERK

 

名曲
"Sicksex"
"Love Bomb Baby"
"Love Overload"
"Call of the Wild"

 ロンドンではいっときこの作品の盛り上がりは凄いものがあった。どの雑誌もどの雑誌も、表紙がこのジャケットだった。
 グラムメタルとか言われていたが、こんなストレートで楽しいメタルサウンドに呼び名は要らない。路線自体はファーストよりむしろすっきりしたものになっていたが、八方破れの突進力、弾け感覚が本当に凄い。オープニングナンバーはもう、なんちゅうツカミだと思った。イギリスもアメリカも日本もない。メタルもロックもない。ただただ聴いて興奮して、歌って暴れてハイおしまい。それでいて全然構わない、そういうロックもあるのだ。
 ちなみに2007年に出た"BEZERK 2"はあかんかったなあ...




第1位!

GAMMA RAY
HEADING FOR TOMORROW


名曲
"Lust for Life"
"Heaven Can Wait"
"Space Eater"
"Money"
"Heading for Tomorrow"

 90年代ヘヴィ・メタルグランプリ作品。
 公式サイトには89年リリースとあったが、ロンドンでこの新バンドのアルバムを買ったので、リリースは90年で間違いない。
 数々のジャンルから名作が出た1989年、それらの音がこのアルバムに集約した。そこまでの雰囲気がある。
 まだ知らない人に紹介するなら、端的に言ってジューダス・プリースト+ハロウィンみたいな音である。硬も柔も、マジもお気楽も、アホも真面目も全部このアルバムには詰まっている。このアルバムで初めてメタルにはまったという育ちの人は結構多いと思う。
 内容が素晴らしいのはもちろんだが、このアルバムには人を引きずり込むカリスマ性がある。多くの名作に欠けているものが、このアルバムで堪能できる。だから90年代代表作品と思う次第である。
 演奏してるのはジャケットにある通り、どこにでもいるフッツーの、おっさんくさいにいちゃんたちである。



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