第1章


 BGM
 
http://www.youtube.com/watch?v=9P_KpFkznns


 しかし大須川の計画は、プロデューサーによって全否定されてしまった。
 社長は良くても、現場が許さないらしい。
 そんな人間ばかりを出して、いくらCS局であっても危険である、ということだった。それはそうである。

 出演したい80年代メタルファンを、なつかしテレビちゃんねるNTVで募集する。
 体裁は、男性女性、年齢、バランスよく混ぜられた視聴者との座談会、ということになった。

 だったらこんな話、受けるべきではなかった。
 大須川にも日当仕事である。大阪からの夜行バス交通費+昼食代別で、出演者より1000円多い11000円。
 そもそも、プロデューサーにやる気が全然ない。燃えているのは信楽焼きのタヌキがスーツを着たような、あの社長だけである。
 ただ、将来のない大須川にとって、顔を業界人に覚えてもらうことは、ひょっとしたら老後の生活に繋がるかもしれない。
 一旦断りかけて、やはり受けることにした。

 テレビ局がひとつの番組を作るのに、どういう過程を経るのか、大須川はよく知らない。
 しかし全予算11万円の番組だから、こんなものだろう、とは思った。
 食パンのような顔をしたプロデューサーは、ノリで最後までやってくれたらいい、と非常にいい加減なことを言う。
 曲は何を流してもかまわないということなので、大須川は選曲と、そして自分だけの台本を考えるのに一週間かけた。


 そして、番組収録の日。

 局が出演者の宿泊費をケチったために、朝の9時という時間に出演者が集合することになっている。
 番組は昼の12時開始。
 雑誌及びNTVでの告知により、選考された素人メタルリスナーが6人、すでに局に集まっていた。

 大須川は遅刻していた。
 何度も東京に来ているに関わらず、駅をよく間違える。ケータイで確かめればいいものを、何でもうろ覚えで動くからこういうことになる。
 この日もやはり電車を間違え、品川区、鮫洲近くにある局とは全然違う方角の駅で降りた。そしてタクシーで局に向かっている。
 
 前日、大須川には今日集まるメンバーの短いプロフィールが渡された。大須川はタクシーの中でそれを読んだ。
 名前、年齢、職業、そして応募の際の自己PRが書いてある。

 黒田武弘。52歳。娘2人の4人家族。地方の信用組合銀行員。
「リストラパワーで熱くメタルを語ります! 思えばヘヴィ・メタルに出遭ってもう35年。見かけは歳相応になってしまいましたが、熱い心は若い人間には負けません。この年齢になっても自らに課していることは、専らライブの参戦と...」 まだまだ暑苦しい自己紹介がA4用紙1枚にぎっしり。
 黒田。黒田武弘。どこかで見た名前である。大須川にはすぐには思い出せなかった。
 読んでいる時間がないと大須川は焦ったが、文章が長いのはこの男だけで、あとの5人はあっさりしたものである。

 高井勇気。26歳。独身。フリーター。
「現在のメタルは80年代のレジェンドの存在があってこそ成り立っている。多くのことを学ばせて頂きたいと思うのでよろしく」

 名倉優(ゆう)。37歳男。独身。システムキッチン開発会社営業。
「なつかしTVちゃんねるは開局時からずっと契約しており、毎月楽しみにしています。80年代文化リバイバルの発信者として、協力できたら嬉しいと考えています」

 藤村アビゲイル。22歳。独身。母親と二人暮らし。玩具メーカー会社員。
「お母さんの影響でメタルが大好きになりました! いっぱい聞いて、いっぱい話したいのでよろしく!」

 真壁のぞ美。34歳。独身。姉と二人暮らし。文房具メーカー会社員。
「80年代を中心に、幅広く聞いています。音楽は一生の友人です。宜しくお願いいたします」

 三上洋子。49歳。息子1人娘1人の4人家族。専業主婦。
「これはもう、あたしの出番ってことでしょ! 番組を盛り上げるためにだったら何でもします!」

 ...何とも濃いメンバーである。
 自分も濃いとよく言われながら、さてどうなることか。
 6時間の生中継、休憩を入れて合計8時間の長丁場を乗り切れるのかと、大須川は不安になった。


 NTVスタジオ3階、休憩室。
 大須川が遅れて入ってきた。

「おはようございます!すみません、15分も遅刻しまして。なんですか、いつまで経っても東京の電車はわからん。
 みなさん。私は司会進行役の如月涼、と申します。この顔で、涼ですわ。わははは!」
 誰も笑わない。
「...まあみなさん、そんな堅くならないで、リラックスしてください。収録時間は長いですから」
 細面の、表情の乏しそうな若い男が言う。「堅くなってません。今俺たち着いたところですから、いきなり高いテンションに持っていくことが無理だと思うだけです」
「難しいこと言うねえ、あんたは。あっはっは」
「全部1日でやってしまうんですね。台本とか、なしでいいのですか?」 会社から仕事を中断してやってきたような、制服姿の女性が言った。いや、最初からそういう服なのか。ファッションに疎い大須川にはわからない。
「一応進行は私が考えてきましたが、皆さんには台本はありません。
 曲をばんばん流します。そして自由奔放に、80年代メタルに関連した会話を絡めて行ってくれたらいいんです」
 ただひとり、メタル番組用に武装してきたような格好をした、しかしまるっきり主婦といった様子の女性が不満げに言う。
「あたし、コマーシャルで見て、ネットで応募したんですけど、あのコマーシャルの雰囲気じゃ、すっごい豪華そうな印象があったんですけど」
「実は私も、先週初めてこの局に来ました。なんちゅう。スッカスカのテレビ局やな、というのが最初の印象です。テレビ局といっても、民放のデラックスな社屋を想像するのは間違いなんですなあ。CS局など、よほど儲かってるところ以外は、単なる貸しビルの1フロアでも借りておればいいほうだそうですよ」
「違います、あたしが言ってるのは、番組が豪華そうなイメージだっていうこと」
「あのコマーシャルのフォーマットは使い回しだそうです。やかましくなさそうなミュージシャンの写真を使い、あの、ばんばん画面を泳いでいた多くのバンドのロゴマーク。ロゴマークだけなら著作権云々は問われないそうで。
 なつかしTVちゃんねる、NTVはご存じの通り、80年代文化専門のチャンネルです。各テレビ局の倉庫でホコリをかぶっている映像を安く借り、音楽番組ではいろんなバンドのPVを流してるだけですから、司会者、ナビゲーターって言うんですか? 話すスペースがあればOKという世界です。それはのちほど、みなさんにもわかるでしょう。
 正直、この番組には予算がありません。みなさんの日当・出演料、一人1万円を支払い、私は少し色が付いてて1万1千円。それが限界だそうです。笑いますよね」
 やはり誰も笑わない。
「昼飯はどうなるんだ?」 大須川と同年代の、太った中年男が訊いた。
「ほか弁です。ご飯は大盛りOKだそうです。軽食も出ます。あとで注文、聞きますので。あ、もちろん代金はいただきません。
 皆さんに案内が行っているように、収録は6時間、途中30分の休憩が4回入りますので、合計8時間の長丁場です。進行はシンプルです。
 音楽をかけます。私が解説を入れます。そしてみなさんが自由に話していただきます。
 この繰り返しだと思ってください。選曲には時間をかけましたので、みなさんが退屈することはありません。
 では、こちらからお名前をを確認させていただきますね。自己紹介をお願いします」

 NTVの専用ホームページには合計120名ほどの応募があった。
 選考には大須川も加わったが、それは自分が落とされ続けた無職時代の履歴書選考を想像させるような作業であり、嫌気が差して、社員に全部任せてしまった。

 こうして集まれば、バランスよく選別してくれたようであるが。

「では最初に、黒田武弘さん」
「はい」 大須川と同年代の、肥えたおっさんである。
 大須川は率先して拍手をした。他のメンバーも、おっとりと拍手をした。
「どうも。黒田と申します。いきなり自慢になりますが、私はレコード、CDを1万枚以上持っています。幸い嫁の家が裕福であり、私の稼ぎはほとんど趣味に消えています。その趣味とは、ズバリ、80年代メタルの全収集です。皆様も、知りたいことがあったら是非何でも訊いてください。今日は楽しく、情報を交換しましょう。よろしくお願いします」
「ほう、1万枚とはすごい」
「レコード、CDだけじゃなく80年代のツアーパンフや雑誌の類いも集めてますよ。冬、春、夏には必ず休暇を取って、海外に出かけます。観光旅行ではありません。ヘヴィ・メタルのお宝巡りです。それと、参戦ですよ参戦! 仰々しいコンサートなんかじゃなく、特にアメリカ、ヨーロッパでは夕方までは飲み屋で、夜からメタルのライブになるなんてところがいっぱいあります。そこそこ名のあるバンドが出てきたりするから、日本のリスナーの知らない世界ですよね。チケット代も1000円だとか。金の問題じゃないですけど。KERRANGのバックナンバーとか外国の雑誌まで手を出してるもんですから、もうきりがなくて。ははは。それに比べて、カジュアルとは言い難い日本のメタルシーンは何ですか。呆れますよ。確かに、ネット通販のおかげでメタルは買いやすくなった。マイナーメタルでもね。しかし買って、聞いて、オシマイ。聴き方というものがJポップ化しとるんですな。それに、むさ苦しい中年がメタルを大人買いするもんだから、若い人間はケータイ代が3万4万、CDなんて買えずに結局Jポップのレンタルに走ってしまう。嘆かわしいことです。ということはね、」
 大人買いするむさ苦しい中年はまさにアンタだろ、と思ったのはおそらく大須川だけではない。
 それにスマートフォンの今の時代、ケータイ代の感覚がおかしい。やはりおっさんはおっさんである。
 大体、話し過ぎである。
 改行も置かない話し方では、聞いているほうが疲れてくる。
「...となると、そこで90年代というのは、実は凄く浅い時代だった。時代は回転するとよく言われるが、回転のスピードが速すぎれば回転が止まっているかのように見える、そういう経験はみなさんにも...」
 黒田は話を止める気配がない。
 出演者たちは大須川をちょろちょろ見る。止めてくれということである。
「黒田さん、自己紹介ですから。詳しいお話は番組内で。
 では次の方、お願いします。三上、洋子さん」
 主婦が立ち上がった。ワッペンをたくさんつけたデニム。今日この日のために用意したようである。
「どうもー。三上洋子といいまーす。今じゃこんなおばさんになっちゃったけど、今でもよーく、コンサート行くんです。マイケル命です。マイケルジャクソンじゃないですよ。マイケル・シェンカーです。知ってます?」
 隣に座るOL風の女性に三上は問いかけた。
「はい、まあ」
 三上はいきなり席から立ち上がり、四股を踏むような体勢になった。
「こうしてね、ここにフライングV。おしっこ我慢してるような表情がたまらないのよぉー」
「あの、すみません、自己紹介メインでお願いしたいんですが。音楽の話は後ほど、たっぷりと時間取ってありますので」
「ほほほ。ごめんなさーい。ハタチくらいの時からずっとメタル、聞いてます。旦那大迷惑です。おっほほほ。今でもメタルはあたしの活力です。きっとおばあちゃんになってもメタルファンです、あたしは。自信あります!」 やはり着席する様子がない。
「わかりました。では、次の方行きます。名倉優さん」
 さらさらの長髪が、さぞかし金のかかりそうな美容院に通っていることを示している、礼儀正しそうな、30代後半とおぼしき男である。
 一昔前、ホストクラブによくこういう感じの男がいたが、名倉は夜の世界の空気はまったく感じさせず、ひたすら健康的な印象である。
「すみません、昨晩遅くまで仕事だったもんで、カプセルホテルに行って、そのまま来ました。名倉優といいます。仕事はお店の内装業の、営業をしてます。
 日頃はお客様に対し腰を低く下手に出て、笑顔を忘れない営業マンとして仕事しておりますが、ストレスの捌け口はもちろん、80年代メタルです。LAメタルからスラッシュメタルまで満遍なく聞いてます。よろしくお願いします」
 女性陣の顔が、少し紅潮している。
 これだから女は、という顔を露骨にしているのは黒田であるが、そこは大須川も同様の気分である。
 歳食ってもかっこいい見かけの男というのはいるのだ。特に東京によく来るようになってわかった。
「ありがとうございます。次。真壁、のぞ美さん」
 OL風の女性である。
「真壁のぞ美と申します。すみません、何か仕事中みたいな服、着て来てしまいましたが、同居している姉が、今日大事な場所へ行く用事があるとかで、私の一張羅を着ていってしまいました。
 こういう、番組の収録ですから、弾けた格好で行こうと思って、昔の服、捨てないで取っておいたものを押し入れから出したり、してたんですけど、朝になって急になんか、恥ずかしくなってしまいまして」
 大須川はにこやかに笑った。
 ずばり、大須川好みの女性である。
「見かけなんぞ、どうでもいいんじゃないですか。私だって見かけはこんなんですけど、心はメタルマンのつもりですから」
「ありがとうございます。私も心はいつもメタルと共にあり、です。最近は毎日のように、METALLICAの"THROUGH THE NEVER"のDVDばかり見て過ごしています。よろしくお願いします」
「おー!」 黒田が手を打って割り込んできた。「私、映画館で観ましたよ! 凄かったですよね! あれ!」
「はぁ...」
「ストーリー性が曖昧だなんて言ってる連中は頭がおかしい。METALLICAサウンドの、満を持した映像化なんですよ! まあ、メンバー、歳食ってたのは否めませんが、それでもあれだけのパワーです。最後の"Orion"が印象的でしたが、私はね、まだステージが始まる前、メンバーの映画への登場の仕方が素晴らしいと思ってるんです!」
 大須川がやんわりと制止する。「黒田さん、音楽の話はもう少しあとで。まず自己紹介ですから」
 黒田はまったく聞いていない。「ジェームズがクラシックカーのバックファイアー響かせ、眼光鋭く一瞬だけ登場する。続いて裏方と一緒に仕事をしている様子のカーク。人柄だ。そしてまるでモンスターみたいな描かれ方をしているロバート。檻に入ったゴリラみたいな描かれ方だ。笑ったのがラーズ。普通の、おっさんだ。主人公という形となっている、若い少年の視点は、あれはファンの視線そのものなんだ。ステージについてはドキュメント映画の体裁でありながら、演出が大きく入る部分がありましたよね! そうです、トールのハンマーの部分!」
 噛みつかれるかのような勢いで話しかけられている真壁のぞ美は、曖昧に返事をしながら、大須川に助けを乞う視線を向けた。
「では、次! 高井勇気さん」
 話し続ける黒田を無視して、全員が高井を見た。
 黒田は話途中にして黙った。
 高井はこの部屋で一番最初に発言をした、表情の乏しい若者である。全身黒尽くめ。それが普段の格好なのか、今日のためにわざわざ着て来た衣装なのかはわからない。
「どうも。高井勇気です。連れの影響でSYSTEM OF A DAWN、FUNERAL FOR A FRIENDとか、そっち系。レジェンド系もよく聞くけど。
 てーか、最近になって80年代90年代のレジェンド系が気になり出して。クールで、いっちゃってる音が好きだけど、暑苦しい男くさいのはあんまり」
 それが高井の自己紹介であり、反応など気にしないといった感じで高井はすとんと椅子に座った。
「そうですか。じゃあ、最後の人、藤村、アビゲイルさん」
 本人除いた全員が、場所を間違えて来た人間なのかと思っていた女性がゆっくり立ち上がった。
 こんな場所より、渋谷の喧噪がそのまま似合っていそうな20代前半の女性。女の子である。
 そこで、隣の品川区シニア文化センターから、詩吟教室で唸る老人の歌声がはっきり聞こえてきた。
 自己紹介を始めようとしていた女の子はプププッと笑い出した。
 出演者全員、顔を合わせてから約30分、初めて生まれた和やかな空気だった。
「藤村アビゲイルっていいます。変な名前でしょ。ハーフです。帰国子女。高校から、日本で暮らすようになったんですよぉ」
「日本語ペラペラじゃん」 同年代の高井が無表情な言葉を挟んだ。
「住んでるんだから言葉なんて誰でも話せるようになるってぇ。でも、話し方がうざいって言われて、そいで、名前でいつもいじめられてきたよ。わたしずっと、全然友達いないの。
 あれあれ、暗くなるところじゃないよぉ、ここ。
 両親は離婚したんだけど、今は母ちゃんと一緒に住んでるんだよ。趣味は、メタルだよ、もちろん。
 母ちゃんの影響でトム・ペティーやジョン・フォガティーから洋楽が好きになったんだけど、19の時に出会ったオジー・オズボーンの"BARK AT THE MOON"で一気にメタルにハマった」
 年齢こそ違っても同じ趣味を持つ者たちの集まりである。藤村の今の言葉で全員の目に光が点った。
「この中でいちばーん、若輩者ですけどぉ、よろしくお願いしまーす」 ちゃかちゃかと手を振り、全身笑顔で藤村は着席した。

「いやぁー、なかなか濃いメンバーが集まりました。楽しみです。遅れ馳せながら私の自己紹介をしたいと思います。
 私はNTVの人間ではなく、如月涼、本名は大須川剛太郎といいます。大きい須の川と書きますが、おおすがわではなく、おすがわです。
 両親はそれぞれ、昔から、年に一度は必ず入院するほど、揃って病弱でありまして、せめて息子は鋼(はがね)のように強く育ってほしいということで付けられた名前だそうです。
 鋼のように強く、どころか、紙のように薄い人生を送ってまいりましたよ、はい。
 三月(みつき)ほど前に出版社様のお陰様で本を出して、少々売れ出すまでは、半年間、完全失業してました。失業保険、月8万円。遺族年金暮らしの母親に飯を食わせてもらって生き延びておりました。サイテーであります。
 しかし! そんな窮地から私を救ってくれたのは、間違いなく80年代メタルであります。
 本を出してそれが少々売れたからといって、私の人生はまだまだ安定などとはほど遠い。ただし、仕事で出来た縁がありまして、こうして、NTVのお仕事をさせていただくことになりました」

 空気を読まない太ったおっさん、話している大須川の目をまったく見ない主婦、アンドロイドのような完全マイペースの若い男、3人に大須川は一抹の不安を覚えたが、中途半端な年齢のイケメンとOL姿の女性、渋谷からそのままの女の子、残り3人は大須川を座長として認めてくれたようではある。

「さて、みなさん、80年代メタルを扱ったウェブサイトといったら、どのくらいご存じでしょうか」
 主婦の三上洋子が答える。「そうねー。ホームページが流行してた10年くらい前? いろいろあったけど、今は全然ないよね。てーか、あたしは全然見てないけど。メタルのホームページっていうのも流行のひとつだったのかもね」
 オーバーアクションである黒田のおっさんとは対照的に、名倉はしゃきしゃきと、わかりやすく話す。「そうですね。2003年、2004年あたりはたくさんメタルのホームページがありましたが、今は管理人が思うがままにランダムに名盤を紹介するブログが少々ある程度で。
 百科事典的な、読み物的なメタルのホームページはほとんど存在しないんじゃないかと。そういえば、管理人、って言葉もなんか懐かしいですね」 
 大須川はふんふんとうなずきながら、自分の席に座った。
 しかし大須川の机だけが教卓のように背の高いものであり、ギャラリーには自分の首より上しか見えず、何やらアホのように思え、急いで席を立った。
 目が合った黒田に大須川は話を振った。「黒田さんなんか、百科事典サイトを作る知識がおありでしょう? サイト、何か作ってなかったんですか?」
「お恥ずかしいですがね。ブログ形式みたいな、あんな女子供の遊びのようなものじゃなく、ちゃんとホームページ、いや、趣味の域を越えたウェブサイトを持っていた」
「すみませんねえー。私は女子供の遊びであるブログを5年やってましたけど」 三上が言った。顔は笑っているが目が怖い。
「いや、80年代メタル復興に貢献する、知識で勝負のウェブサイトと、自分宣伝に80年代メタルを借用しているに過ぎないブログとの違いを私は言っているだけで、」
 失礼な発言の上塗りである。三上の表情がくわっと上気するのを見て、大須川は頭を抱えた。

 ご近所の井戸端会議から一流会社のプレゼンに至るまで、つまり、世の中のあらゆる場所で、主婦を怒らせたら終わりである。
 主婦が、Aがいいと言ったなら、そばにいる男は、口先だけでなくAの美点を復唱し、異論がもしあるなら、Aも大変素晴らしいがBも、と話を展開させるか、Aの素晴らしい影響あってBがありますという論法に引き込むか。でなければ話全体が進まない。
 ましてや、いきなり立ち上がってマイケル・シェンカーの物真似をした三上である。口の達者加減も物凄いものがあると容易に想像できた。
 黒田はまだしつこく、ウェブサイトとブログの違いを説いている。
 ギャラリーはしらけている。
 大体、自分自慢を攻撃する人間こそ一番自分自慢をしたがるものなのだ。
 三上洋子はじっと黒田の話に耳を傾けていた。
 しかし傾聴しているのではない。反論材料を貯めているのだ。

 駄目だ。
 まだ自己紹介の段階なのに、こんなことで6時間の生中継番組が成るのか。
「そこなんです、そこ! いいですか。更新の頻度のなさという弱点を責められますけどねえ、私とて、日常生活の忙しさゆえメタルを広めるという仕事から逃げたというわけではなく、しかし不定休が当然のブログを中断するのとは訳が違って...」
 黒田の言葉がそこで止まった。
 数秒の間抜けな間があった。
 三上は話を聞いていたのではなかった。机の下でスマートフォンをいじくっていた。

 大須川はこの2人はとりあえず捨て置くことにした。
 イケメンの名倉に話を振るのが一番無難そうである。
「名倉さん、昔はどんなサイトを見ておられました?」
「そうですね、CDショップの経営者が管理人であるような、マイナーなバンドまで詳しい百科事典サイトと、またはその反対、管理人ならではの視点で色々な音をバッタバッタ斬っていくようなサイトをよく見てました」
「サイトの名前とか、覚えておられます?」
「そうですね、ヘヴィ・メタル・サムライというめちゃくちゃ詳しいサイトと、クロニクル80Sという、管理人が好き放題言い倒す、2つのサイトが好きでしたね。もう2つとも、存在しませんけど」
「あの、KRONIKLE OF 80'Sというというサイトはまだ存在してるよ」
 また黒田である。「関西弁とメタルは合わないのに、あのサイトは酷かったな。年に一度くらいしか更新されない、管理人がよくすべってたところだね。数はたくさん紹介されてるけど、あんなもんじゃまだまだ。確かにあのサイトは存在してるけど、更新もされていないし。貧乏で電気止められてサイトもなくなったとか、また復活したとか、勝手にようやる。管理人が貧乏か金持ちか、そんなこと誰も知りたくないってのに。掲示板でおかしな連中の喧嘩を買い、その経過をサイトで詳しく書いて、それで逮捕されたんじゃなかったっけ、あそこの管理人。掲示板の客と揉め事ばっかり起こしてて、2ちゃんねるファン、いわゆるねらーだけど、結構盛り上がってたな。くろくろ攻撃」
「改行もなしに、長々とありがとうございます。この文章を読んでいる人のことも考えてください。
 しかしまたあなた、言葉がきついですなあ」
「あんたには関係ないでしょう」
「あんたという名前ではありません、大須川です。それにあそこの管理人は逮捕など、されてませんよ」
「あんたはあの偏屈サイトの支持者なのか?」
「そんなことよりも。
 あなたは、今三上さんにおっしゃっていたように、確かに、サイト内でブログの作成者、当時はブロガーなどといいましたが、ブロガーをよく攻撃しておられましたね。当時から。
 あなたが、HEAVY METAL SAMURAIの管理人だったTAKEさんだ。黒田武弘さん」
「...という説もあるな」
「わたくし、現在の筆名如月涼、本名大須川剛太郎、ネット上のハンドルネームはくろくろさん。
 私がKRONIKLE OF 80'Sの管理人です」
「なんだって?」
「別に驚くことじゃないでしょう、黒田さん。広いようで狭いこの世界。YABOOに正式登録されていた趣味人がずっと同じ世界で住んでいたら、いつか顔を会わせることもあり得ます」
「......」
「というか、紹介作品の数では間違いなく日本一であったあなたのサイトは、とおの昔に消滅している。私のサイトいまだ細々と、続けております。
 もうこの話はおしまいにしましょう。
 いいですか黒田さん、番組には私の広く浅い知識よりも、あなたの広く深い知識が助けになります。打ちのめされているのは今だけにしておいてください」
「何言ってるんだ。打ちのめされてなど!」
「この話は終わりです」
「おい、その、俺がHEAVY METAL SAMURAIの管理人だったって証拠は? 証拠は!」
 黒田を遮って名倉が手を挙げる。「あの、いいですか」
「どうぞどうぞ」
「くろくろさん、だったんですね。俺、よくあのサイト見てたんで、改めてご挨拶したい気分です。実はですね、もっとクセの強い人を想像してたんですが」
「実物はこの通り、禿げ散らかしたおっさんですわ。
 ネットの世界なんて、そんなもんです。どこでもある話ですよ、管理人の印象と実物とのギャップなんてもんは」
 真壁のぞ美が、懐かしい友人に出会ったかのような表情をしていた。
「くろくろさんだったんですか。私、何度か掲示板でお話させてもらったことあります。メールも送ったことあります。SANDMANカッコ女、というハンドルネームです。覚えておられますか?」
 まったく覚えていなかった。
「ああ、サンドマンさん、よく覚えてますよ。応援メール、ありがとうございました」
「いえ、応援じゃなくて、荒れる掲示板を閉めたらどうですか、ってアドバイスしたんですけど」
「ああ、はい、そうでしたか。はい。
 というわけで、本日、弱小テレビではありますが仮にもメタルの6時間番組に協力できるということで、大変張り切っています。
 私も雑多なメタル好きの、1ファンです。一応進行、段取りがありますけど、今日はいろんな話をしましょう。よろしくお願いします。
 で、収録まで、あと2時間ほどあります。
 トーク番組ですが、制作側からの注意と言うことで、書類を読んでサインをしていただきます。NGの言葉に気をつけてとか、どの番組でもやってる約束ごとだと思ってください。
 それが済んだら軽食を取っていただき、食べられた方から、全員メイク係兼ADの人から簡単にメイクをしていただきます。
 私などメイクなしにテレビには出られません。女性陣はわざわざメイクなど必要ないお綺麗な方ばかりですが、テレビ写り用のメイクというものがありますので、ご協力お願いします。 
 さて。
 最初に、若い方もおられますので、これを読んでいただきたいのです」

 大須川はコピー用紙を綴じた束を持ってきた。
「80年代メタルの生まれた背景、なる小論文を私が用意しました。これを熟読願います」
 要らないよ、そんなもの、という空気。
「内容は皆さん、ご存知のことばかりですが、番組に入る前に皆さんが、知識をまとめ、知識を揃えてもらうという意味で、読んでほしいのです。番組に役に立つのかどうだか、若い方もいらっしゃいますし、80年代メタルの原点という知識などを」
 黒田が言う。「いや、KRONIKLEの作者だったら、私の方が知識があるんですけど」
「申し訳ないです、番組の責任者が私が司会であると、そういうふうに決めてしまっておりますので。
 必ず皆様が失笑するであろう、おかしな格好をさせられる私の身にもなってください。アホなバラエティー番組みたいに進行しようとは思ってませんがね。
 とりあえず、繰り返しますが、若い方もおられるので、これを30分程度で読んでもらえませんか」
 一同は冊子状に綴じられた紙を受け取った。

BGM
http://www.youtube.com/watch?v=bucVwI0RfEg


 
資料 「80年代ハードロック&ヘヴィ・メタル その成立について」 大須川剛太郎 作


 30分が経過した。
 その間に、ベルトに携帯電話を3つほど付けた、男か女か全然わからない若い社員が軽食を持ってきた。そして順番に、軽いメイクを施してくれた。
 大須川もメイクされてしまった。頭が光るようにメイクしてくださいね!とふざけたら、流された。
 ADで、西原という名前だそうだが、ハスキーな声からしてまだ、男か女かわからなかった。女性のようではある。しかしはっきりと聞くのも変であり。
 しかしメイクというものは、こんなに顔を近づけられるものなのか。向こうは仕事であろうが、こっちは緊張してしまう。
 男であれば、緊張し損である。引越し作業員のような服を着ているので、胸元を見てもわからないし、第一こんな目の前でじっと眺めたら、もし女性であれば失礼この上ない。
 

 年長者である三上と黒田が、大須川の作った文章を読みながら、いちいち感想を述べている。
 三上はかなりはしゃいでいた。40もとおに過ぎて周囲の空気を読まずはしゃぐというのは、大須川は好かない。大須川は禿げた頭が語るとおり、不必要に昔気質の人間である。
 黒田は難しい顔をしていちいち否定的な感想を述べているが、そっちも勘弁してくれと大須川は思った。
 黙って読んでくれと言おうとしたところ、20代の2人がまるで図書館で勉強でもしているような様子で真剣に読んでいるのを察してか、年長の2人はやっと口を閉じた。


「さて、申し訳ないですね、あくまで私という、一素人リスナーの書いた、高校の宿題レベルの論文みたいなもんです。80年代メタルはどこからどういうふうにして生まれたか、印象としてそれを理解してもらいたく、さて、お若いみなさん、大体わかっていただけましたでしょうか」
 藤村アビゲイルが小さく手を挙げた。
「あのぉー...難しくてわからないんですけど。でも、写真はすごくためになったよ」
「ありがとう。文章がわかりにくいのは、私の文章力のなさです。ごめんね。まあ、番組中、わかりやすく解説していきますから」
 高井がやはり無表情で言い放つ。「肝心の80年代メタルの説明が途中で終わってますね。どのレジェンドがどんなレジェンドに影響を受けたのか、そこを知りたいところなんですが」
「80年代メタルの誕生、で終わっています。80年代メタル本編については、番組内で展開していこうという趣旨なんだ」
「3つのバンドと3つのバンド、右左、縦の長さが微妙に合ってないですよ。カラー印刷も少しかすれているのでは?」 黒田。
「知らんがな。あのね。これ、私のポケットマネーで、1枚50円のカラーコピーですわ。文句があるなら西千住駅前のモスバーガーの地下のコンビニに言ってください。領収書くれ、と言ったら、領収書ボタン押すの忘れてましたね、残念、って若い店員に言われたんですよ」
「あのー。お話脱線、しすぎじゃないですかぁ。それよりもねー、ジャパメタのこと書いてないじゃないの」 三上洋子が口を尖らせる。「だめよ、これは!」
「は?」
 次もやっぱり黒田である。「思うんだけどさ、メタルの歴史なのに、メタル以外のバンドが出過ぎじゃないかな。それから、メタルの本当の元祖とされているSIR LORD BALTIMOREも出てないし、ガーヴィッツ兄弟のGUNも登場しない。ATOMIC ROOSTERは? そもそもDEEP PURPLEとBLACK SABBATHについて洞察が抜けてるね。DEEP PURPLEはロックにエンジンを備え付けたんだ。BLACK SABBATHはロックに体重をつけた。そこらへん、書かないで、これはちょっと、ね」 完全に上から目線である。
「はぁ...」 大須川は困った。司会者の面目丸潰れである。
「流れを若い人に理解してもらおうと思ったんですが、ダメだったですかね」
 OL姿の真下のぞ美が助け船を出した。「正しい歴史的解釈とか、そういうのは、評論家の人たち、それを仕事にしてる人たちでいいんじゃないかしら? 流れとか、色がわかったらいいと思う」
 爽やかマン、名倉優も同調した。「なんかくろくろさんの熱を感じます。熱でいいんです。熱、ファンの熱がメタルの原点ですからね!」
「ありがとうございます。そう言っていただければ、昨日一日、千住の安ホテルにこもって書いた甲斐があります。わはは。
 それから黒田さん、偉そうに聞こえるかもしれませんが!
 収録中は私が司会です。
 あのですね、知識は、私よりあなたの方が上だと、はっきり認めます。だから、あなたの解釈を自由に語ってください。ただし、収録中は訂正や茶々を入れずにお願いします。はっきり言いましてですね、嫌〜な空気が生まれますと、生中継です、御退席を願うこともあり得ますので」
 黒田は納得せず、即言い返してきた。
「あれ、あれ? 俺、嫌だなんて思ってないですよ。おかしいな、何言ってるんですか。こちらからも言わせていただきますが、サイトの2ちゃんねる騒ぎの時から思ってるんだけど、くろくろさん、あなたは横暴だ。この、あれこれ足りない冊子が物語っているように...」
「司会者に不満だということでしたら、今ディレクターを呼びますが。この時点で言い争いしても始まらんでしょう」
「ディレクターなんて関係ないでしょう。え?  あなたはねぇ、何でも断言口調なんです。視聴者に正しい知識を教えなければ、それは情報番組ではないんじゃないですか。わかりました。いいです。今からディレクターの人と直接、話しさせてください」
「いいですけど。でも、番組の進め方はもう決まっていて、もう収録40分前なんですが」
「俺だったらアドリブで。それに、どう見てもくろくろさん、違った、大須川剛太郎さん? メタルって雰囲気じゃないじゃん。俺は歳は食ってるけど、メタル専門店30年来の常連でね」
「あなただってメタルの雰囲気じゃないでしょう。昼寝から起きてきた、カバですか?」
「なんだと」
 そこで、冷たい声を放ったのは無表情男、高井だった。
「見苦しいです黒田さん。実は俺もくろくろさんのサイトはよく読んでた。
 横紙破り、バンカラというんですか、そういう、くろくろさん自らのキャラ作りは、正直邪魔に思ったこともありますが、ネットは無料の情報閲覧場です。知りたい情報が得られたらそれ以上のものは望んじゃいけない。それに」 高井は大須川の方を見た。
「くろくろさん、如月さん、大須川さん、3つも名前をお持ちのあなたを俺らはどうお呼びしたらいいんですか? 討論番組ならこちらからお呼びかけすることもあるでしょう」
「大須川と呼んでください」
 再び高井は黒田に向き直る。「番組制作側が大須川さんに舵を任せた番組でしょう。俺たちは募集されて集まった80年代メタルファンというギャラリーだ。
 黒田さんの態度は問題ある。黒田さんはあのサイトの、粘着と呼ばれた人たちですか。電子化された虚構の世界でくろくろさんに対抗意識を燃やし、敵対意識を持つ、それが数年」
「おいおい、勝手にあれこれ決めつけないでくれ。俺のことはここではどうでもいいことじゃないか。そもそも、この待遇だよ」
 自分の息子ほど若い高井に注意を受けている形になった黒田は苛立ちを隠さず、長テーブルをこんこんと叩いた。「出演料、1万円だよ。ボランティアだ、これじゃ。音楽雑誌の権威と呼ばれる人たちが司会やるなら、話をじっくり聞こうという気にもなるが、こんなんじゃもう、辞退させてもらうことも考えている」
 高井は続けた。「じゃあそうなさったらどうですか。学者肌でメタルを語っていたあなたと、メタル演者、メタルを使って自分を売るくろくろさんは、対極だ。
 しかしそんなものは過去の話。ライバル意識を剥き出して、大須川さんを見下すような話し方は俺らにとっても不快です。改めてください。番組の目的は、個人の知識のひけらかしじゃない。
 どう思います、みなさん?」
 高井の目の前に座っている主婦の三上は、またテーブルの下でスマートフォンを触っていた。まったく話を聞いていない。高井は呆れた。
 爽やかマン名倉が拳を握った。「君、若いのにしっかりしてるなあ。僕はそもそも、如月さんの小説読んで、ファンになった人間です。
 プチ有名人の方が司会をして、マニアックな話題OKのCSでメタル討論番組が催される。この流れ、おかしいかな。過去何があったとしても、黒田さん、こんなところに私情を持ち出さないでくれませんか。僕も高井くんと同じ意見です」
 黒田は顔が真っ赤になっている。まだ何か言おうとした。
「エラソーな、先生みたいだね。黒田さん」 藤村が見かけに似合う小悪魔的な笑みを浮かべた。
「あたしはね、こういうカッコしてるけど、空気を読む! それだけはいつも心がけてるんだよ。ねえ」
 ねえ、と言われても、大須川は困ってしまった。藤村は目の前に突っ立っている大須川の服の袖を取り、じっと大須川の顔を覗き込んだ。若い職員に世話されている施設の老人になったような気がした。まさにこの娘の言う通りなのだが。

 若い人間2人に文句を言われ、黒田の立場はない。
 大須川としては大笑いである。
 収録まで後30分である。
 突如巻き起こった騒動に大須川は面食らった。
 しかし番組の進行上、学者、博士キャラの人間は絶対必要だ。
「黒田さん、何をどう詫びていいのいいのかわからないですが、過去、嫌な思いをさせたことがあるのなら、謝ります。全面的に。ごめんなさい。私がすべて悪かった。
 ですからどうか、番組の成功にご協力願えませんか。日当、確かに安いですよね。私が大阪から東京まで出てくるのも、新幹線ではなく夜行バスですし、滞在費も出ません。80年代メタル布教のため、採算度外視で私も協力してるんです。私はみなさんに等分して発言の機会を設けますから」
 黒田は黙って横を向いている。
 ただ、収録を拒否して部屋を出ていく様子はなさそうだった
「よろしいですか。じゃあみなさん、そろそろ時間です。ちゃんと施錠しますので、荷物その他、ここに置いたままでも結構です。隣、スタジオに向かいましょう」


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