1990年
マイナーメタル編
マイナーメタルの美点を描いたような作品は
この年も少なかったように思います。
RAZOR、PYRACANDAみたいな突貫一発サウンドを聴いて
早くも、80年代が懐かしいような感触を感じてしまった。
うつろひやすしメタル界、初めてそんな印象を持ってしまった
年かもしれません。
個人的評価100点満点作品 全10枚
MEZZROW |
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名曲 |
スウェーデン出身、これ1枚で消えた。 どこ切っても同じ音だというアルバムであるが、だからいいんじゃないかという、マイナーメタルの教科書のようなアルバム。その瞬間その瞬間のかっこよさだけでいいのだ。初期メタリカ風の重量感あふれるどスラッシュサウンドが最初から最後まで。瞬間最大風速がすっと続くような世界である。 |
HOLY MOSES |
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名曲 |
おそらく、このバンドの作品のなかではいちばんメジャー性が高い作品。これでも。 5曲目"Guns n'Moses"がごくマイナーな話題になったが、こんなお遊びは放っておいていい。 要はここに来て鬼のようなオーラを身につけたサビーナ嬢のドスボーカル、そしてメタルマニアが待っていたこの重量感である。わけのわからないエキストリームスタイルに転げていく一歩手前でムンズと踏みとどまったような、異様な緊張感と迫力がある。 |
BELIEVER |
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名曲 |
「クリスチャン・デスメタル」BELIEVERの2作目。音そのものはソフトなデス声に乗るシンフォニックスラッシュメタルという感じ。きっと神の啓示がどうのこうの、悔い改めねば何だかんだ、みたいなこと言っとるんでしょう。 力量的にはかなり高いものを持っていて、スラッシュメタルファンならこの走りにアンテナが反応すること確実。6曲目“Dies Irae”、女性ソプラノ入りのインストがいちばんの聴きモノで、セルティック・フロスト風のインパクトがあった。頭に何かかぶってお祈りをしたくなる。 ラスト曲"like a Song"はなんとU2のカバーであるが(“WAR”に収録されていた隠れた名曲)、これがビチッとはまっている。タダ者じゃないと見た。 |
CENTAUR |
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名曲 |
ジャーマンですが、これは北欧メタルファンに絶対のおすすめ。下手なのかうまいのか何度聴いてもよくわからないこのボーカルがえらくオッサンくさいが、全体的にはあのALIEN(スウェーデンの)がもっとアグレッシブになったようなスタイルである。 そういえばBISCAYAから様式美カラーをちょっと抜いたような感じもある。 どっちにしてもマイナーな話ですが、マイナーな作品なんだから仕方ない。 あまり重厚なサウンドではないが、しかし6人編成という大所帯が納得できる程度に手は込んでいる。 出た当時はまぁまぁいいんとちゃう?程度の印象だったが、90年代も半ばになって、80年代メタルに対する思い入れが盛り上がってきたようなときに久しぶりに聴いたこのアルバムは、誠に心に染みた。 |
BLITZ |
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名曲 |
謎のバンド。最後まで謎のバンドのままだった。Kerstin
Radtkeなる女性ボーカルがリーダーの5人組。この6曲入りミニアルバムという予告編のみで消えた。 この音の冴えていること。半音弛ませたギターリフといえば今では陰気メタルの得意技だが、このバンドはまっすぐ疾走してくれるもんだから、その個性的なこと。女性ボーカルも非常にパワフルで、当時は凄い新人が出てきたなあ、と思った。 |
C.I.A. |
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名曲 |
NUCLEAR ASSAULTのドラマー、グレン・エヴァンズのソロアルバム第1弾。 幾分ポップになったNUCLEAR ASSAULTみたいな音である。おふざけというほどふざけた音ではないが、真剣度の薄いNUCLEAR ASSAULTみたいな音。ソロアルバムというより、ゲスト陣もまったくのNUCLEAR ASSAULTの面々なので、いっぺん今度はオレに指揮取らせてくれんかの、という作品だろう。 あるいはNUCLEAR ASSAULTはちょっと激しすぎて勘弁、というリスナーにもこれなら十分聴けるんじゃないか。 ドラマーのソロというカラーは全然ない。スラッシュメタルファンにもおすすめ。バタバタがしゃがしゃと騒がしい音だが、ハードコアサウンド以前にメタル・ラブが感じられるアルバムである。 |
ARTILLERY |
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名曲 |
文句なしにこのバンドの代表作品である。 リリース時、日本盤では、湾岸戦争に考慮してこのバンドいちばんの名曲“Khomaniac”がカットされるという残酷な事態に。 そして歌詞カード手によく聴いてみれば、「お前らの聖戦は悲劇以外の何物でもない」「殺害は無意味だ」「結果はまさに地獄絵だ」...おもいっきり反戦歌じゃないか。ただただ話題になることを恐れる、キンタマの小さいアホはやはりどこの業界にもいる。 地下室で魔闘気がウネリ倒しているようなこのバンドの独特唯一の世界が、メタリカで有名の辣腕プロデューサー、フレミング・ラズムッセンのテコ入れで強烈にメジャーメタル化した。メタルバンドとしては誉れの姿といっていい、まさに無頼のスタイル。 東洋的音階がしょっぱなから多用されていて、誰が聴いても必ず頭にこびりつく凝ったメロディーラインが改めて、タダ者ではないと思わせた。この次が一体どれほどのものになるのだろうとメタルマニアは大いに期待したが、悲しいことにこれがラストアルバムとなった。 (10年後再結成したが)。 |
第3位! |
RAZOR |
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名曲 |
ジャケットはまさにマンガながら、このタイトル。「ショットガン・ジャスティス」である。タイトルだけで名作決定。最高にメタル映えしている。 もちろん中身もまさにそれで、金持ち集まる場所でボッカボッカと散弾銃ぶっ放してるような、グレートなサウンドである。お前らはもう、一生怒っとれ!とお墨付き与えたくなるようなサウンドだった。バイオレンス・スラッシュの金字塔である。 |
第2位! |
WOLFSPIDER |
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名曲 |
ポーランドからの刺客、といった感じで登場した上質のスラッシュバンド。 ポーランドといえばあのTURBOを生んだ国であるが、あまりの垢抜けなさがかえって大きな魅力になっていたあのバンドに比べ、こっちはスラッシュメタルというジャンルにかなり小慣れている印象があった。歩く・走る、語る・狂う、その使い分けが見事で、PYRACANDAとともに90年スラッシュメタル新人大賞に推したかったバンドだった。 この知名度のなさはあんまりである。当時は輸入盤屋界隈では結構話題になったアルバムだと記憶してるのだが。 |
第1位! |
PYRACANDA |
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名曲 |
アルバム2枚で消えたバンド、ついでに2枚目がかなりの駄作ときたから、無名であって当然のバンドであるが、しかしこのファーストは素晴らしかったぞ。 KREATORの、もっと輪郭をはっきりさせたようなサウンド。重量感、スピード感ともに申し分のないどスラッシュメタル。世界に響くスラッシュメタルはこのように行け!という教科書。 |