第24章

BGM
http://www.youtube.com/watch?v=yvJ1g-gImaQ


 吉岡ツトムは、モニター横の大きな機械に自分のノートパソコンを接続した。
「おい、よそ見するな! モニター見てろ!」
「何やってるの?」 問い質してはいないが、吉岡がスパイである可能性はなくなったと西原は思う。
 キーを叩く吉岡。「さっきの大須川さんのアイデア、ヒゲ夫から聞いて、もう実行してるから。こんな危ない仕事、俺も初めてだ。しかし敵はあっち。俺は自分の城を守るために戦う。そんなシチュエーション、なかなかないじゃんか」
「じゃあ、裏画面、OKなのね!」
「ああ、そっちはもう済んだ」

 大須川の出したアイデアとは、「番組案内」である。
 チャンネル案内、番組案内。
 視聴中にリモコンのどこかのボタンを押したら、画面に字がいっぱい出てくるもの。
 そのページの管理についてはCS総合局カスパーの管理となっているが、その番組案内で、今のこの危機的状況を視聴者に伝えるという方法である。
 先ほど、三上洋子が司会に立ち、大須川たち数人が後ろに集まって小声でクイズ大会をしていた時、大須川が手に持ち、村田が構えるカメラに写していたそのスケッチブックの内容。

いきなりですが、この番組、放送中断の危機です。
詳しくはリモコンのボタンを押して、番組案内のページをご覧ください。
視聴者のみなさまのお助けを必要としています!


 吉岡は、カスパー本部には適当な理由を付け、こちらから番組内容を訂正するとの旨で、ネット回線を開いてもらった。
 

NTV、なつかしテレビチャンネルがあのLEYNA、クラウドミュージックのLEYNAによって潰されることとなりました。
本日この時間、この番組はいつ何時にも中断され、放送がジャックされるかも知れません。おそらくそうなります。我々、NTVスタッフの抵抗です。どうか視聴者の皆様、この事実を知っていただき、視聴者としての意見をカスパー本部に伝えてください。皆様の助けがNTV存続につながるかも知れません。我々スタッフの心からのお願いです。


 第2モニターから確認した西原は、感激の眼差しでツトムを見た。
「こら! よそ見するな!」
「何やってるの今?」
「外部からの操作をフリーズさせるよう設定してる。つまり、こっちの放送をロックしてるんだ。クラウドがどれほど汚い手でこっちの放送を邪魔して来ようとも、このモニターでしか放送を止めることができないって寸法だ。
 モニター、変わりないな?」
「うん」
「よし。終わった」
「じゃあ、電源の管理も大丈夫なのね?」
「何だ? 電源って」
「未来ちゃんが教えてくれたの。中川さんが未来ちゃんに命令してたのよ。地下でこの建物の電源をすべてシャットダウンしちゃうって」
「どうしてそれを早く言わない!」
「ごめんなさい」
「それでどうなった?」
「警備員室の鍵の箱が誰かに開けられてて」
「未来ちゃんじゃないんだな?」
「未来ちゃんはもうこっちの味方。ね、今誰がこの建物に残ってるの?」
「太田とコロ助がさっきまで3階にいたんだが、俺が協力を頼むと逃げ出しやがった」
「じゃあここにいるのは私とツトムくんと、ヒゲ夫さんと未来ちゃん、それから...」
「赤川のオバハンか。くっそ。もう手遅れかもしれない。出演者の人たちに怪我あったらいけないから、懐中電灯、事務所にあったよな。亜紀ちゃんはまず懐中電灯をあの人たちの近くに置け。俺は地下室へ行く」


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