エピローグ


 溝の蓋を踏み抜き、立ち往生してしまった、1台の大きな車。
 幸い、幹線道路でもなく、横に車1台は余裕で通れるスペースを残していた。

 しかしパラボラアンテナがついた珍しい車である。
 近所の住民が際限なく、見物にやってきた。
 JAFを呼ぶには呼んだが、車両価格というものがべらぼうに高いそうで、対応も保証もできませんということで、専門業者を紹介された。
 それが2時間経っても3時間経ってもやって来ない。

「あーあ。よく寝た。日付、もうすぐ変わりますね。えれえことになっちゃったなあ。
 横川さん、これからどうするんです?」
 運転席助手席シートに横になって寝ていた大場。
 横川は後ろの機器スペースにいる。
「よく寝れるよな、おまえ」
「勇気を振り絞って、女王様に電話してみたらどうですか?」
「おまえがアホ面さらして寝てる間に電話したよ。誰も、出やしねえ」
「どうなったんでしょうね、NTV。
 そうだ、謝りましょうよ、土下座でも何でもして。NTVに」
 機器を正しく操作すればCS、地上波含めてすべてのチャンネルが見られるはずなのだが、近隣住民の苦情の相手をしている間にエンジンをかけっぱなしにしていたのが災いして、ガス欠で車のエンジンが止まった瞬間、すべての機械が停止した。
「NTVどころじゃねえよ。クラウドに、どんな面下げて会いに行けばいいんだ。どんな顔してこの車、返しに行けばいいんだ?」
「ちっ」
「おまえ、今、舌打ちしたのか?」
「ああ、しましたねえ。
 ちっ。ちっちっ。
 そもそも、だ。
 どこの局でもプロデューサーのほうが偉いはずですよね。何でいつもいつも、私はあんたにタメ口、いや、上から目線で文句言われてんだ」
「NTVに引っ張ってやったの俺だろ、バカヤロー」
「それとこれとは別じゃないですか? 私だって良識ある人間ですから、恩は恩で忘れない。
 しかし笑われてる、俺は。ディレクターごときに上から目線でモノ言われるヘッポコプロデューサーだってな!」
「おまえ、この非常事態に好きなこと抜かしやがって!」
「おまえとは何だ! 大場さんと呼べ」
「頭来たわ。おまえ、表出ろ」
 運転席と後部を仕切る壁を横川は蹴った。
「おう、上等だ上等だ、体力で俺にかなうと思ってるのか、さっさと出ろ、このヒゲ!」
 横川は本気で殴ってやろうと思った。後ろのドアを開け、外に出たとき。

 大場が全力疾走で逃げていた。
 横川は追いかけた。

「すまん、悪かった! 逃げるな!」
「うるさい! どうせクビなんだから、あんたが車、返しに行けーっ!」
「悪かった! でも修理の車がもうすぐ来ちゃうんだって! おい! おーい!」

 歩道橋の上で、ぜえぜえ言いながらおいかけっこをしているおっさん2人。

 その下を、左に傾いたタクシーが通過していった。
 


http://www.youtube.com/watch?v=dG2jj-aIl-A
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LOUDNESSの"S.D.I."
イカレポーンチ、と聞こえる箇所の歌詞は
"They call it war"です。



クイズ中にあったMr.Crowley(イントロ)の原曲
ANGEL "Angel Theme"
https://www.youtube.com/watch?v=7nbPHHZc6eo



『スーパーナチュラル シ−ズン2」狼男の回に流れていたQUEENSRYCHEのバラード
"Silent Lucidity"
http://www.youtube.com/watch?v=7cnl_Ds4HXU




SPECIAL THANKS TO: サイトのお客様、YOU TUBE、数年前チャットに参加いただいた方たち、Y.K.君




☆☆☆

この物語、
および以降の本サイトすべてを
R.Sさん、M.Nさんに捧げます





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